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2023/08/02

脱糞中のヤマナメクジを裏返してみる

 

2022年9月中旬・午後13:50頃・くもり 

低山の尾根道でヤマナメクジMeghimatium fruhstorferi)を発見。 
黒っぽい個体でした。 
辺りの地面を這い回った軌跡として、体表から分泌される粘液がカピカピ(テカテカ)に乾いたまま残っていました。 
現場では気付かなかったのですが、動画をよく見ると、頭部の横から金魚のフンのような細長い糞がニョロニョロと伸びていました。 
脱糞シーンを微速度撮影すれば面白そうです。 

採寸した後で定規を使ってヤマナメクジを仰向けにひっくり返すと、腹面は白色でした。 
この個体はなぜか動きがひどく鈍く、自力で起き上がろうとしません。 
2か月前に出会った個体とは大違いです。 
ナメクジも擬死するのかな? 

関連記事(2か月前の撮影):▶ 仰向けにしたヤマナメクジが起き上がるまで

採集して飼育してみようか迷ったのですけど、暑い時期だと家に持ち帰るまでに衰弱しそうで諦めました。 


2023/03/12

仰向けにしたヤマナメクジが起き上がるまで

 

2022年7月中旬・午後16:30頃・晴れ 

下山中の山道で(標高約390m地点の山道)久しぶりにヤマナメクジMeghimatium fruhstorferi)を見つけました。
関連記事(8年前の撮影)▶ ヤマナメクジの交尾【50倍速映像】
道端の茂みに近い日陰で、勾玉(Cの字)のように曲がった姿勢でした。 
右上の頭部から黒い大触角が伸びています。 

定規を並べて置いて採寸してから、ヤマナメクジを裏返してみました。 
触れるとヤマナメクジの大触角が慌てて引っ込みました。 
腹足は白いことが分かります。 
警戒してしばらく擬死(死んだふり)するかと思いきや、意外にも直ちに起き上がり運動を始めました。 
落ち葉に引っかかって完全な仰向けには裏返せなかったのですが、体をねじりながら前進徘徊すると、簡単に起き上がることができました。 
起き上がって体勢が戻ると、徘徊運動(前進)が止まりました。 

ナメクジが這った後には分泌した粘液が薄く残ります。 
粘液が乾くとテカテカと光って見えるために、ナメクジが移動した軌跡が読み取れます。
三脚を持参していれば長時間の微速度撮影が出来たのに、残念でした。 

今思えば、採集して飼育すればよかったですね。
暑い夏だと家に持ち帰るまでに弱ってしまいそうです。


関連記事(2か月後の撮影):▶ 脱糞中のヤマナメクジを裏返してみる



2022/09/14

オオウケマイマイを見つけた!

 

2022年7月上旬・午後15:40頃・くもり

タヌキの溜め糞場rvがあった河畔林でニセアカシア(別名ハリエンジュ)立木の根際(地上32cm)に見慣れないカタツムリを見つけました。 
白っぽくヒビ割れたニセアカシアの樹皮に対して、このカタツムリの茶色い殻は保護色になっていません。 
殻の周縁には毛が放射状に生えていて、殻の厚みが薄く、かなり平べったいことが分かります。
ノギスで採寸すると、殻径〜15cm。 

カタツムリハンドブック』で調べると、 東北地方(奥羽)特産のオオウケマイマイAegista pannosa pannosa) と判明。
殻径17mm、殻高9mm 
分布:東北地方 
殻は扁平で、周縁は著しく角張り、鱗片状の毛が放射状に生える。臍孔は広く、深い。オオケマイマイに類似するが小型。和名は奥羽地方のケマイマイの意味で、「オーウ」という発音に従ってオオウになってしまったものと思われる。 (p71より引用)
谷本雄治『週末ナチュラリストのすすめ(岩波科学ライブラリー) 』によると、
殻に毛が生えているオオケマイマイ。長生きすると、次第に毛が薄くなるらしい。 (p14より引用)
ちなみに、オオウケマイマイの隣にはマイマイガLymantria dispar japonica)の幼虫が2頭、樹皮の縦の割れ目に沿って静止していました。 

動きがないと動画ブログのネタになりませんから、採集シーンも動画に撮ってみました。 
地面に落とさないように手で受ける準備をしながら慎重にペリっと幹から剥がしました。 
殻の入口(正式名称は?)には透明な膜が張っていました。

殻に毛が生えたカタツムリの生体を見つけたのは初めてで、嬉しい収穫でした。 
採集したオオウケマイマイを飼育するつもりだったのですが、残念ながら家に持ち帰るまでの間にお亡くなりになってしまいました。 
乾燥防止のために生葉と一緒に入れたのですが、小さな採集容器の中は暑くて蒸れてしまったようです。 

この河畔林にはカタツムリを捕食するマイマイカブリが生息しています。
その上に、オオウケマイマイという珍しい種類のカタツムリも居たことから、陸貝を巡ってそこそこの生物多様性が辛うじて保たれていることが分かります。
しかし河畔林の伐採が年々進んでいるので、風前の灯です。

2022/01/25

秋の刈田でタニシを捕食するハシボソガラス(野鳥)

 

2021年10月下旬・午前9:00頃・くもり 

稲刈りが終わった田んぼ(刈田)でハシボソガラスCorvus corone)の群れが散開して採食活動していました。 
刈田の奥の端の窪みに水が溜まっているのか、2羽のカラスが代わる代わる水を飲んでいるようです。 
刈株の列に対して斜めから撮っているために、肝心の水たまりがよく見えませんでした。 
1羽が飛び去った後に居残った個体が地面から何か白い虫?を捕食しました。 
カメラを手前に振ると、刈田のあちこちに浅い水たまりができていることが分かります。 

