2013/09/02

ヒメクモバチ♀d♂eの交尾と交尾拒否



2013年7月上旬

ヒメクモバチ羽化の飼育記録5

泥巣から羽化脱出するヒメクモバチ(旧名ヒメベッコウ;Auplopus carbonarius)を観察するための撮影機材と飼育容器の全体をメッシュネットで覆い、手製の網室のようにしていました。
こうすることで、放置していても羽化した成虫を確実に生け捕りすることができます。
ペアリング(交尾)する相手が羽化してくるまで、捕まえた蜂に水と蜂蜜を与えておきました。
(少なくとも飲み水を与えないと僅か1日でヒメクモバチは死んでしまいます。)

この日に羽化脱出したばかりの♂eと前日に羽化した♀dとの交尾行動を観察してみました。
プラスチックの容器に同居させたら撮影の準備が整う前にあっという間に♂が♀に飛びついてマウントし、さっさと交尾してしまいました。
2009年に飼育観察した時のように蜂を炭酸ガスで麻酔してから同居させればよかったですね。
♀は全身真っ黒で地味な蜂ですけど、それに対して小柄な♂は顔が白く腹端背面に白点があるのが特徴です。
また今回初めて気づいたのですが、足の色に性差があるような気がします(♂の前脚および中脚が褐色、♀は黒色)。
♀に背後からマウントしたまま♂はときどき羽ばたいています。
交尾はすぐに終了し、ペアを解消した♂は触角を掃除しています。

しばらくすると再度♂が交尾を仕掛けるも、♀が暴れて逃げました。
♀の交尾拒否は何度も見られ、その場で激しく旋回して♂にマウントされないようにする行動も見られました。
ヒメクモバチの♀は生涯に一度しか交尾しないのでしょうか?
同じ♂とは一度しか交尾しないのでしょうか?
2009年の飼育観察では、近親交配ですけど同一ペアが続けて何度も交尾を行ないました。
今回はたまたま相性があまり良くないペアだったのかもしれません。




甲虫飼育用に市販されている昆虫ゼリーを与えて飼育すると、この♀dは羽化してから20日間、生存しました。
容器内の掃除を徹底してカビの発生を抑えられたらもっと長生きしたはずです。

以下の写真は♀dの標本です。
♂eの標本写真は前の記事で掲載済み。

▼つづく

「ヒメクモバチの泥巣は雨に弱い」は本当か?












コクロアナバチがヤブガラシに訪花吸蜜



2013年7月中旬

平地の道端の草むらでコクロアナバチIsodontia nigella)と思われる黒い蜂がヤブガラシに訪花していました。
花から花へと忙しなく飛び回るのは、開花している花が未だ少ないのか花蜜が少ないせいでしょうか。
余りにも動きが早過ぎてカメラで追えません。
目が回りそうでした。
ハイスピード動画に切り替えればよかったですね。
葉に乗って身繕いするシーンも撮れました。
複数個体だったかもしれません。

この日は別な場所でもコクロアナバチと出会い、ノブドウに訪花していました。

関連記事→「飛べ!コクロアナバチ【ハイスピード動画】



2013/09/01

ヘクソカズラの花で盗蜜するクロマルハナバチ♀



2013年7月中旬

民家の庭木にヘクソカズラの蔓が巻き付いていて、クロマルハナバチBombus ignitus)のワーカー♀複数個体が訪花していました。
蜂はヘクソカズラの悪臭を苦にすることも無く、花から花へせっせと飛び回っています。
採餌の様子をよく観察すると、花の根元を外から噛み切って蜜腺を直接舐めていました。
これはまさに穿孔盗蜜と呼ばれる行動です。
蜂が飛び去った後の花には盗蜜痕の穴が開いていました。
後脚の花粉籠に白い花粉団子を付けている個体もいますが、ヘクソカズラ以外の花から集めてきたことになります。

(クロマルハナバチは)マルハナバチの中でも舌が短く、花筒が短い花を好む。花筒に穴をあける盗蜜を行い、他のハチがあけた穴を二次利用することもある。(wikipediaより)

「ヘクソカズラ、盗蜜」でネット検索してみると、「ヘクソカズラ考」と題した興味深いブログを見つけました。
花の構造も写真付きで解説してくれています。
私も後日、ヘクソカズラの花弁を縦に裂いてみると、確かに毛が中に密生していることを確認しました。
この毛がアリによる盗蜜を防ぐために発達した物なら、正当訪花する真の送粉者は何者なのでしょうか?
ハエを誘引するにしては中途半端な悪臭のような気がします。(腐臭を発する植物が知られています。)※追記参照
別な日にヘクソカズラに訪花するヒメハナバチまたはコハナバチの一種を目撃しました。(映像なし)
そもそもアリが花に潜り込んでも受粉を助けてくれるのなら一向に構わない気がします。
むしろクロマルハナバチやクマバチによる穿孔盗蜜への対策を進化させるべきでしょう。


※【追記】
石井博『花と昆虫のしたたかで素敵な関係 受粉にまつわる生態学』によると、悪臭を放つヘクソカズラはハエ類を誘引する産卵基質擬態花ではないと明記してありました。
ヘクソカズラの嫌な匂いは、葉や茎を潰したときに出るものです。したがってヘクソカズラ特有の臭い匂いは送粉とは関係ありません。ヘクソカズラの花は比較的多くの花蜜を分泌しており、ハナバチ類やチョウの仲間がよく訪れます。(p170脚注より引用)

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