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2024/03/15

ラティス外枠の角材をかじって巣材を集めるフタモンアシナガバチ♀

 

2023年6月下旬・午後12:00頃・くもり 

民家の軒下の外壁に木製のラティス(格子)が立てかけられたまま放置されています。 
雨ざらしで年季の入ったラティス外枠の角材にフタモンアシナガバチ♀(Polistes chinensis antennalis)が止まって巣材集めをしていました。 

後退しながら角材表面の靭皮じんぴ繊維を齧りとろうとしています。 
しかし材質が固くて歯が立たないのか、初めはパルプが全く採取できません。 
あちこち場所を変えながら齧ってみて、ようやく少しずつながらも角材の靭皮繊維を剥ぎ取り始めました。 
まるでカンナ掛けのように薄く靭皮繊維をかじり取っています。 
時間を掛けて苦労しても、巣材の玉がなかなか大きくなりません。 
もっと柔らかな材質の木材を探し直せばよいのに…と素人目には思うのですけど、なぜこの硬い角材に固執しているのでしょうか? 

最後は顔と触角を前脚で拭ってから、巣材の団子を抱えて飛び去りました。 
飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。(@3:12〜) 

未だ時期的にワーカー♀ではなく創設女王だと思われますが、体長を採寸できませんでした。 
飛び去った蜂を見失ってしまい、営巣地がどこにあるのか突き止められませんでした。 
アシナガバチは靭皮繊維と唾液を混ぜ合わせた天然パルプだけを使って紙製の軽くて丈夫な巣を作り上げます。

フタモンアシナガバチ♀の巣材集めを観察できたのは、これが未だ2回目です。 


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2024/03/05

丸太の表面から繊維をかじり取って巣材を集めるセグロアシナガバチ♀

 

2023年6月下旬・午後12:05頃・くもり 

雪国で冬に屋根から雪下ろしをすると、1階の窓が重い雪に埋もれて破損する恐れがあります。
それを防ぐため、冬になる前に窓を雪囲いする必要があります。 
この平屋建ての古い民家では、細い丸太を何本か軒下の外壁に立てかけ、その支柱に釘で板を横に打ち付けて窓を守る雪囲いとしています。 
春になって採光のため板を数枚撤去した後も、骨組みはそのまま残してありました。 

ある日私が通りかかると、1匹のセグロアシナガバチ♀(Polistes jokahamae)が軒下の雪囲いから巣材集めをしていました。 
初めは横板の端をかじっていたのですが、材質が固くて表面の繊維がうまく採取できなかったようです。 
少し飛び回ってから、支柱の細い丸太に止まり直しました。 
今度は横を向いてくれたので、大顎で繊維を齧り取る様子がしっかり観察できました。 
毛羽立った繊維を上から下に向かって薄く剥ぎ取っていきます。 

同定の識別ポイントである前伸腹節が側面からは見えませんが、肩が茶色ですし、腹部に波打った褐色紋があることから、キアシナガバチではなくセグロアシナガバチだろうと判断しました。 
セグロアシナガバチ♀の巣材集めは初見です。 
時期的に創設女王とワーカー♀の可能性が両方ありますが、体長を測ってないので見分けられません。 

セグロアシナガバチ♀は、せっかく集めかけた巣材を惜しげもなく前足で払い落とすように捨ててしまいました。 
それまでも材木の表面の繊維をあちこちで試しにかじり取っていました。
巣材となるパルプの質に納得がいくまでこだわりを示すアシナガバチを見たのは初めてかもしれません。 
巣のどの部分を作るための巣材なのか、確かめられなかったのが残念です。
丸太の表面をタールで防腐処理してあるのが気に入らないのかな? 
しかしアシナガバチは天敵のアリが巣に来ないように、自ら分泌したタール状の物質を巣柄や巣盤の天井に塗りつけます。

セグロアシナガバチ♀は丸太で一度下向きになったものの、再び上向きに戻って場所を少し変え、巣材集めを再開しました。 
齧り取った繊維を噛みほぐして前足で丸く整形すると咥え直し、追加の巣材集めに戻ります。 

前脚で顔を拭ってから、巣材の団子を抱えて飛び立ちました。 
どこか近くに営巣地がありそうですけど、蜂を見失ってしまいました。 
丸太のあちこちに蜂が繰り返し齧った跡が残っているということは、お気に入りの場所なのでしょう。 
同一個体が巣材集めに戻って来るまで、ここでしばらく待てば良かったですね。 
用事があって先を急いでいた私は、1回で観察を打ち切りました。 


【追記】
この細長い真っ直ぐな丸太は、おそらく間伐された若いスギと思われます。
余計な横枝を切り落とし、ゴワゴワした樹皮をきれいに剥いでから丸太として利用されます。
したがって、今回セグロアシナガバチ♀が巣材としてかじり取った丸太表面の繊維を樹皮と呼ぶのは間違いですね。
樹皮直下の繊維状の組織を何と呼ぶのか、正式名称を知りません。(形成層?)
靭皮繊維と呼ぶらしい。


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2024/02/29

ヘルパー♂が巣穴を掘る作業中に進捗状況を確かめに来て労をねぎらうニホンアナグマ♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月中旬 6/14・午後18:45〜18:47(日の入り時刻は午後19:06) 

日没前の夕刻にニホンアナグマMeles anakuma)のヘルパー♂が巣穴Rrの拡張工事に没頭しています。 
巣穴の中から掻き出した土砂に混じって腐葉土も出土しました。 
おそらく巣材(寝床)として大量に搬入した落ち葉などが分解したものでしょう。 
今まで使っていた居室(子供部屋?)を大幅に改築工事していることが伺えます。 

ヘルパー♂が巣穴Rrの奥深くに潜り込んでいるときに、左側の巣穴Lから母親♀が顔を出しました。 
腹面に乳首が発達していて、左右の目が不均等(右目<左目)なのが、この♀個体の特徴です。 
夕方の営巣地(セット)周辺を警戒しているだけかと思いきや、♀が巣穴Lから外に出てきて巣穴Rの方へ早足で突進しました。 