左の刈田にもハシボソガラス2羽が集まり、仲良く並んで採食していました。 
右の個体が刈田の地面から嘴で何かを拾い上げました。 
焦げ茶色の物体で、初めはクルミの実なのかと思いました。 
しかしよく見ると先端がやや尖っているので、おそらくタニシの殻だと思います。 
カラスが嘴でつついただけでタニシの殻は割れるのでしょうか? 
もしかするとクルミ割り行動のように空中から投げ落としてタニシの殻を割って中身を食べるのかもしれません。 
タニシの捕食シーンを最後まで見届けるべきだったのに、残念ながら撮影中の私は気づいていません。 
むしろ初めに撮った個体の飲水行動が気になっています。 
水たまりをしっかり確認しようと私が少し横に移動したら、カラスたちは逃げてしまいました。
▼関連記事(2年前の撮影) 水田でタニシを捕食し巣に持ち帰るハシボソガラス(野鳥)

このときは、タニシの殻を嘴で壊してから中味を咥えると、その場では飲み込まずに巣へ運びました。


余談ですが、この日、現場近くの農道沿いでハルジオンの花が狂い咲きしていました。





2018/05/07

ヒダリマキマイマイの交尾未遂



2016年5月中旬・午後23:11〜23:15

気温の下がる深夜に飼育容器内に霧吹きすると、ヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)の徘徊活動が活発になりました。
移動しながら水滴を吸収しているのでしょう。

やがて2匹が容器壁面を徘徊中に遭遇しました。
思わせぶりに絡み合い始めたので交尾するかと期待して動画を撮り始めました。

2匹ともに生殖器の辺り(頭部の左側面)が隆起しているので、性的に興奮はしているようです。
その辺りで触れ合うものの、本格的な交尾は始まりません。
互いに巴陣形になりましたが、結局はすれ違って別れました。
なんとも艶めかしい触れ合いでした。

木村一貴「暴​走する愛 ― カタツムリの交​尾と恋の矢」によると、

性的興奮状態にあるカタツムリが判るのかと驚かれるかもしれないが、ここで用いられたヒダリマキマイマイはとても判りやすい。求愛されたり魅力的な個体と出会ったとき、性的に興奮すると目と目の間が瘤のように膨らむのである(これは頭瘤と呼ばれている)。また、生殖口も同様に膨らむことがある。 (『貝のストーリー: 「貝的生活」をめぐる7つの謎​解き』第1章p16より引用)

今回の映像で頭瘤の膨らみについては、素人の私にはよく分かりませんでした。
この同一ペアの交尾行動はこれまで何回か観察できましたが、出会う度にいつも交尾を始める訳ではありません。



【追記】
YouTubeのコメント欄にてMEGUMI ch KOTAさんより次のような解説をしてもらいました。
生殖器官が最高に出る時は、頭がもうひとつついてるくらい出てきます。
頭瘤は、フェロモンらしきものを発するようで、複数カタツムリがいる時に、これを出すと、寄ってくるものが現れて、気に入ったものと交尾したのを見たことがあります。
相手探しの為だと思います。この時は、ミスジマイマイでした。


2018/04/28

チャコウラナメクジとヒダリマキマイマイの競争 【10倍速映像】



2016年11月上旬・午前2:33〜2:36

ヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)とチャコウラナメクジAmbigolimax valentianus)を同じ容器で飼い続けています。


▼関連記事
チャコウラナメクジに襲われ泡を吹くヒダリマキマイマイ 【10倍速映像】

プラスチック壁面にカタツムリのすぐ横にナメクジが居たので、またナメクジがカタツムリを捕食するのかと半ば期待し、微速度撮影で記録してみました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。

しかし、後から来たチャコウラナメクジがヒダリマキマイマイを追い抜いて行っただけで、何事もありませんでした。
殻を持たず身軽なナメクジの方が蝸牛よりも速く移動できることがよく分かります。
つまり、ナメクジに追われたらカタツムリはとても逃げられません。

タンパク質性の餌として煮干しを与えるようにしたら、ナメクジがカタツムリを襲うことは無くなったようです。

▼関連記事
煮干しを食べるチャコウラナメクジ 【10倍速映像】



野島智司『カタツムリの謎: 日本になんと800種! コンクリートをかじって栄養補給!?』によると、

巻き貝が進化の過程で殻をなくすことを「ナメクジ化」と言います。ナメクジ化は陸貝が進化する過程でいろいろなグループで起こっています。そのため、ナメクジを一つのグループにまとめることはできません。  (p37より引用)

陸貝にとって、ナメクジ化は(中略)大きく3つのメリットが考えられます。
(1)狭い隙間に入り込める(2)体重が軽くなる(3)カルシウムを節約できる。
タコやイカも、海の中でナメクジ化した生物の一種と言えます。 (p37-38より引用)



2018/04/19

チャコウラナメクジの好物は?【10倍速映像】



2016年10月下旬・午後23:04〜23:11

これまで野外でナメクジがキノコを食べる様子を観察したことがありました。


▼関連記事
倒木でキノコを食す黄色いナメクジ【名前を教えて】
キノコを食べるナメクジ【名前を教えて】

てっきりナメクジはキノコが好きなのかと思い、飼育中のチャコウラナメクジAmbigolimax valentianus)にキノコを給餌してみました。
スーパーで買ってきた普通のシメジは気に入らなかったようで、口を付けないまま干からびたので捨てました。

