2013/12/08

ミヤマクワガタ♂同士の喧嘩



2013年9月中旬

同じミズナラの木で捕獲した二匹のミヤマクワガタLucanus maculifemoratus)で闘争行動を観察してみましょう。

初めは家に持ち帰ってから戦わせるつもりでしたが、樹液の強烈な匂いが漂う採集現場の方が闘志が沸くかな?と思い直しました。
朽木の枝を地面に置いて対戦の舞台とします。
両雄を乗せて対峙させるも、しばらく動きがありません。
画面の右側が小型の♂a(大顎発達不良で左右非対称)、左側が大型の♂b(大顎は正常)です。

先に仕掛けたのは意外にも小柄な♂aでした。
果敢に♂bへ立ち向かいました。
朽木上ですれ違う瞬間に♂bがライバルに向き直りました。
立派な大顎を大きく広げて威嚇します。
顎広げをしている間に、相手の力量を測っているらしい。
ゆっくり移動し、2匹の体勢が入れ替わりました。
ようやく互いにしっかり向き合い、本格的に闘争が始まりました。
♂bが相手の大顎を素早く挟みました。
胸部の下から掬い上げるように持ち上げて朽木から投げ落とし!
リングの高さが無いので豪快な投げは決まらず、そのまま大顎を離しました。
敗れた♂aは退散しようとするも、爪先が落ち葉に引っかかり逃げられません。

体長も大顎も大きな♂aが勝利したのは予想通りでしたが、意外に白熱した一戦になりました。
今回の決まり手は、ミヤマクワガタにしては珍しく「下手投げ」でした。

『カブトムシとクワガタの最新科学:闘争や交尾後の行動に潜む進化の秘密』p71-76によれば、ミヤマクワガタ♂同士の喧嘩の決まり手は

  • 上手投げ(相手の背中側から挟み、持ち上げるようにして投げる本種が得意とする戦法)が72.7%、
  • 挟み投げ(大顎と大顎が挟み合わさった状態で投げる技)が22.7%、
  • 下手投げ(相手の腹側から、大顎を使って持ち上げて投げる)は僅か4.6%らしい。
素人目にはたまたま組み合った瞬間の体勢で決まるような気もするのですけど、統計をとるとそのような傾向が現れるのだそうです。



アレチウリの花蜜を吸うキタテハ秋型



2013年9月中旬

河原の堤防に生い茂ったアレチウリの群落でキタテハPolygonia c-aureum)秋型が花蜜を吸っています。
秋晴れの日差しが強いので、基本的には翅を閉じて花に止まっています。



北米から侵入し繁殖力の強いアレチウリは侵略的外来種ワースト100に指定されています。



チャイロスズメバチvsモンスズメバチ:樹液酒場での序列【HD動画&ハイスピード動画】



2013年9月中旬

ミズナラの樹液酒場でチャイロスズメバチを観察していると、後からモンスズメバチVespa crabro)のワーカー♀も1匹飛来しました。
単眼周囲および小楯板が黒いことから、コガタスズメバチではなくモンスズメバチと判明。
体長はモン>チャイロなのに、力関係は逆転しています。
数で勝るチャイロが樹液酒場を制圧しました。

幹の上部に滲み出る数カ所の樹液ポイントはチャイロが占有し、モンスズメバチは近づけません。
追われたモンが同じ木の根元付近に別の樹液ポイントを見つけ、ようやくそこで落ち着いて吸汁しました。
発酵した樹液が白く泡立っていますけど、チャイロが来ていないということは1ランク質の劣る樹液ポイントなのでしょうか。
戻って来る度に近くのチャイロと小競り合いになり、空中戦で追い払われました。

チャイロスズメバチは社会寄生種で、モンスズメバチは寄主の一つです。
そのような寄生関係にあることが樹液酒場での力関係に影響しているのかもしれません。
従って、ここに集まったチャイロもモンも実は同じ巣から通っている可能性もあります。
つまりこのモンスズメバチは、巣を乗っ取られてチャイロのワーカーを育てた奴隷かもしれません。
それなら体表の匂いが似ている筈なので、協同で餌場を防衛しても良さそうなものです。
9月中旬では完全にコロニーを乗っ取られている時期かもしれない、と考えればその可能性は薄くなります。
巣の位置を突き止めれば解明できたでしょう。



チャイロスズメバチ♀の占有行動を240-fpsのハイスピード動画で撮ってみました。
樹液酒場を独り占めして樹皮を齧ったり吸汁したりしているチャイロは、モンが飛来する度に向き直って警戒姿勢をとります。
モンスズメバチは停空飛翔で偵察するだけで決してチャイロに戦いを挑みません。
怖くて近づけないという印象です。
チャイロvsモンの空中戦は残念ながら撮れませんでした。

今回観察できたスズメバチの序列は本で読んだ記述の通りでした。

樹液の出る場所での、席次争いで強いものから弱いものへの順列は、オオ>チャイロ>コガタ>モン>ヒメ(スズメバチ)
『本能の進化:蜂の比較習性学的研究』 岩田久二雄・眞野書店 p318 より




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