不意をつかれたヘルパー♂が巣口Rrから慌てて外に跳び退りました。 
ヘルパー♂の方が母親♀よりも少しだけ体格が大きいのに、♀には頭が上がらない様子が見て取れます。 

てっきり、泥だらけで面影が失せたヘルパー♂を外敵(侵入者)と誤認した♀が攻撃するのかと思いました。
アナグマは視力が良くない上に薄暗い時間帯ですし、穴掘りで全身真っ黒に汚れた息子(1歳仔♂)と気づかなくても無理はありません。 
擬人化すると、おかんが息子に 「ちょっとあんた家の玄関先で何してんの、脅かさないでよ〜、誰かと思ったわ」 とか言ってそうです。

しかし、2頭の小競り合いにはならず、♀はヘルパー♂が掘ったばかりの巣穴Rrに入って中を調べています。 
内見を済ませた♀が外に出てくると、巣外で待っていたヘルパー♂に近づいて互いに毛繕いをしました。 
しかし、今回の相互毛繕いは儀式的な挨拶のようなもので、短く終わりました。 
ヘルパー♂の毛皮の泥汚れを♀が対他毛繕いで本格的に落としてやることはありませんでした。 

ヘルパー♂の労をねぎらった♀が元の巣穴Lに戻ると、ヘルパー♂はまた独りで巣口Rrの穴掘り作業をせっせと再開しました。 

左右に離れた2つの巣穴LとRは内部でつながっているはずです。
いくら母親♀が幼獣4頭の育児で忙しいからと言っても、ヘルパー♂が巣穴Rrで穴掘りしていることは、巣L内の♀はとっくに承知しているはずです。 
今さらヘルパー♂の穴掘り作業の物音を外敵の侵入と誤認するとは考えにくいです。 

ニホンアナグマの社会では、穴掘りの重労働はヘルパー♂に任せて、母親は幼獣の育児に専念する、という分業が成り立っているようです。
現ヘルパー♂は性成熟する翌年には♀から営巣地を追い出され、次に選ばれた弟が新たにヘルパー♂を務めることになります。
ヘルパー♂が掘った巣穴は、♀が存命中は自分の財産(不動産)になりません。
つまり、ヘルパー♂を務める個体にとって、♀のために巣穴を掘ってやる行動は明らかに利他的行動になります。

※ ヘルパー♂自身が住む巣穴でもあるので、100%利他行動とは言えませんね。

親孝行するのは当然だという人間社会の価値観を持ち込んでも仕方がありません。
(ヒトにはヒトの、アナグマにはアナグマの暮らし方があるのです。)

アナグマにおけるヘルパー制度の進化は血縁選択で説明できるでしょうか? 
ヘルパー♂が母親の育児を間接的に手助けすれば、血縁度の高い弟や妹が無事に育つ確率が高まり、結果的にヘルパー♂の適応度が上がります。 
ここで問題になるのは、父親が同じとは限らないという点です。 
アナグマの交尾は一夫一妻ではなく乱婚ですから、ヘルパー♂が(間接的に)世話する相手は異父の弟妹となる可能性が高く、血縁度は0.50から0.25に下がります。 
血縁度が0.25と低ければ、アナグマのヘルパー♂が♀の育児(対他毛繕いなど)を直接的に手伝わない理由も納得できそうです。
アナグマ家族の全個体から採血したり毛根を採取したりしてDNAで親子鑑定(父性鑑定)すれば、実際の血縁度が求められるはずです。 
残念ながらアマチュアがこれ以上は追求できません。

ある年に母親♀が産んだ幼獣の性別がもしも全て♀だった場合、翌年のヘルパーは若い娘♀(1歳仔♀)が務めるのかどうか、気になります。
例えば今年2023年に生まれた幼獣4頭が全て♀である確率は1/16=6.25%です。
(まさか、アナグマ♀は女王蜂のように子供の性別を自由自在に産み分けられるのでしょうか?)
ヘルパーが♀の場合には、♂よりも非力で巣穴を掘るのは苦手かもしれません。
しかし、乳母として幼獣(弟や妹)に授乳できる可能性があり、ヘルパーが♂の場合よりもヘルパー自身の適応度がより高まることが予想できます。
ヘルパー♀が独立したときのために子育ての練習になる、というメリットもあるでしょう。
母親♀が死亡した時に娘(ヘルパー♀)への巣穴の継承(相続)もスムーズに進むはずです。
逆にアナグマのヘルパーが♂という現状は、私からすると奇妙な社会で、どうやって進化したのか不思議です。



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2024/02/28

夕方に巣穴をせっせと掘り進めるニホンアナグマのヘルパー♂【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月中旬
6/14・午後18:28〜18:51・(日の入り時刻は午後19:06) 

日没前の夕方に、ヘルパー♂と思われるニホンアナグマMeles anakuma)が右の巣口Rを拡張する工事を始めました。 
巣口Rは更に左右2つの穴に別れているのですが、そのうちの右側Rrを巣外から掘り広げています。 
尻尾に隠れて分かりにくいのですが、巣穴Rrに頭を突っ込んでいる間、股間に睾丸がちらっと見えたので、♀ではなくヘルパー♂と判明。 

穴掘り作業を途中から5倍速の早回し映像に加工しました。 
頭を巣穴Rrに突っ込んだままグルグル回るように穴を掘り広げています。 
土に埋まっている木の根っこや岩などの障害物を除けながら素手で巣坑を掘り進めるのは大変そうです。 
梅雨の時期を選んで穴掘り作業しているとしたら、しみ込んだ雨で土壌が少し軟化して作業が楽になっているのかもしれません。 
掘った土は巣外に掻き出します。 

ようやく穴掘りを中断したヘルパー♂が、外に出て来ました。(@1:23〜) 
上半身が黒い土で汚れています。 
アクセストレンチを後退しながら、掘った土砂を前脚で後方へ掻き出しています。 
やはり股間に睾丸がぶら下がっています。 
画面右へアクセストレンチを形成すると、巣口Rrの拡張工事に戻りました。 


