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2024/03/19

朽ちた切株の根元にある巣穴に出入りする野ネズミ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年7月上旬

スギ防風林にあるニホンアナグマMeles anakuma)専用の溜め糞場stmpを自動センサーカメラで監視していると、毎晩のように野ネズミ(ノネズミ)がよく写ります。 
野ネズミについて、ささやかながら新しい発見(進展)がありました。

シーン0:6/29・午後14:46・晴れ(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の状況です。 
トレイルカメラの設置アングルを失敗してしまい、肝心の溜め糞場stmpが画角の外にはみ出してしまいました。 
おかげで、普段なら監視外の林床エリアでの野ネズミの活動を知ることが出来ました。
朽ち果てた切株が画面の左下にあり、アナグマの溜め糞は更にその左下です。 
切株の右下には、貯食したオニグルミ堅果をアカネズミが食べた後の殻が大量に捨ててあります。(食痕つき) 


シーン1:7/1・午後20:38(@0:04〜) 
画面中央付近の下草が生い茂る林床を野ネズミが右へ探し歩いています。 
途中でなぜかスギの落ち葉をピョンと跳び越えました。 


シーン2:7/1・午後23:38(@0:29〜) 
林床に掘られた溝(画面の上下方向に掘られている古い用水路跡)を野ネズミが右から横切り、切株へと向かいました。 
切株の根元にどうやら巣穴があるようで、その中に入りました。 
規模は小さいながらも、いちおう樹洞と呼べるかも知れません。
昼夜の様子を切り替えて、巣穴の位置をお見せします。
その巣穴(赤丸○)から野ネズミがすぐにまたピョン!と外に出て来ました。 
その場にしばらく佇んでいますが、カメラに背を向けているため何をしているのかよく分かりません。 
おそらく毛繕いしているようです。 
再び巣穴に戻りました。 
この地点で野ネズミがトレイルカメラに写る頻度があまりにも多いので、近くに巣穴があるはずだという私の予想が当たりました。 
実は野ネズミの巣穴は一つだけでなく、すぐ近くのスギ林床に少なくとももう一つあることが後に判明します。(映像公開予定) 


シーン3:7/2・午前2:00(@1:32〜) 
画面の右上で林床をウロチョロと探餌徘徊していた野ネズミが、右上に立ち去りました。 


シーン4:7/4・午後21:53(@2:05〜) 
奥に見える茂みの下をうろついてから、左へ消えました。


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


つづく→

2024/03/17

ニホンアナグマの幼獣4頭を溜め糞場に連れて来て排便およびスクワットマーキングした母親♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年7月上旬

スギ防風林にあるニホンアナグマMeles anakuma) 専用の溜め糞場stmpを自動センサーカメラで見張っています。


シーン1:6/29・午後14:46(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の様子です。 
トレイルカメラを設置するアングルに少し失敗してしまいました。 
画面の左下に朽ち果てた切株が見えます。 
その少し下にアナグマの溜め糞場stmpがあるのですけど、画角内にしっかり写っていません。 


シーン2:7/4・午後20:11(@0:06〜) 
アナグマの母親♀が溜め糞場stmpで排便していました。
その周囲を3頭の幼獣がウロチョロしています。 

用を足し終えた母親♀が林床に掘られた溝(古い用水路の跡?)に沿って奥へ立ち去る途中で立ち止まり、尻を地面の落ち葉に擦り付けました。(@0:21〜) 
スクワットマーキングと呼ばれる匂い付けの行動です。 
更に奥へ進んでから左折し、茂みの中に姿を消しました。 
しばらくすると、4頭目の最後の幼獣個体が慌てて家族群を追いかけて行きます。 
はぐれかけながらも、迷子にならず良かったです。 
下草の匂いを嗅ぎ回り、道草を食っています。 
発育の遅い個体という訳でも無さそうで、独立心・冒険心の強い性格なのかも知れません。 

アナグマの母親♀が4頭の幼獣を引率して縄張りを連れ歩き、溜め糞場stmpの位置を教えたことになります。 
今回、幼獣はどの個体も排便しませんでした。 
幼獣の成長はめざましく、母親について一緒に歩き、夜の森を探餌徘徊できるほど体力がついていました。
母親♀は幼獣を引き連れて夜の森を歩く際に、幼獣を誘導する鳴き声(ジェジェジェビーム♪)を発していませんでした。
(音量を上げても聞き取れず) 
ヘルパー♂は同伴していませんでした。(育児には参加しないのでしょう。)
アナグマの家族がこの溜め糞場stmpに来る頻度は低いので、縄張り内のどこか別な場所にも溜め糞場があることが予想されます。 