(映像はここから。)

栽培されたキノコではなく山で採れたブナシメジ(ホンシメジ?)を給餌してみたら、どうでしょうか?
他には煮干しと、気紛れで乾パンも与えてみました。

10倍の早回し映像をご覧下さい。
結果は、煮干しを少し齧っただけでした。

▼関連記事 
煮干しを食べるチャコウラナメクジ 【10倍速映像】

キノコは今回も口にせず、方向転換して立ち去りました。
ナメクジが好きなキノコは特定の種類に限られるのかもしれません。(それを突き止めたいものです)

動画を撮り始めるとナメクジはいつもすぐに居なくなってしまい、私としては物足りないです。
長撮り中の眩しい照明が嫌なのかな?
赤外線の暗視カメラで行動を監視すれば、より自然な振る舞いをしてくれるでしょうか。


2018/04/10

煮干しを食べるチャコウラナメクジ 【10倍速映像】



2016年10月下旬・午前00:33〜00:56

飼育しているチャコウラナメクジAmbigolimax valentianus)がカタツムリを襲った事件をきっかけに、ナメクジの生育にはタンパク質が必要らしいと知りました。


▼関連記事
チャコウラナメクジに襲われ泡を吹くヒダリマキマイマイ 【10倍速映像】

タンパク質を補給するために試しに数匹の煮干しを小皿に入れて給餌してみます。
ダシを取るための食品ですが、若干の食塩が添加されていることが気になります。
ナメクジを含めたペットに与えるときは健康のために減塩加工された煮干しの方が良いのかも知れません。


すると早速、チャコウラナメクジは初めての餌を喜んで食べ始めました。
微速度撮影で記録してみたので、10倍速の早回し映像をご覧下さい。
しばらくすると満足したのか、チャコウラナメクジは小皿の上でUターンして立ち去りました。
死んだ魚の乾燥肉を食べただけでなく、煮干しの小骨に含まれるカルシウムを喜んで摂取していたのかもしれません。

タンパク質の餌を与えたので、これでチャコウラナメクジが同居しているヒダリマキマイマイを襲うことはなくなるでしょうか?

宇高寛子、田中寛『ナメクジ:おもしろ生態とかしこい防ぎ方』という本を読むと、ナメクジを飼育するための餌として次のように書かれていました。

容器の底には湿らせたペーパータオルを敷き、エサとしてニンジンとコオロギ用人工飼料(魚粉を固めたもの。金魚のエサに似ている)をナメクジと一緒にいれた。(中略)数日に一度、エサや容器は新しいものと交換した。(p35より引用)

一方、同じ容器で同居させているヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)も同じ小皿に登ってきたものの煮干しには口をつけずに引き返しました。
近くに置いてあったリンゴの皮に気を取られたのかな?
あるいは、近くに天敵の(以前自分を襲った)チャコウラナメクジが居ることに気づいて、慌てて逃げ出したのかもしれません。



2018/04/03

ナスとリンゴの果実を食べ排便するノハラナメクジ?【40倍速映像】



2016年9月下旬

ヒダリマキマイマイと同じ容器(大き目の水槽)でナメクジを何匹か飼っています。

台所の流しで徘徊するナメクジを見つける度に採集して、飼育容器に投入していたのです。(野菜と一緒に外から持ち込まれたナメクジ?)
餌として野菜屑を適当に入れてやると、この日はナス(茄子)のヘタが気に入った様子です。
40倍速の早回し映像をご覧下さい。

ナスの黒紫色で固い果皮には全く口を付けていません。
輪切りにした断面の白くて柔らかいスポンジ状の果肉にえぐれたような食痕が残りました。
この嗜好はヒダリマキマイマイと同じでした。

▼関連記事
ナスの実を食べるヒダリマキマイマイ 【10倍速映像】

黒い大触角を途中で引っ込めたのは、撮影用の照明が眩しいからですかね?
ナスに頭をつっこんでいる体勢のため、触角が傷つかないように引っ込めているだけかもしれません。

移動する前に、体の前方右側からオレンジ色の糞をニョロニョロと少し排泄しました。(@1:39)
糞の色は前に食べたニンジンの色素(カロチン)から来ているのでしょう。
橙色の糞がナスのへたに残りました。
ヒトのうんちは、ヘモグロビンの分解産物の色の影響が強く、食べた物の色にあまり左右されないような色(茶色系)になりますが、ナメクジが排泄するうんちは食べたエサと同じ色をしています。(p34より引用)


後半ナメクジはナスのヘタから離れ、隣に置いてあったリンゴの皮を摂食しました。
体を左右に動かしながら、皮の裏に薄く残った白い果実の部分をデザートとして食べているようです。

宇高寛子、田中寛『ナメクジ:おもしろ生態とかしこい防ぎ方』によれば、

ナメクジはゴミ食い(動植物の遺体食い)であり、生きた植物はそれほど好きではない(p83より引用)
もっと腐りかけの生ごみが好みなのかもしれませんが、飼育下では衛生面からご希望に応えられず誠に申し訳ないです。

さて、このナメクジの和名、学名が分かりません。
背中に甲羅が見えるのでコウラナメクジ科だと思うのですが、チャコウラナメクジとは違い、体の左右に黒い線が全くありません。
体全体が茶色で、素人目には特徴がありません。
体長を採寸するのを忘れました。
動画撮影中にコインでも並べて置くべきでしたね。
ヨーロッパからの外来種ノハラナメクジDeroceras reticulatum)でしょうか?
ナメクジの見分け方(簡易版)」サイトを参考にしたら、ノハラナメクジが候補に残りました。

体長は這っている時で5cm程度と小型。全体的に灰色~茶色で目立った模様は無い。
大触覚(原文ママ。「大触角」の誤植)が灰色~黒色。外来種。コウラナメクジ科。
体色が違い自信がないので、もし間違っていたら、ご指摘願います。
この検索表は「簡易版」と断っているように、国内で見られるナメクジを網羅しているとはとても思えません。

それともチャコウラナメクジ類の一種(Ambigolimax sp.)とすべきでしょうか?