その後は休みなく一心不乱に穴を掘り続けています。 
たまに後ろ向きで巣外に出て来ると、ヘルパー♂の毛皮はお尻以外は真っ黒に汚れていました。(@2:15〜) 
掘った土を巣穴Rrから掻き出しながら後退すると、アクセストレンチが右に形成されます。 
毛繕いだけできれいになるとは思えないのですけど、この後で水浴して汚れを落とすのでしょうか? 
作業の途中で身震いしました。(@2:30〜) 

午後18:44 (@3:48〜)
ようやく充分に暗くなり、赤外線の暗視映像に切り替わりました。 

ヘルパー♂が巣穴Rrに奥深く潜って掘り進めている間に、左の巣口Lから♀がひょっこり顔を出して周囲を警戒しました。(@3:57〜) 
その後の顛末が面白いのですが、次回にまとめました。
♀はすぐに巣内Lに引っ込んだようです。 
前日6/13とは逆で、♀と幼獣4頭が暮らす子供部屋は巣穴Lにあるようです。

やがてヘルパー♂は、今まで掘っていたRrの隣にある巣口Rlも掘り始めました。(@4:25〜) 
2本のトンネルは掘る方向が少し違うようですが、共通のアクセストレンチに掘った土を捨てています。 

午後18:51 
映像終了。 


アナグマの体格に性的二型がある(♀<♂)のは、穴掘りの肉体労働を♂に任せるからだと思ったのですが、若いヘルパー♂(1歳仔)の体格は♀と変わらず、筋骨隆々というほどでもありません。
繁殖期に♀との交尾権をめぐる♂同士の激しい闘争行動は見られなかったので、♂の体格が立派になる理由がよく分かりません。 

※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 




福田幸広、田中浩『アナグマはクマではありません』によると、
・頭胴長は♂63〜70cm、♀は56〜61cm。(裏表紙より引用)

・♀は生後1歳で成長が止まり、全長は74cmになり、♂は生後2歳まで成長するので♀よりも体が大きく、研究によると平均値は全長79cmになります。(p19より引用)


・アナグマは一妻多夫制の乱婚型で、♂は子育てには関わらず♀だけが行ないます。(p18より)

・お母さんは穴掘りには消極的。息子にまかせっきりです。掘削作業は♂がすることがほとんどです。 (p24より)





 

↑【おまけの動画】 
早回し加工する前の等倍速動画をご覧になりたい方のために、ブログ限定で公開しておきます。


【追記】
アクセストレンチの作り方について。

熊谷さとし、安田守『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』(2011年)によれば、
アナグマは、前脚でトンネルを掘り進むと、中でUターンして土を外に押し出す。そのため、巣穴の入口に土を押し出した跡が溝状(トレンチ)に残る。これは「アクセストレンチ」と呼ばれ、アナグマの巣穴か判断するポイントになる。 (p69より引用)

下線部について、私の観察結果と明らかに異なります。

増補改訂版で書き換えられているかどうか、気になります。

熊谷さとし氏は他の著作でも繰り返し書いています。

例えば、熊谷さとし『動物の足跡学入門』(2008年)によると、

アナグマは中に入り込んで方向転換をし、両手で土を外に押し出すのだ。この時の両手の跡がミゾになる。

アナグマは、掘った土を前足で押し出すためにアクセストレンチ(溝)ができる。(p161より引用)

地域個体群によってアナグマの穴掘り行動が違うのかもしれないので、古い本をわざわざ持ち出して熊谷さとし氏を攻撃したり糾弾したりする意図はもちろん私にはありません。
アナグマ関連の書籍がほとんど無かった時代には、(たとえ不完全でも)観察の指針を示してくれる本は非常にありがたかったです。
若輩者があえて苦言を述べさせてもらうならば、穴掘り行動を直接観察してないのに痕跡から推理しただけなら、断定しないで、そのように明記して欲しいです。
アナグマが土を巣内から押し出している様子を示すイラストがもっともらしく添えられているのは、問題がある(誤解を招く)と私は思います。(想像図なら、そのように明記するべき)
ある著作物に刺激・影響を受けた次世代による調査研究によって古い情報が新しく修正されていくのは、自然科学のあるべき姿です。
私のブログもおそらく間違いがいくつも含まれているでしょうし、誰かに指摘されて修正・訂正されていくはずです。


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2024/02/25

ニホンアナグマ♀に叱られてもめげずに巣口を外から掘り広げるヘルパー♂【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月中旬・午後18:55頃・(日の入り時刻は午後19:05) 

日没直前の夕刻なのに鬱蒼とした二次林の中はもうすっかり暗くなり、トレイルカメラは赤外線の暗視モードで起動しました。 
右側の巣口Rは実は更に左右2つの入口(RrとRl)に別れています。 

ニホンアナグマMeles anakuma)のヘルパー♂が巣外に出て、右側の巣口Rrを前脚で掘り広げていました。 
ところが、穴掘り作業中に巣穴Rlの中から母親♀が吠えながら飛び出してきて、ヘルパー♂を撃退してしまいました。 
母親から(理不尽に)ガミガミ叱られたヘルパー♂(1歳仔の息子♂)はすごすごと林縁広場に戻って座り、巣口Rlの♀と互いに見つめ合っています。 
♀も巣外に飛び出してヘルパー♂を遠くまで追い払うほど怒ってはいないようです。 

重労働の穴掘り作業はヘルパー♂が分担するというのが定説なので、とても意外な展開でした。 
ヘルパー♂を危険な侵入者(テンやキツネなどの天敵)と誤認したのでしょうか? 
単に♀は寝起きで機嫌が悪かったのかな?
近くの田畑で昼間ずっと農作業しているトラクター?の騒音や振動が営巣地(セット)まで響いているのがストレスなのかもしれません。 

♀が巣穴Rlに引っ込むと、ヘルパー♂は懲りずに巣口Rrの拡張工事を再開しました。 
左右の前脚を交互に使って後ろに土を掻き出しながら後退するので、結果的にアクセストレンチ(傾斜のついた溝と排土の小山)が形成されます。 

穴掘り作業を止めたヘルパー♂は、二次林の中へゆっくり入って行きました。 
おそらく疲れて空腹になり、採食に出かけたようです。 

※ 登場したアナグマ2頭の性別は、外見の特徴からではなく、行動から推定しました。 
※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。


