2013/10/19

ユリズイセンに訪花するフタモンアシナガバチ♀2つの採餌戦略(正当訪花/盗蜜)



2013年8月中旬

前回の観察記録はこちら→「フタモンアシナガバチ♀がユリズイセンの花で盗蜜!?

交差点横の花壇を翌日に再訪しました。
驚いたことに、今度はユリズイセンに正当訪花して吸蜜しているフタモンアシナガバチPolistes chinensis antennalis)のワーカー♀がいました。
花の奥に潜り込んだまま、なかなか出て来ません。

正当訪花
正当訪花

少なくとも2匹のワーカーが繰り返しユリズイセンを訪花しており、もう一匹の個体は前回と同じく盗蜜していました。
花筒の根元を外側から噛み破り穿孔盗蜜しているのか、あるいは別種の蜂が噛み切った盗蜜跡を利用して吸蜜しているのか、どちらでしょう?

盗蜜
盗蜜
盗蜜
盗蜜

この夏あちこちの花壇でユリズイセンを気にして見て歩くと、色々な品種があるようです。
満開に咲くと大きく開いた花弁の根元に隙間が自然に生じることが分かってきました。
花筒の形状をなさなくなるのです。
こうなれば舌の短い蜂もわざわざ穿孔盗蜜する必要はなく、花弁の隙間から容易に蜜腺を吸えることでしょう。
つまり咲きかけのユリズイセンを訪花するフタモンアシナガバチの行動は、穿孔盗蜜ではなく「花弁(花びら)や蕚(がく・花被片)の間から蜜を吸い取る」タイプの盗蜜行動なのかもしれません(wikipediaより)。
雄しべに触れずに吸蜜するので花の受粉には関与せず、盗蜜と呼ぶのは問題なさそうです。
ユリズイセン(アルストロメリア)は南米原産の園芸種ですから、たとえ蜂が受粉してくれなくても人工受粉などにより見栄え重視で品種改良されてきたのかもしれません。

(追記:おそらくユリズイセンは球根で増やすのでしょう。)
全く別の花壇で後日に撮影。隣り合う花弁の間に根元にも隙間ができる。


この日私が観察していた限りでは、盗蜜個体が正当訪花に切り替える例もその逆も見られませんでした。
(つまり、盗蜜の常習犯がいるのです。)
同一個体が時と場合に応じて2つの採餌戦略をスイッチするのか、個体差や日齢、体長の違いによるものなのか、経験や学習の成果なのか、同じコロニー出身なのか、など知りたいことがたくさんあります。※
そのためには先ず蜂を生け捕りにして採寸したり個体標識したりする必要があります。
こんな人通りの多い場所で目立つことをやり始めたら間違いなく「何してるんですか?」と尋ねられ、虫嫌いの人だと大騒ぎして蜂の駆除業者に通報されそうです。
これからも定点観察に通いたいので、そんな事態はなんとしても避けたいところです。
個体識別のマーキングは泣く泣く諦めました。
いかにも花壇に咲いた綺麗な花を撮っている風を装ってさり気なく観察するだけにとどめます。

※ ちなみに、オオマルハナバチでも春に咲くタニウツギの花で穿孔盗蜜する個体と正当訪花する個体が2種類います。

関連記事→「オオマルハナバチ♀の盗蜜行動

スズメ(野鳥)の砂浴び



2013年8月中旬

家庭菜園の畑でスズメPasser montanus)が砂浴びをしていました。
畝の横の地面を掘った穴にスッポリ収まり、体を冷やしているようにも見えます。
スズメの群れが何羽も砂浴びしていたのですけど、逃げられてしまい撮れたのはこの一羽のみ。

連日の酷暑で近くの水溜まりも干上がっており、水浴ができないのでしょう。
鳥の砂浴び行動を初めて撮影できて、興奮しました。



砂浴びは乾燥した気候に適した羽毛の手入れ法といわれている。(『スズメ百態面白帳』p162より)

【追記】
『カラー自然シリーズ26:スズメ』より
頭で砂を掃いて、前の方へ突き飛ばすようにしながら、砂埃を上げます。翼でバサバサと、砂を跳ね飛ばします。こうして、砂と一緒に、体に付いたダニ、ふけ、細かい抜け毛などを取り去ります。


【追記2】
平野伸明『スズメのくらし (たくさんのふしぎ傑作集)』によると、
スズメが年に何度も子育てをできる秘密が、もうひとつあります。それは、同じ巣をくり返し使うことです。ふつう、鳥の巣は使い捨てで、1回しか使えません。巣が汚れてしまうからです。(中略)ダニまみれの巣は、二度と使うことはできません。そのため、スズメはダニの発生をできるだけ抑える工夫をしています。それは砂浴びです。水浴びをする鳥はたくさんいますが、スズメは水浴びと砂浴びの両方を行い、とくに砂浴びをひんぱんに行います。これは体についたダニを熱い砂で殺しているのです。おかげでスズメの体はいつも清潔で、巣の中にもほとんどダニがいません。 (p31より引用)




▼関連記事(6年後に撮影)
公園の砂場で砂浴びするスズメ(野鳥)


【追記3】
ギルバート・ワルドバウアー『虫食う鳥、鳥食う虫: 生存の自然誌』という本を読んでいたら、鳥が行う砂浴びの効能について体外寄生虫の駆除以外に興味深い説明がなされていました。
鳥は羽繕いの際に尾脂腺から分泌される油分を羽毛に塗りつけます。
しかし、この油分を定期的に落とさないと、数日もすると羽毛が脂ぎって逆に汚れが付きやすくなるのだそうです。
砂浴びすることで羽毛から寄生虫と一緒に余計な油分も吸着して落とす効果があるそうです。(原著『The Birder’s Bug Book』p154)

ヌルデの花で吸蜜するマドガ♂(蛾)



2013年8月中旬

山道の脇に咲いたヌルデの花でマドガThyris usitata)という可愛らしい昼蛾が吸蜜していました。
恥ずかしながらマクロレンズが汚れており、紗のかかった眠たい映像になってしまいました…。
腹端の毛束がこんなに長かったっけ? (ヘアーペンシルなのかな?)と思いつつ接写していたら、マドガ♂の特徴なのだそうです。

オスの腹端は細く伸び、メスの腹端は鈍く丸い。(wikipediaより)


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