日本にはチャコウラナメクジのほか、外見的によく似た複数種が侵入し、定着している。これらは生殖器の形で区別できる。(『カタツムリハンドブック』p64より引用)


※ 接写パートのみ動画編集時に自動色調補正を施しています。




↑【おまけの動画】
オリジナルの10倍速映像をブログ限定で公開しておきます。



2018/03/24

チャコウラナメクジに襲われ泡を吹くヒダリマキマイマイ 【10倍速映像】



2016年10月下旬・午後22:39〜23:23

夜、いつものように飼育容器内に霧吹きしようと蓋を開けたら、その蓋の裏にへばりついて居たヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)が大量の泡を吹いていました。
同居させているチャコウラナメクジAmbigolimax valentianus)がヒダリマキマイマイの殻に乗って攻撃しているようです。

2匹の軟体動物による緩慢な闘争・逃走シーンを微速度撮影で記録してみました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。
(もう少し早く気づいて撮り始めていれば…。)

泡を吹きながら逃げ回るヒダリマキマイマイをチャコウラナメクジが執拗に追い回しています。
野菜屑などの餌をきちんと与えているつもりでしたが、このナメクジはひどく飢えているのでしょうか?
カラスのモビング行動(擬攻撃)を連想しましたが、まさか縄張り争いではないでしょう。
カタツムリの分泌する粘液を舐めているだけかもしれません。
ヒダリマキマイマイが這った跡に残した粘液を頼りにチャコウラナメクジが追跡していることは確かです。(本来ナメクジは夜行性ですし、その眼は光の明暗を感じる程度で周囲のものの形をみることはできないらしく、視覚で追跡しているのではありません。)

ヒダリマキマイマイが嫌がって逃げているのは分かりますが、ナメクジがカタツムリの殻に乗っているのは果たして偶然でしょうか?
映像ではどう見ても獲物として繰り返し襲おうとしているようです。
ナメクジがカタツムリを襲うとは予想だにしなかったので、初めて見る光景に仰天しました。
宇高寛子、田中寛『ナメクジ:おもしろ生態とかしこい防ぎ方』という本を紐解いてみると、ナメクジが時に獰猛な肉食性になることを初めて知りました。

ナメクジは肉も食べるということがわかる。
 実は、多くのナメクジはタンパク質を食べなくては成長することができない。ナメクジにとって一番身近にあるタンパク質は、同じ仲間のナメクジなので、生きているナメクジを積極的に食べるわけではないようだが、死んだ(または弱っている)ナメクジを食べることはある。
 日本にいるナメクジは基本的に草食・雑食性であるが、海外には肉食性のナメクジもいて、彼らはミミズや他の陸貝をエサとしている。 (p27より引用)


また、侵入生物データベースのサイトにてチャコウラナメクジが「ハマキガ類の卵塊を捕食する」との記述がありました。


徘徊速度を比べると殻を持たない身軽なナメクジにカタツムリは負けていて逃げ切れないのかもしれません。
ヒダリマキマイマイはナメクジに正面から触れた瞬間にビクッと身を縮めました。
殻口から奥に侵入できる捕食者に対しては殻の中に軟体を引っ込んで籠城するだけでは身を守れません。

サザエとは違ってカタツムリは殻口を閉じる固い蓋を持たないからです。
このような緊急時にカタツムリが自衛のために激しく泡を吹くらしいのですが、実際に見るのは初めてでした。
この泡は苦い分泌物(毒?)が含まれているのだそうです。
容器の蓋の縁を乗り越えようとするついでに、ヒダリマキマイマイは殻を大きく振り回してナメクジを振り落とそうとしました。(@1:06〜1:15)
この動きはカタツムリの第二の自衛手段です。
最後にヒダリマキマイマイが殻の中に籠城すると(第三の自衛手段)、ナメクジはようやく諦めて立ち去りました。
このときヒダリマキマイマイは殻口を容器蓋のプラスチック面に伏せているため、ナメクジは攻撃できませんでした。

思い返してみると、以前にも同居しているヒダリマキマイマイの殻や軟体部にナメクジがへばりついていることがありました。
徘徊中に偶然出会っただけかと思って見過ごしていました。
実はナメクジが競争相手を密かに一匹ずつ殺そう(捕食しよう)としていたのか?と戦慄しました。
無知な私は横着してナメクジとカタツムリを同居させてしまいましたが、別々の容器で飼うべきでしょう。