この営巣地は♀が毎年子育てする場所です。
4頭の幼獣が順調に育つと子供部屋や巣口が狭くなるのでしょう。
子育てで忙しい♀がヘルパー♂に掘り広げてもらいたかったのは、そっちの穴(Rr)ではなかったのかもしれません。
ヘルパー♂の仕事ぶりに♀が不満を持ったとして、巣穴の拡張プランをヘルパー♂に細かく具体的に指示するなんてことはあるのでしょうか?
アナグマにそんな高度なコミュニケーション能力があるとは思えません。
(♀が自ら手本を示すしかない気がします。)
ヘルパーを務めるのは1歳仔(性成熟する前の若い♂)ですから、♀より腕力は多少あっても造巣経験が浅いままでヘルパーを卒業(巣立ち)してしまいます。
翌年は1歳下の弟が次のヘルパーを務めることになります。
代々の若いヘルパー♂たちが気分任せで行きあたりばったりに(または本能に従って)穴を掘るだけで、 うまいこと造巣できるのが不思議です。


2024/02/15

巣材の落ち葉が足りず青葉も集めるニホンアナグマ♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月上旬〜中旬 

ニホンアナグマ♀(Meles anakuma)が2夜連続で大量の巣材(寝床・敷きわら)を繰り返し集めてくるシーンをまとめました。
画面に表示される気温はすべて異常値です。


シーン1・6/10・午後19:38・(@0:00〜) 
晩に左の巣穴Lからアナグマ♀が外に出てきました。 
暗視動画で左右の目の大きさが異なり(右目<左目)、右の首筋に白斑があるのが、この個体の特徴です。 
この2つの特徴は、見る角度によって分かりにくいことがあります。 
授乳期の♀は腹面に乳首が目立つようになります。 

巣材集めは♀の仕事のようです。 
ヘルパー♂が巣材集めをするのは一度も見たことがありません。 

アクセストレンチを辿ってまっすぐ二次林に向かうと、木陰で立ち止まって自分の体を掻きました。 
林縁の灌木に前足を掛けながら後足で立ち上がると、高いところにある枝葉を毟り取り始めました。 
林床に落ち葉が足りなくなると、臨機応変に木の青葉(生葉)を調達するのです。 
もしかすると、生葉の方がアロマ効果や防虫効果があるのかもしれません。



シーン2・6/10・午後19:39・(@0:46〜) 
別アングルで設置したトレイルカメラにも撮れていました。 
しかしカメラの起動が遅れ、♀が後退しながら巣材を手前の巣穴Lに搬入したシーンは撮り損ねてしまいました。 

すぐにまた同じ巣穴Lから外に出てきました。 
今度は別の方角へ巣材集めに出かけます。 


シーン3・6/10・午後19:39・(@1:12〜) 
集めた巣材を前脚で掻き寄せながらアクセストレンチを後退し、最後は滑り込むように入巣Lしました。 
次に出巣Lした♀は、獣道を左に向かいます。 


シーン4・6/10・午後19:41・(@1:41〜) 
またもやカメラの起動が間に合わず、後退での巣材搬入シーンをじっくり撮れていません。
次に出巣Lした♀は、アクセストレンチから奥の二次林へ真っ直ぐ向かいます。 
途中で長い落枝をうっかり踏んでしまいました。 



シーン5・6/10・午後19:42・(@2:33〜) 
巣材を探して、夜の二次林をうろついています。 


シーン6・6/10・午後19:42・(@2:54〜) 
右奥の二次林から巣材を掻き集めてくると、後ろ向きで戻ってきました。 
今回も落ち葉ではなく、木の青葉(生葉)を枝ごと採取してきたようです。 
左の巣穴Lに巣材を運び込み、すぐにまた出巣Lしました。 
前回とは違う方角へ向かったのですが、巣材集めではなく採食に出かけたようです。 


シーン7・6/10・午後23:06・(@3:20〜) 
次の巣材搬入までだいぶ時間が開きました。 
巣穴Lから外に出てきた♀がアクセストレンチから真っ直ぐに林縁に向かうと、灌木の根本で落ち葉を掻き集め始めました。 
後ろ向きのままアクセストレンチをスルスルと戻り、落ち葉を巣穴Lに運び入れました。 

改めて出巣Lした♀は左へ向かいます。 
採食に出かけたのかな? 


シーン8・6/10・午後23:06・(@4:00〜) 
同じシーンが別アングルの監視カメラでも撮れていました。 


シーン9・6/11・午前2:03・(@4:42〜) 
日付が変わった深夜未明に、♀がまた出巣Lしました。 
アクセストレンチでちょっと座ってからすぐに立ち上がり、画面を横切って右下へ。 

しばらくすると、前脚で落葉落枝を一緒くたに掻き集めながら、後ろ向きで戻ってきました。 
落枝は巣材(寝床)として不適切だと思うのですが、わざわざ落ち葉を選り分けずに(細かいことは気にせずに)巣穴Lへ搬入します。 
せっかく集めてきた巣材の一部が、アクセストレンチに放置された長い落枝に引っかかってしまいました。 
それを前足で丹念に集め直しています。 

邪魔な落枝を取り除けばよいのに…といつも思うのですけど、アナグマは横着なのか巣口の付近に放置したままです。 
不審者の侵入を知らせる防犯効果があるのかもしれません。 


シーン10・6/11・午前2:03・(@5:31〜) 
同じシーンが別アングルの監視カメラでも広角で撮れていました。 


シーン11・6/11・午前2:07・(@6:13〜) 
数分後にも別の方角から新たに集めてきた大量の巣材を巣穴へ運び入れました。 
巣材をずるずると引きずっていたので、蔓植物の葉っぱを毟り取ってきたようです。 

今回は新しい巣材を巣口Lにも少し敷き詰めたのが、ちょっと珍しい行動です。 
巣口Lを出入りする幼獣たちがアクセストレンチから転がり落ちても大丈夫なように、クッションとして置いたのかな? 