アナグマの母子の姿が営巣地(セット)から忽然と消えたので、天敵に捕食されて全滅したのではないか?と内心では不安でした。 
母子ともに無事が確かめられて一安心。 
幼獣が生まれた巣穴を離れてどこか別の巣穴へ母子が転出したということが、これではっきりしました。 


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


つづく→

2024/03/16

ニホンアナグマ家族が転出した後の巣穴に不法侵入するハクビシン【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年7月上旬・午前4:00頃・気温19℃・日の出時刻は午前4:19。 

ニホンアナグマMeles anakuma)の母子が転出した後の巣穴をトレイルカメラで監視し続けていると、夜明け前にハクビシン(白鼻芯、白鼻心;Paguma larvata)がやって来ました。 
アナグマ営巣地(セット)のある平地の二次林でハクビシンを見かけるのは初めてです。 
手前の巣穴Lへ慎重に忍び寄り、画角の外に姿を消しました。
カメラの設置アングルがいまいちだったせいで、巣穴Lの中までしっかり入ったかどうか、見届けられませんでした。 
巣穴Lを内見しただけかもしれませんが、出巣Lする様子は撮れていません。 

てっきりホンドタヌキNyctereutes viverrinus)がアナグマの空き巣を乗っ取り、ねぐらとして使っているのかと思ったのですが、事態はより複雑で、一筋縄ではいきません。
アナグマのヘルパー♂がたまに戻ってきたり、ホンドタヌキ(尻尾に黒点▼) が塒として使ったり、通りすがりのハクビシンが侵入を試みたりと流動的で、空き巣の争奪戦になっているようです。

アリストテレスは「自然は真空を嫌う」という科学史では有名な言葉を残しています。 
※ 容器にポンプをつないで陰圧にすると、普通の容器は体気圧によってぺしゃんこに押し潰されてしまいます。今となってはアリストテレスの素朴な自然観は否定(修正)されています。強力な真空ポンプと頑丈な密閉容器を発明したことで(技術革新)、後世の人類は真空状態を作り出し、真空の宇宙空間にも進出しました。

この名言は、物理学的な真空現象についてだけでなく、生態学的な暗喩(メタファー)にもなっています。 
つまり、自然界の生き物はニッチの空白(真空地帯)を嫌って、周囲からどんどん侵入して来るのです。 
アナグマ家族が健在だった頃は、営巣地の周辺で排尿マーキングをしたり、臭腺・肛門腺によるスクワットマーキングしたりして、縄張り宣言していました。
嗅覚が退化している我々ヒトには全く分かりませんが、匂い付けで縄張りに結界を張っているのでしょう。
それでも営巣地に侵入してくる不届き者に対しては、アナグマ♀が吠えながら突進して追い払っていました(縄張り防衛の実力行使)。
充分に育った幼獣を引き連れてアナグマ一家がよその巣穴へ急に転出すると、それまで住んでいた巣穴の付近からアナグマの匂いが急速に薄れてしまいます。
その結果、新たな侵入者を招くことになるのでしょう。
自力では巣穴を掘れないのに巣穴で暮らしたがる哺乳類は多く、アナグマが掘った空き巣は引く手あまたの優良物件となっています。

つづく→


【アフィリエイト】
・シリーズ鳥獣害を考える 6『なぜハクビシン・アライグマは急にふえたの?

2024/03/15

ニホンアナグマの溜め糞場で野ネズミが食べている物とは?【トレイルカメラ:暗視映像】

 


2023年6月下旬・午前2:40頃 

平地のスギ防風林にあるニホンアナグマMeles anakuma)の溜め糞場stmpで深夜に野ネズミ(ノネズミ)が何かを食べていました。 
残念ながら食べているメニューを映像から見極められませんでしたが、3つの可能性が考えられます。 
さすがにアナグマの糞(軟便)そのものは食べないはずです。 

(1)糞塊に蠢く糞虫やウジ虫など食糞性の昆虫類(分解者)。 
栄養価も高く、数としては圧倒的に多いはずです。 

(2)溜め糞の糞便臭に誘引されて飛来する夜行性の蛾。 
この動画の最後でも夜蛾が飛来しました。 
直後に野ネズミが夜蛾に襲いかかったかもしれないのに、狩りの瞬間を撮り損ねてしまって残念無念。 

(3)溜め糞に含まれる未消化の種子。 
アナグマの主食はミミズと言われていますが、実際は雑食らしいです。 
前日の昼間に撮った溜め糞stmpの写真に未消化の種子と思われる小さな粒々がしっかり写っていました。 
下に再掲します。 
いつか糞の内容物をしっかり調べれば、アナグマによる種子散布の実態も分かってくるはずです。(なかなか忙しくて余力がありません)




【アフィリエイト】
・『おもしろいネズミの世界 : 知れば知るほどムチュウになる
 
溜め糞stmpの左の表面に未消化の種子

2024/03/14

ニホンアナグマの巣穴を乗っ取ったホンドタヌキを個体識別できた!【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月下旬〜7月上旬