逆に言えば、素人ならではの失敗が転じて興味深い発見(セレンディピティ)ができました。


その後、ヒダリマキマイマイとチャコウラナメクジの同居飼育を続けても捕食シーンを二度と観察できませんでした。(私が見逃しただけ?)
必死で防御・抵抗するヒダリマキマイマイを手強い相手だとチャコウラナメクジが記憶して、襲わなくなったのでしょうか。
襲われた蝸牛が泡を出し始める様子をいつかじっくり見てみたいものです。
唾液で泡を立てるのでしょうか?
呼吸孔からブクブクと息を吹き込んで泡立てるのかな?
泡立ちやすい界面活性剤を含んだ特殊な粘液を急激に分泌するのですかね?
今回の映像を見直すと、ナメクジの執拗な追跡をやり過ごし殻の中に籠城したヒダリマキマイマイが泡を出したのは左側からでした。(@3:20〜3:28)

なぜ粘液を泡状にするのか?という理由を私なりに考えてみると、SF映画などでお馴染みの「バリアを張る」作戦なのでしょう。
つまり、生身の体(軟体部)に到達される手前に忌避剤を含む軽い膜を素早く張って防衛線とするのだと思います。
もし相手がアリのように小さな虫なら、何重ものバリアを突破する必要があり、かなり有効そうです。


2018/03/15

ナスの実を食べるヒダリマキマイマイ 【10倍速映像】



2016年10月上旬・午前5:46〜6:15

ヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)とチャコウラナメクジAmbigolimax valentianus)を同じ容器で飼育中です。
餌として入れておいた輪切りのナス(茄子)の果実をヒダリマキマイマイが早朝から食べていました。
摂食シーンを微速度撮影で記録したので、10倍速の早回し映像でご覧ください。
容器内にはナスのへたとニンジンの輪切り、リンゴを剥いた皮も入れて置いたのですが、ヒダリマキマイマイが選んだのはナスの輪切りでした。
満足すると蝸牛は餌から這って立ち去りました。
ナスの黒紫色で固い果皮は全く食べず、白くて柔らかいスポンジ状の果肉にえぐれたような食痕が残りました。
このことから、もし野生のヒダリマキマイマイがナス畑に侵入したとしても、実ったナスの果実を果皮ごと食害するのは、考えにくいと思います。

それと入れ替わるように、物陰に隠れていたチャコウラナメクジが登場。
ナメクジもナスの実などを口にしたのかどうか気になりますが、映像でははっきりしませんでした。(素人目には食べていない気がします。)



【追記】
台所でナメクジを見つける度に採集して、ヒダリマキマイマイと同じ飼育容器に投入していました。
窓の外から台所に侵入したのか、それとも畑で収穫した野菜と一緒に持ち込まれたのか、どちらかでしょう。
以下の写真は2017年7月下旬の撮影。

チャコウラナメクジ@濡れた食器洗いスポンジ
チャコウラナメクジ@濡れ布巾


2018/02/22

恋矢を自ら引き抜くヒダリマキマイマイ



2016年10月上旬

夜、いつものように飼育容器内に霧吹きしていると、一匹のヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)が恋矢れんしを排出していることに気づきました。
最近もう一匹と交尾したはずですが、私は見逃したようです。

恋矢(交尾矢love dart)はカルシウムを含み,交尾前に恋矢嚢が裏返しとなることによって射出され,相手の個体の皮膚に機械的刺激を与え,交尾が終ると捨てられる.刀身状のものが多いが,紡錘形・剣菱形・三角形・山形・円形など種類によってさまざまで,分類上の重要な標徴となる. (『岩波生物学辞典第4版』より引用)


透明なプラスチック容器越しに腹面から接写すると、水滴で濡れた壁面を舐める歯舌の動きよく分かります。
体の左側面から白く長い恋矢が伸びています。
魚の小骨のように湾曲し、一端は鋭く尖っています。
交尾の際にパートナーから刺された恋矢を傷口から排出しているのでしょう。
体内にしばらく残された恋矢は痛むのでしょうか?
やがて水滴を舐めるついでに、体を左によじって恋矢にキスを始め、体に刺さっていた恋矢を口で引き抜きました。
しばらく抜けた恋矢の根元を舐めています。
もしかすると、自分の体液(血液?)やパートナー由来の粘液が恋矢に付着していて、それを栄養源として摂取しているのかな?と想像しました。

後半は微速度撮影に切り替えて記録したので、10倍速の早回し映像でご覧ください(@4:01〜)。
蛇行しながら飼育容器の壁面を登って行きます。
波打つ腹足の蠕動がよく分かります。
ヒダリマキマイマイが這った後は、透明な粘液で泡立っています。



恋矢の排出シーンを観察したのはこれが初めてです。
今回の恋矢について改めて考えると、おかしなことに気づきました。
もし体内に刺さった恋矢を引き抜いたのなら、尖った先が内側(傷口)を向いているはずです。
しかし映像を見直すと、恋矢の尖った先が外側を向いています。
これは何を意味しているのでしょう?
交尾に使われなかった自分の恋矢を体内から排出(排泄)したのでしょうか?