次に出巣Lした♀は身震いしてからぐるっと回り込み、右側の巣口Rを点検しています。 
その途中で長い落枝をうっかり踏みつけてしまいました。 
巣口Lの横を通って左へ向かいます。 


シーン12・6/11・午後19:54・(@7:14〜) 
明るい日中は巣内で寝て、晩になると活動を再開します。 
♀が大量の落ち葉を前足で掻き集めながら、右の巣穴Rへ後ろ向きで運び込みました。 

しばらくして同じ巣穴Rから外に出てきた♀は、身震いしてから今度は右奥の林内へ向かいました。 


シーン13・6/11・午後19:51・(@7:54〜) 
ここだけ時系列が逆になってしまいました。 
 アナグマ♀がノソノソ歩いて画面の左下へ消えると、周囲の灌木が激しく揺れました。 
カメラの死角でアナグマ♀の姿が見えませんが、おそらく後足で立ち上がり、灌木の枝葉を巣材として採取しているようです。 
早回し映像に加工すると、立ち木の振動が分かりやすいです。 

※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


アナグマは何年もかかって地中に巣穴をいくつも掘り広げ、セットを形成します。 
子育ての時期は特に大量の巣材を巣穴に運び込みます。 
巣穴を中心にあちこちに出かけては、林床の落ち葉を集めてきます。 
林床の落ち葉が枯渇すると、こんどは青葉のついた枝や蔓植物を集めてくるようになります。
アナグマが巣材として集めてくる植物の種類をきっちり同定するには、どうしても巣穴を発掘調査する必要がありそうです。

おそらく巣内には大量の腐葉土が形成されて、そこにも土壌生物やキノコなどさまざまな分解者による生態系が形成されているのではないかと予想されます。 
アナグマが掘った古い巣穴をタヌキやキツネ、イタチなどが乗っ取って再利用するそうです。 
また、アナグマは決まった場所に通って溜め糞をするので、そこにも糞虫など独自の生態系が形成されます。
このように、ニホンアナグマは(ビーバーほどではありませんが)営巣地周辺の環境をかなり改変して生態系に大きな影響を与えています。
したがって、キーストーン種と言えるのではないかと個人的に思うようになりました。 
(アナグマ・ファンの贔屓目かもしれません。)


2024/02/11

後足で立ち上がって樹上の枝葉を巣材として集めるニホンアナグマ【トレイルカメラ】

 



2023年6月上旬・午前8:12・気温20℃ 

朝からニホンアナグマMeles anakuma)が林縁で巣材を集め始めました。 
明るい時間帯の巣材集めは初見です。

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これまでは林床の落ち葉を掻き集めて寝床(敷きわら)としていたのですが、営巣地(セット)の周辺ではもはや落ち葉が枯渇したようです。 
細い蔓を咥えて後ろに引っ張り、引きちぎろうとしています。 
緑の木の葉などを前足で手前に掻き寄せながら素早く後退し、そのまま左奥の巣穴Lに入りました。 

同じ巣穴Lから外にすぐ出てくると、さっきと同じ場所(林縁)に戻り、前足で立木に手を掛けながら後足で立ち上がりました。 
高い位置にある横枝に前足が届くようになったので、その枝葉を落とし、そのまま巣材とするようです。 
セット(営巣地)周辺の灌木で小枝がすっきり剪定されている理由がこれで分かりました。 
夜の林内でアナグマが後足で立ち上がる行動は暗視動画で何度か撮れていたのですが、何をしているのか暗くてはっきり分かりませんでした。
今回ようやく巣材集めの決定的な証拠映像が撮れました。

おそらく♀ではないかと思うのですが、今回はアナグマの性別を見分けられませんでした。 
別アングルに設置したトレイルカメラで同時に撮れてなかったのが残念でなりません。 


今回のポイントは次の3つです。 
  • アナグマは明るい時間帯でも巣材が必要になれば巣の外に出て集める。 (昼行性になることもある。)
  • 林床の落ち葉や枯葉、枯草が無くなれば、臨機応変に緑の生葉を集めるようになる。 
  • 後足で立ち上がって高所の枝葉を採集することができる。 

アナグマが巣材として採取した植物の種類までは映像から見分けられませんでした。 
植物質の物で肌触りが柔らかければ何でも良いのかも知れません。
もしかすると、防虫効果やアロマ効果などの薬効を狙って特定の種類の植物(薬草やハーブなど)を集めていたとしたら面白いですね。 
例えば猛禽類は、防虫や殺菌用の巣材として針葉樹の枝を緑の葉を付けたまま持ち込むことが知られています。 

宮崎学『ワシ・タカの巣 (森の写真動物記 3)』によると、
樹上に巣をつくるワシ・タカはみな、殺菌作用のある青葉を巣に運びます。えさがくさって、菌が広がるのをふせぐためです。 (p24より引用)


2024/02/10

昼間に巣穴のアクセストレンチを掘り始めたニホンアナグマのヘルパー♂【トレイルカメラ】

 



2023年6月上旬・午後12:43・気温19℃ 

ニホンアナグマMeles anakuma)の営巣地(セット)で珍しく明るい昼間から成獣2頭が巣外で活動しています。 
どちらが♀でどちらがヘルパー♂なのか、日中は個体識別できませんでした。 

左奥の巣穴Lから外に出てきた個体aがそのまま歩いて、右手前の巣穴Rに入りました。 
その一方、林縁にいた別個体bが巣口Lに歩み寄り、前足で地面を掘り始めました。 
巣口Lから右に向かってなだらかな傾斜(アクセストレンチ)を作り始めたようです。 
地中の浅いところから灌木の根っこを引っ張り出しました。 
アナグマの巣穴周辺に落葉灌木(マルバゴマキ)の細い灌木が自生しています。
夏になったらその葉が生い茂ってアナグマの巣穴を隠蔽し、撮影しにくくなるのではないかと懸念していました。
ところがアナグマの巣穴周辺だけきわめて生育が悪くて枯死しそうです。
これには以下のような複合的な理由がありそうです。
  1. 毎年冬に深い積雪の圧力で細い幹が捻じ曲げられる。
  2. 夏になっても林冠ギャップがほとんど無くて日照不足。
  3. 地中の根っこが頻繁にアナグマに痛めつけられている。

アナグマがアクセストレンチを掘る作業を別アングルの監視カメラでも同時に撮れていないのが残念でした。 
造巣の穴掘りはヘルパー♂の仕事とされているらしいので、個体bがきっとヘルパー♂(1年仔の若い息子)なのでしょう。 
幼獣4頭を育てる子供部屋が手狭になってきたとか、造巣の必要性や細かい指示を母親♀から受けているように見えないのですが、ヘルパー♂自身の判断でセットの巣穴やアクセストレンチが少しずつ拡張されているようです。 


2024/01/29

大量の落ち葉を掻き集めて引っ越し先の巣穴に運び入れるニホンアナグマ♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月上旬 

ニホンアナグマ♀(Meles anakuma)が巣材集めを繰り返す様子をまとめてみました。  


シーン1:6/1・午後23:09・(@0:00〜) 
幼獣を手前の巣穴Lに運んでから(R➔L)1時間40分後。 
夜更けに手前の巣穴Lから外に出てきた♀が、アクセストレンチから離れて左へ向かいました。 
しばらくすると、♀が左からピョンピョン跳ぶように後退りしながら戻って来ました。 
林床の落ち葉を前脚で大量に掻き集めて来たのです。 
落ち葉を両腕いっぱいに抱えたまま、後ろ向きで巣材を巣穴Lに搬入しました。 


シーン2:6/4・午後18:18・(@0:33〜)日の入り時刻は午後19:00。 
3日後の夕方に自動センサーカメラが起動すると、♀(?)が巣材を奥の巣穴Rへ運ぶ途中でした。 
両腕に大量の落ち葉を抱えたまま、立ち止まって地面に鼻面を突っ込んでいます。 
何か虫(獲物?)を見つけてしまったようです。 
気が散ったアナグマは、その場に座り込んで毛繕いを始めました。 

ようやく巣材運びを再開。 
今回は興味深いことに、巣材(寝床、敷き藁)の落ち葉を巣内には持ち込まずに巣口Rに雑に置いただけでした。 

そのまま奥の広場に座り込むと、体の痒い部位をボリボリ掻いたり仰向けで毛繕いしたりし始めました。(5倍速の早回し) 
大股開きになった股間に陰茎は見えませんでした。 
下腹に見えた突起は乳首なのかな? 


シーン3:6/6・午前3:58・(@1:16〜) 
2日後の未明。 
幼獣を奥の巣穴Rに運んでから(L➔R)2時間15分後に、♀が画面の右下(巣口Lの横)で落ち葉を前足で掻き集めていました。 
監視カメラの電池が消耗していて断片的な映像ですが、後退しながら巣材と一緒に奥の巣穴Rに入りました。 


シーン4:6/6・午後19:39・(@1:28〜) 
同じ日の晩。 幼獣を手前の巣穴Lに運んでから(R➔L)13分後。 
♀が落ち葉を集めて巣穴Lへ搬入しました。 
巣口Lのアクセストレンチには細長い落枝が数本放置されていて、それに落ち葉が引っかかり、搬入作業の邪魔になっています。 


シーン5:6/6・午後19:42・(@1:43〜) 
次の巣材集めから後ろ向きで戻って来た♀が、落ち葉を手前の巣穴に運び入れました。


シーン6:6/7・午前1:31・(@2:04〜) 
日付が変わった深夜に、今度は奥の巣穴Rへ巣材を搬入しました。 
 幼獣を奥の巣穴Rに運んでから(L➔R)1時間35分後のことでした。 


シーン7:6/9・午後18:14・(@2:09〜)日の入り時刻は午後19:03。 
2日後の夕方。 
昼間に寝た後の寝起き状態の♀?が、営巣地(セット)をうろついたり、地面に座って体を掻いたりしています。
やがて手前の巣穴Lに入りました。 

しばらくすると再び出巣Lした♀が、アクセストレンチの上端で身震いしてから左に立ち去りました。 
後ろ向きで集めてきた落ち葉を巣穴Lに搬入。 


シーン8:6/9・午後18:16・(@2:47〜)
出巣Lした♀が左上奥の林内に向かいました。 
しばらくすると、いつものように後退しながら落ち葉を運んできたものの、量が全然足りないので、落ち葉を求めて今度は左へ向かいました。 
アナグマの営巣地周辺(セット)の地面には落ち葉がきれいさっぱり無くなっているので、逆にそれが目印(フィールドサイン)になるかもしれません。
(落ち葉が無くなれば、生葉を集めてくることもあります。)
巣材が大量に得られない環境には営巣できないことになります。
引越し祝いで稲藁などを与えてやれば、アナグマ♀は嬉々として巣内に運び入れ、巣材として使ってくれるでしょう。


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。


【考察】 
アナグマ♀は幼獣を引っ越した先の巣穴に必ず新しい巣材を補充することが分かりました。 
この行動パターンはよく理解できます。
ただし、引越し先に予め新しい巣材を用意しておくことはないようです。
幼獣引っ越しのシーン(前回の記事)と巣材搬入のシーン(今回の記事)を別の動画に切り分けたのですが、単純に時系列順にお見せした方が分かりやすかったかもしれません。 
しかし実は、幼獣引っ越しと巣材搬入の間に長々と別な行動(毛繕いや徘徊など)が挟まることが多いのです。 

アナグマは二次林で林床の落ち葉を大量に掻き集めて地中に搬入し、腐葉土を作る役割を果たしている、と言えそうです。 
使い古した巣材をときどき巣外に搬出することがあります。 
落ち葉の分解や発酵を促進しているとしたら、カブトムシなど腐葉土に産卵する虫がアナグマの巣穴に来たりしないのでしょうか?
巣材の腐葉土を餌にしてカブトムシの幼虫が育ったら、それをアナグマが捕食するかもしれません。 