そんな必要性があるのか疑問です。
次回の交尾に使えば良いのでは?
あるいは、交尾で相手を刺したのに恋矢が折れなくて、排出に手間取ったのかもしれません。(恋矢は交尾の度に使い捨て?)
交尾相手から刺された恋矢が体を完全に貫いて折れ、そのまま排出したのですかね?
それとも、捨てられた古い恋矢が容器の壁面に付着していて、徘徊中の個体がそれをゆっくり乗り越えるシーンをたまたま見ただけかな?
どのシナリオが正しいのか知るためには、交尾直後から連続録画でひたすら愚直に監視するしかなさそうです。


飼育容器内に脱落した恋矢を見つける度に記念として採集してきたのですが、なぜか今回の恋矢はどこに紛れてしまったのか、採集した記憶がありません…。


▼関連記事 (背側からの観察例)
交尾後に恋矢を排出するヒダリマキマイマイ

2018/02/19

チャイロヒダリマキマイマイの起き上がり運動



クロマルハナバチの巣:定点観察#13
▼前回の記事
クロマルハナバチの古巣に侵入を繰り返し獲物を探すクモバチ♀

2016年8月下旬

丁度1ヶ月ぶりにクロマルハナバチBombus ignitus)営巣地の様子を見に行くと、一度は草刈りされていた側溝の雑草が再び生い茂り、巣穴を覆い隠していました。
山腹に車道を通した法面をコンクリートで補強していて、その壁面に開けられた排水口の一つに営巣していたのです。
コロニーの活動は終了(逃去?)していて、出入りする蜂の姿はありません。

巣口の奥を覗き込むと、珍客が侵入していました。
穴に詰まっている苔混じりの土塊と一緒に取り出してみると、なんとチャイロヒダリマキマイマイEuhadra quaesita montium)でした。

真夏に乾燥したコンクリート壁面を徘徊していて、湿り気が多少ある穴の中に避難していたのでしょう。
あるいは産卵場所を探索していたのかもしれません。
採集シーンをハンディカムで撮っていたのに、肝心の動画ファイルが失われていました。
ハンディカム本体の不調なのかSDカードの異常なのか不明ですが、この日にハンディカムで撮った映像がすべて失われました…。



チャイロヒダリマキマイマイ@採集直後@クロマルハナバチ古巣
チャイロヒダリマキマイマイ+scale
チャイロヒダリマキマイマイ裏面+scale

焦げ茶色の殻の個体でした。(※追記参照)
殻を逆さまにして路上に置いてしばらくすると、警戒を解いて起き上がり、徘徊を始めます。
軟体の左側面に見える黒くて細長い物は、チャイロヒダリマキマイマイが排泄した糞だと思うのですが、飼育下での観察と逆側なので自信がありません。
力強く起き上がる動きが面白くて、初めは微速度撮影で記録しました。
10倍速の早回し映像でご覧ください。
意外に早く起き上がることが分かったので、リアルタイムのHD動画に切り替えてから、チャイロヒダリマキマイマイを再びひっくり返してみました。
また、採寸代わりに一円玉(直径2cm)を並べて置きました。

持ち帰って飼育しようか迷ったものの、元の穴に戻して帰りました。
今思うと、カタツムリがクロマルハナバチの古巣を食害する可能性もあるので、別の穴に入れるべきだったかもしれません。

クロマルハナバチの巣穴を発掘調査するための道具をネット通販で注文しているのですけど、最安値の店を選んだばかりに、商品がなかなか届きません。
古巣の採集は次回に持ち越します。
クロマルハナバチの古巣にカビが生えたり虫などに食害されるのではないかと心配で、気が気でありません。
しかし、巣口の奥は土砂がびっしり詰まっていて、古巣は埋もれているようなので、半ば諦めています。

つづく→#14



【追記】
私が当初この個体をヒダリマキマイマイと記述していたところ、YouTubeのコメント欄にて、MEGUMI ch KOTAさんからチャイロヒダリマキマイマイではないか?という御指摘を頂きました。
これだけ、濃い個体ならば、チャイロヒダリマキマイマイだと思います。ヒダリマキマイマイとチャイロヒダリマキマイマイ、両方飼育したことありますが…チャイロヒダリマキマイマイの方が、より標高が高い所に生息しているようです。チャイロは、静岡県、山梨県、神奈川県では、私自身でも確認できました。この殻の具合も、軟体部分の模様も、山梨県で採集されて、我が家にやって来て、通算7回も産卵したチャイロヒダリマキマイマイにそっくりです。
チャイロヒダリマキマイマイとは、
ヒダリマキマイマイの亜種。殻幅50mm前後。殻の色が暗褐色で火炎彩をもつ。関東地方と中部地方の山地に分布する。(wikipediaより引用)
私も平地(標高266m地点)で交尾していたヒダリマキマイマイを採集・飼育していて、確かにそれよりも今回の個体は殻の色が濃いなと思いました。
素人ながら私が気になるのは、チャイロヒダリマキマイマイの生息地が「関東地方と中部地方の山地に分布する」と限定されていることです。
一方、今回の撮影地は山形県南部(内陸部)の低山で、標高645m地点です。
歩みの鈍いカタツムリの国内分布の定説を覆すのはとても恐れ多いのですけど、チャイロヒダリマキマイマイで間違いないということなので、訂正しておきます。
実は東北地方のカタツムリはあまりよく調べられていないのかもしれません。

今回の個体は殻口(最終層の螺管)が広がっているので、ムツヒダリマキマイマイ類ではありません。

チャイロヒダリマキマイマイとヒダリマキマイマイは亜種の関係ですから交雑可能のはずです。
試しに同居させて交尾行動を観察してみれば良かったと今になってちょっぴり後悔…。
当時は他にもあれこれと色んなことに手を広げすぎて、一杯いっぱいだったので、採集せずに帰りました。


【追記2】
野島智司『カタツムリの謎:日本になんと800種! コンクリートをかじって栄養補給!?』という本を読むと、山地性のカタツムリが黒っぽいのは一般的な傾向のようで、保護色で説明されています。
野鳥が繁殖期になると卵殻の形成に必要なカルシウムを補給するためにカタツムリをよく殻ごと捕食するという話に続いて、次のように書かれていました。