落ち葉と言えば秋の印象ですから、初夏の林内に落ち葉が残っているのか?と疑問に思うかもしれません。 
春から初夏にかけて若葉があっという間に成長して林冠をびっしり埋め尽くすと、日光が林床まで届く前に遮られて昼間でも林内は薄暗くなります。 
そうなると林の上層部(林冠)より下の枝から生えた若葉は日照不足となり、競争に負けた木は黄変した葉を惜しげもなく落としてしまいます。 
実際、この時期に撮れたトレイルカメラの映像に、落ち葉がはらりと舞い散る様子がたまに写っていることがあります。 

巣口Lのアクセストレンチには細長い落枝が数本放置されていて、苦労して運んできた落ち葉がそれに引っかかり、搬入作業の邪魔になっています。 
我々の感覚だと、邪魔な落枝を玄関から早く取り除けば良いのに…と思うのですが、横着者のアナグマは放置したままです。 
もしかすると、この落枝には防犯の意味があるのかもしれません。 
侵入者が巣口に近づくと落枝を踏んでしまい、その物音で巣内のアナグマに知らせる警報装置になっているのではないか?と思いつきました。 


2024/01/14

民家の軒先で見つけたキイロスズメバチの古巣(再建巣跡)

2023年5月下旬

郊外の農村部(田園地帯)で2階建て民家の西向きの軒先にスズメバチの巣を見つけました。 
コガタスズメバチVespa analis insularis)の創設女王が今季作り始めた初期巣にしては形がいびつですし、細長い煙突のように下向きに伸びているはずの巣口がありません。 
巣に出入りする蜂の姿はなく、昨年(またはそれ以前に)作られた古巣のようです。 
キイロスズメバチVespa simillima xanthoptera)の巨大な巣が一度駆除された跡に再び小さく再建した二次巣ではないかと推測しました。

2024/01/12

巣材の落ち葉を2つの巣穴に繰り返し運ぶニホンアナグマ♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年5月下旬 

ニホンアナグマ♀(Meles anakuma)がまた巣材集めをするようになりました。 

シーン1:5/29・午後18:53・(@0:00〜) 
首筋に白い毛の部分(白斑?)がある♀が、前足で落ち葉を掻き寄せながら手前の巣穴Lに後ろ向きで入ります。 
細い落枝も一緒に運び込んでしまっても、細かいことは気にしないようです。 

しばらくすると、同じ巣穴Lから外に出て来ました。 
身震いしてから左に立ち去ると、カメラの周囲のマルバゴマギ灌木が激しく揺れ始めました。 
アナグマ♀がカメラの死角でゴソゴソ動いているようです。 
林床の落ち葉をかき集めるだけでは足りずに、近くに生えた灌木の枝に付いた生の葉っぱ(若葉)もむしり取っているのかもしれません。 


シーン2:5/29・午後18:58・(@1:14〜) 
新しく集めてきた巣材を巣口Lに敷き詰めただけで、なぜか巣穴Lの奥には運び込みませんでした。 
どんな意味があるのか、これはちょっと興味深い行動です。 
♀はそのまま右へ立ち去りました。 


シーン3:5/27・午前0:51・(@1:32〜) 
2日前の深夜にも巣材集めをしていました。 
奥の巣穴Rに巣材を繰り返し運び入れています。 
手前に生えた灌木の枝葉が邪魔で、アナグマの性別もよく見分けられませんでした。 
(巣材集めは♀の仕事だと今のところ考えています。)


 ※ 都合により、動画の順序を入れ替えました。(見て分かりやすい映像を先に紹介しました) 
※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


2024/01/08

コンクリートの橋桁に巣作りを始めたイワツバメ♀♂(野鳥)

 

2023年5月下旬・午後12:35頃・晴れ 

河原の橋の下にツバメの群れが高速で出入りしていました。 
カメラでズームインしてみると、いわゆる普通のツバメではなく、イワツバメDelichon urbica)という白黒の種類でした。 
どうやら橋桁の下に泥巣の土台を作り始めた基礎工事の段階のようです。 
私が近くからカメラを向けて撮影しても、イワツバメはさほど気にせずに造巣作業を続けています。 

ファーブル昆虫記』では人家に泥巣を作る蜂(ドロバチ類)の習性と比較するために、ツバメの造巣行動も観察しています。 
私はいわゆる普通のツバメの造巣行動もまだ観察できていません。 
この川の流域にイワツバメが生息することは気づいていたのですが、まさか巣作りを観察できるとは、千載一遇のチャンスです。 

関連記事(4年前の撮影)▶ 飛んでいるイワツバメを見つけた!(野鳥) 


実は、同じ流域の別な橋で橋桁の垂直な壁面(高所)になすりつけた泥汚れを過去に見た記憶があります。
てっきり悪童が泥団子を橋脚に投げつけて遊んだ跡なのかと当時は思ったのですけど、今思えばあれもイワツバメが作った泥巣の痕跡だったのでしょう。(※追記参照)

この橋の下をよく調べると、進捗状況の異なるイワツバメの泥巣が2箇所に作られていました。 
造巣を始めたばかりの♀♂ペアに注目します。

橋の下は鉄筋コンクリートの橋桁や橋脚に囲まれているため、イワツバメの鳴き声♪が反響しています。 
他にはカワラヒワも鳴いています♪。 
私の背後から川のせせらぎ♪も聞こえます。 





飛来したイワツバメは垂直のコンクリート壁面に塗りつけた泥玉を足掛かりとして辛うじて止まると、嘴に咥えた巣材の泥を新たに塗りつけ、泥巣の形を整えています。 
橋桁のコンクリートの壁面だけでなく、天井部の隅にも泥の巣材を塗り付けようとした形跡がありました。 
 『やまがた野鳥図鑑』でイワツバメの造巣習性を調べてみると、理由が分かって納得しました。
集団繁殖する種で、校舎の軒下や橋げた、歩道橋下などに営巣し、付近の上空を群れで飛んでいる。  「岩燕」と書く。もともとは山地の岩棚に営巣していたのだろう。建造物を岸壁などに見立てて巣作りするケースが増えている。イワツバメはツバメと違って天井ぎりぎりに巣を設け、その出入り口は狭い。中にはたくさんの羽毛が入っているようだ。(p91より引用)

イワツバメが泥巣aに飛来し、飛び去る様子を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
垂直な壁面に危なっかしく止まっている際には、キツツキと同じく硬い尾羽根の先端で体を支えていることが分かり、興味深く思いました。 

1回の巣作り作業は短時間で終わり、またすぐに飛び去ります。 
おそらく近くの川岸で巣材の泥を採取して来るのでしょう。 





2羽のイワツバメが相次いで飛来して、作りかけの泥巣に並んで止まることがありました。 
てっきり♀♂つがいが協力して巣作りしているのかと思ったのですが、イワツバメは集団でコロニーを形成するらしいので、2羽の♀が隣合うようにそれぞれの泥巣を作っているのかもしれません。 
私はイワツバメで性別の見分け方を知りません。 
ツバメと同じく尾羽根の長さに注目するのかな? 
バードリサーチニュースの生態図鑑でイワツバメを参照すると、素人には識別が難しそうです。
・羽色は雌雄同色.(中略)オスは肩羽および背から頭上にかけての藍色光沢が強い傾向にある. 
・さえずりは「ピチュルピチュルピチュル」と早口に長く繰り返す.繁殖期は飛翔中や巣内でよくさえずり,この声はオスのみが出すと思われる.地鳴きは「ジュリ,ジュリ」と鳴く. 
・繁殖システムは一夫一妻.つがい関係は毎年異なるものが多く…(後略) 
・巣: 建造物や岩場の崖,トンネルの出入り口などの雨の当たりにくい場所に営巣するが,近年は自然物への営巣は少ない.建造物は人家よりも橋桁や高架下,学校や病院などを好む.一般的にコロニーを作って繁殖し,一度作られた巣は長期間にわたって利用される.コロニーを放棄することもあるが,放棄されたコロニーが数年後に再び利用される例もある.巣材は泥が中心で,壁や庇の下に深い椀形で出入り口の狭い巣を作る.泥はコロニーから約200m離れた水田や約50m離れた水溜りから運んでいることが観察されている.(中略)多くの個体が古巣を補修して繁殖をおこなうが,新たに巣を作る場合の造巣日数は21.1±3.8日(n=14)であった (西 2009).

せっかくなのでイワツバメの造巣過程を微速度撮影しようと思い、急いで三脚を取りに家へ戻りました。 
ところが2時間後(午後14:45頃)に戻ってきて微速度撮影をいざ始めたら、イワツバメの親鳥は全く来なくなってしまいました。 
短いですが、10倍速の早回し映像を最後にお届けします。 (@3:16〜)
こんなことなら、三脚なしの手持ちカメラで動画撮影を続けるべきでした。
黒く濡れた泥は、新しく作られたばかりの部分です。 
巣材の泥が乾いた部分は白っぽく見えます。 









同じ橋桁で少し離れた地点にもう1つ別な泥巣bを見つけたので、後半はそちらを微速度撮影しました。 
初めに見つけた泥巣aよりも造巣作業がずっと進んでいて、素人目にはほぼ完成しているようです。 
長撮り監視しても、巣内で雛が顔を出すことはありませんでした。












さて、どうしてイワツバメは造巣を途中で止めてしまったのでしょうか? 
一日の中でも特定の時間帯にしか造巣行動をしないのかな? 
巣材の泥が乾いて強度が増すまで待っているのではないか?と推測しました。 
それとも、私が橋の下に設置した三脚カメラを警戒して営巣地に近寄らなくなってしまったのでしょうか? 
一応、橋の下に生えた雑草の茂みに三脚を隠したつもりで、微速度撮影中の私はカメラから離れて時間を潰していました。 
次回は迷彩ブラインドを持参して、三脚カメラ全体を本格的にカモフラージュ(隠蔽)するべきかもしれません。 
しかし、ツバメはカラスなどの天敵(捕食者)を避けるためにわざわざ人家の近くに営巣するシナントロープです。 
この橋の下も昼間はヒトがジョギングやイヌの散歩のため結構頻繁に往来しています。 
イワツバメも他の野鳥に比べてヒトに対する警戒心は薄いと思うのですが、どうなんでしょう? 

作りかけの泥巣の真下には、コンクリート基質に付着できなかった巣材の泥玉が大量に散乱していました。 
巣内で孵化した雛が排泄した糞なのか?と一瞬思ったのですが、よく見ると白く乾いた泥玉(巣材)でした。 

泥巣aの直下



泥巣bの直下




この時期の私は忙しくて、定点観察に連日通うのは無理でした。 
後日、現場入りしてみると、残念ながらイワツバメの営巣は失敗していました。 
まさか橋の下に作られたイワツバメの巣をわざわざ高所作業車を使ってまで駆除するヒトは居ないはず…と信じたいです。 
イワツバメがコロニーを作ったぐらいで橋脚の機能や強度に悪影響は無いはずです。 
糞害を嫌う潔癖症のヒトは居るかもしれません。 

どうやら橋脚のコンクリート表面が滑らか過ぎて、巣材の泥がしっかり付着できず、重さで自然に剥落してしまったようです。 
橋桁を建造する際に、この点を何か改善してもらえれば(コンクリートの表面を一部ザラザラに加工する等)、イワツバメにとって優しい営巣環境ができるはずです。 
ツバメの仲間は蚊やハエ、羽アリなどを飛びながら捕食してくれる益虫です。 
「害虫が大発生した!」と騒いで殺虫剤を毎年大量に撒かないといけない事態になるのは、近年ツバメが住宅難(営巣地不足)から数を減らしているのが一因です。 
イワツバメを含めた生物多様性を確保すれば、生態系のバランスが適度に保たれて害虫の大発生は抑えられるはずです。



※【追記】
半年前の冬に撮っていた写真を掘り出しました。

2022年12月上旬
同じ川の流域で少し下流に架けられた別の橋の下をくぐって通り抜ける際に見つけたものです。
コンクリート護岸に鳥の糞がまとまって大量に落ちていたので上を見上げると、コンクリートの橋桁の裏面にイワツバメが作ったと思われる古巣を見つけました。

もっと昔に撮った未公開写真があるはずなので、探しています。




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