 カタツムリの殻は、海にすむ巻き貝の殻と比べて茶色っぽい地味な模様をしています。これは保護色といって、周囲の色に紛れて発見されにくいためです。実際、暗い山奥にいるカタツムリの殻は黒っぽく、明るい平地にいるカタツムリの殻は白っぽい傾向があります。
明るいところでは白っぽいほうが、空からエサを探す鳥に見つかりにくいと考えられます。同様に、高い木の上で生息する種類も、殻が白っぽくなる傾向があります。(p72-73より引用)


チャイロヒダリマキマイマイを採集後のクロマルハナバチ古巣(中には土砂が詰まっている)
その全景(側溝から生い茂る雑草をかき分けて巣口を露出している)




2016年9月上旬

クロマルハナバチの古巣の発掘

別の記事にするまでもないので、残念な結果をここに報告しておきます。(動画も無し)
8日ぶりに現場を再訪すると、側溝の雑草がより一層生い茂り、巣穴を覆い隠していました。
気になるこの植物はミズヒキですかね?
花が咲かないと私には名前が分かりません。
葉の中央部が「斑入り」のように色が変わっています。



ファイバースコープがあれば穴に差し込んで、活動中のコロニーの様子を直接観察できたかもしれません。
予算がない私は仕方なく、古巣を発掘するために長くて頑丈なピンセット(27cm)を購入しました。
普通のスコップ(移植ゴテ)では直径7cmの狭い排水口に差し込めないのです。



しかしコロニーが逃去(全滅? 解散?)してから発掘に着手するのがあまりにも遅過ぎました。
台風や大雨のせいで、巣穴(法面補強するコンクリート壁の排水口)には小石混じりの土砂がみっちり詰まっていました。
苺パック容器に一杯分の土を掘り出しても、マルハナバチの巣の痕跡は皆無でした。
古巣の育房の破片ぐらいは見つかるかと期待していたのですが、全くの空振りでした。(掘る穴を間違えたかと思ったぐらいです)
ロングピンセットでも届かないもっと奥に営巣していたのでしょうか?
奥は硬い岩(コンクリートかも?)で塞がれているような手応えで、突き当たりになっていました。

生物の痕跡としては唯一、キセルガイの稚貝を一つ発見しました。
(落胆のあまり、泥まみれになったゴム手袋を外すのも億劫で、写真も撮っていません。)
ちなみに、巣口のすぐ下のコンクリート壁面にはキセルガイの成貝が3匹居ました。


▼関連記事
キセルガイの徘徊と交尾行動?【10倍速映像】
側溝の縁を移動するキセルガイ【10倍速映像】

クロマルハナバチの古巣はカタツムリ(チャイロヒダリマキマイマイ)やキセルガイなどの陸貝、または土壌生物などに食害されたり、カビが生えてあっという間に分解されてしまった可能性も考えられます。
陸貝は排水口にたまたま迷い込んだだけかもしれませんが、分解者である蝸牛やキセルガイが栄養価の高いマルハナバチの古巣に誘引されたのだとすれば、とても面白いなと思いました。

シリーズ完。





2016/12/27

側溝の縁を移動するキセルガイ【10倍速映像】



2016年9月上旬・午後15:04〜15:24
▼前回の記事
キセルガイの徘徊と交尾行動?【10倍速映像】

山中のコンクリート壁面で3匹見つけたキセルガイの一種のうち、単独行動している個体に次は注目しました。
コンクリート壁を覆っていた雑草を私が取り払ったので、キセルガイは直射日光と乾燥を嫌って一目散に壁を下りたのです。
苔むした側溝の縁に達すると、今度は右へ右へと移動して行きます。
重そうな殻をぐいぐい引きずって歩きます。
後半は微速度撮影に切り替えたので、10倍速の早回し映像をご覧下さい(@1:09〜)。
途中から、大きさの比較として一円玉(直径20mm)を横に並べています。
最後に静止した場所は近くに苔が生えていて、湿気や餌があるのでしょう。
長距離移動で疲れてしまったのかな?

キセルガイの飼育にも興味があるのですけど、この時期は他にも色々と手を広げ過ぎてしまい、余力がなくて採集を断念しました。

実はこの日、コンクリート壁面の穴に営巣したクロマルハナバチの巣を発掘しました。
排水口から掘り出した土砂に混じってヒダリマキマイマイ(成貝)およびキセルガイの幼体(稚貝)を一匹ずつ見つけました。


【追記】 私の記憶違いでした。ヒダリマキマイマイは別日に(8日前)クロマルハナバチが営巣していた穴の中から発見。
排水口にたまたま迷い込んだだけかもしれませんが、分解者である蝸牛やキセルガイが栄養価の高いマルハナバチの古巣に誘引されたのだとすれば面白いなと思いました。



2016/12/26

キセルガイの徘徊と交尾行動?【10倍速映像】



2016年9月上旬・午後14:40〜15:13

峠道の法面を補強するコンクリートの土留でマルハナバチの営巣地を定点観察するついでにキセルガイの一種を見つけました。
道端の側溝に繁茂する下草をかき分けたら、3匹のキセルガイが壁面に付着していたのです。
コンクリートの石灰分を好むのでしょうか?
現場の標高は645mで、コンクリート壁面は北東を向いています。
直射日光と乾燥を嫌ったキセルガイが下に向かってゆっくり移動を始めたので、微速度撮影してみました。
10倍速の早回し映像をご覧下さい。
愛機FZ300のジオラマモードで微速度撮影すると、チルトシフト効果でミニチュアの玩具のようなコミカルな動きになります。

3匹のうち、行動を共にしている2匹に注目しました。
個体bはaの細長い殻にしがみついていました。
aはbを背負ったまま左斜め下へ移動して行きます。
2匹分の重力がかかるために、cよりも移動速度が速いです。
abが這った軌跡には粘液で濡れた線が斜めに残りました。

後半は通常のHD動画に切り替えてリアルタイムの動きを記録してみます。(@2:07〜)
実際の動きも結構速いことがお分かり頂けるでしょう。
左斜め下に向かってひたすら移動を続けています。
この2匹は交尾中なのですかね?
キセルガイを観察するのがなにしろ初めてなので、その生態についてまるで疎いのです。
キセルガイの種類も見分けられませんが、2匹ともほぼ同サイズの成貝でした。
殻は左巻きです。
キセルガイもカタツムリと同様に雌雄同体らしいのですが、その交尾はヒダリマキマイマイ(蝸牛)の交尾と似ているのでしょうか? (※追記参照)
交尾中のカタツムリで見られるはずの恋矢やペニスは今回見ていません。(見逃した?)
微速度撮影よりも、キセルガイの接触部分を接写すべきでした。

互いに殻同士が引っかかって追い越せないだけのような気もしてきました。
おんぶしているように見えるときも、ヒッチハイクのように只乗りしているだけかもしれません。
2匹が同じ方向に進んでいるので、いつまで経っても離れません。
下の個体が壁面を離れ上の個体の殻を這い始めました。
2匹分の体重を支えつつ力強く移動。

最後は側溝の縁に達して落ち着きました。
適度な湿り気のある場所を好むのでしょう。

つづく→3匹目の動向

【参考ブログ】

キセルガイ
・みんな、あいしてる:キセルガイさんたちの結婚?

高尾山国有林巡視日誌(47)
・北のフィールドノート:エゾコギセル (キセルガイ)の交尾
・かたつむりが好き:今日の煙管貝



※【追記】
野島智司『カタツムリの謎: 日本になんと800種! コンクリートをかじって栄養補給!?』によると、
陸にすむキセルガイの仲間は、むしろ左巻きが多いという特徴があります。細長い殻をもつキセルガイの交尾は、平べったい殻をしたカタツムリの交尾とは異なり、お互いに向き合わず、同じ向きで交尾します。そのため、巻き方が異なっても交尾をするための構造上の問題が生じず、左巻きのものが増えていくという進化が比較的起こりやすいと考えられています。 (p57より引用)


雑草に覆われた側溝を見下ろす。奥がコンクリートの壁
除草すると壁面に3匹のキセルガイが現れた。
一円玉(直径20mm)を並べる

2016/10/05

ヒダリマキマイマイの脱糞【40倍速映像】



2016年7月上旬

夜、いつものように飼育容器内に霧吹きしようとしたら、一匹のヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)が壁面で脱糞していました。
ニンジンを食べた後なので、赤っぽい糞です。
腹面からも見て排泄中と確認しました。
体の右側面から排便しています。
40倍速の早回し映像をご覧下さい。



↑【おまけの動画】
微速度撮影したオリジナルの10倍速映像をブログ限定で公開します。




【追記】
野島智司『カタツムリの謎』という本によると、
ヒトは、胆のうでつくられる胆汁の色が混じって茶色のようなフンをします。しかし、カタツムリは胆のうを持ちません。また、ヒトと違ってカタツムリは食べ物に含まれる色素を分解することができません。そのため、カタツムリのフンは食べたものの色がそのまま反映されます。 (p128-129より引用)


2016/09/28

ヒダリマキマイマイ産卵直後の卵塊



2016年6月下旬


▼前回の記事
産卵のため苔に潜るヒダリマキマイマイ【60倍速映像】

湿らせたコケを敷き詰めた深さ7cmの苺パック内に潜り込んだヒダリマキマイマイEuhadra quaesita)が、気づいたら苔の外に出ていました。
どうやら産卵を終えたようです。
容器の底に白くて丸い粒々が透明の苺パック越しに見えました。
慎重にコケを掘り起こし、卵塊を少しほぐして数えてみると卵は10個でした。
粘液で互いに軽くくっついています。
容器の下に1mm方眼紙を敷いて採寸の代わりとします。


【参考】
ヒダリマキマイマイを扱った本ではありませんが、『講談社カラーサイエンス6:カタツムリ』p32-35によれば、

土のなかに産卵しています。頭の近くにある生殖孔から1つぶずつ卵をうみます。卵の大きさは、2mmくらいです。1つぶの卵をうむのに、10分くらいかかります。
カタツムリは、卵を40〜60つぶくらいうみます。産卵にかかる時間は、10時間くらいです。



【追記】
佐藤信治『庭にきた虫―いのちのドラマを親子でみる』によると、
産卵孔は貝の巻き方向の内側にあるので、ヒダリマキマイマイは向かって右側、ミスジマイマイは左側から卵がでてくる。 (p92より引用)



苺パックの底に1mm方眼紙を敷いた。

その後、産卵床をカタツムリの飼育容器とは別にして毎日コケに霧吹きして見守りました。
ところが、なかなか孵化してくれません。
冷房の入らない暑い部屋で飼わないといけない事情があり、もしかして暑さで卵が死んでしまったのかと諦めてしまいました。
しかし放置された卵塊を忘れた頃に(秋に)見てみると、いつの間にか幾つかの卵が割れていました。
どうやら孵化を見逃してしまったようです。


割れずに残ったのは未受精卵?

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