ニホンアナグマMeles anakuma)の母子が転出した後の旧営巣地(セット)にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が繰り返し出没するシーンをまとめました。 
アナグマの不在に乗じてタヌキが空き巣を乗っ取ったのかどうか、判断がつきかねていましたが、遂に結論が出ました。 
同一個体のタヌキが巣穴に住み着いて繰り返し出入りしています。


シーン0:6/29・午後13:29・気温28℃(@0:00〜) 
明るい昼間にたまたま撮れた現場の様子です。 


シーン1:6/29・午後13:34・(@0:04〜) 
別アングルでも広角でトレイルカメラを設置しています。 


シーン2:6/29・午後18:28・気温24℃(@0:07〜)日の入り時刻は午後19:09。 
日没前の夕方に現れたタヌキが巣口Lの縁を忍び足で左へ通り過ぎました。 
そのままセットをぐるっと回って、左手前に戻ってきました。 
巣口Rに近寄り匂いを嗅いだものの、中には入りませんでした。 
鼻面を上げて風の匂いを嗅ぎ、左下に立ち去りました。 


シーン3:6/29・午後18:28・気温25℃(@1:00〜)
別アングルの監視映像でリプレイ。 
画面の右端を通って奥の巣口Rへ向かいます。 
巣口Rの匂いを嗅いだだけで、右に立ち去りました。 


シーン4:6/30・午前3:14・気温20℃(@1:31〜) 
日付が変わった深夜未明にタヌキが再び林縁を左から登場。 
顔つきが随分ほっそりした個体です。 
(水浴した直後なのか、見慣れない新参者なのか、不明です。) 
巣口LRの間を慎重に右へ通り抜けました。 

余談ですが、画面の手前で造網性のクモ(種名不詳の蜘蛛)が水平円網の横糸を張っていました。 
巣口Lの周囲に自生するマルバゴマキ灌木の枝を支柱としています。 
アナグマの巣穴付近を飛び回るハエやアブ、ヤブ蚊などを網で捕らえて捕食するのでしょう。


シーン5:7/1・午前8:57・気温22℃(@2:03〜) 
午前中にタヌキが登場。 
晴れてはいるものの、レンズが一部曇っているので、雨上がりなのかもしれません。 
(とにかく湿度が高そうです。) 
巣口LRの中間地点で身震いし、濡れそぼった毛皮の水気を切りました。 
その場に座って毛繕いを始めました。 
(体の痒い部位を甘噛みしている?) 

この個体は、後ろ姿を見た時に白っぽい毛が生え揃う尻尾の中央部やや右寄りに小さな黒斑▼があるのが特徴です。 
赤外線の暗視映像でも認められ、個体識別に使えそうです。 
タヌキの尻尾の模様に注目する個体識別法は、野紫木洋『オコジョの不思議』という名著を最近読んで、たまたま知りました。(p74の挿絵) 
タヌキは尻尾の模様だけでもバリエーションがあるらしく、これなら私も個体識別ができそうです。 
いつも後ろ姿の尻尾を見せてくれるとは限らないので、正面または横から見た時の特徴も必死で見つけ出す必要があります。
性別も今のところは不明です。
過去の映像も遡って見直すと、この個体が登場していたかも知れません。 

朝帰りしたタヌキが、そのまま慎重に奥の巣穴Rに潜り込みました。 
(その後、出巣Rしたシーンが撮れていません。) 
今はこのタヌキが巣穴Rにちゃっかり住み着いているようです。 


シーン6:7/2・午前4:20・気温18℃(@2:47〜)日の出時刻は午前4:17。 
翌日の日の出直後に、例のタヌキ(尾に黒点▼)の後ろ姿が写りました。 
出巣Rした直後なのかも知れません。 
奥の巣口Rにゆっくり近づき、匂いを嗅いだものの中には入らずに毛繕いを始めました。 


シーン6:7/2・午前4:21・(@3:48〜) 
次にトレイルカメラが起動したときには、広場を経由して手前の巣口Lに来ていました。 
アクセストレンチを辿ってゆっくり入巣L。 
しばらくすると、巣穴Lから外に出てきて、身震いしました。 
ゆっくり出巣Lしたので、アナグマのヘルパー♂に中から追い払われたようには見えません。 
やはりアナグマはヘルパー♂も不在で、タヌキがこの営巣地(セット)を完全に乗っ取ったようです。 
このタヌキは巣穴をねぐらとして使っているようです。
アナグマのヘルパー♂は巣穴を防衛しないで、あっさりタヌキに明け渡したようです。 
ヘルパー♂も母子について行って新しい巣穴に転出したのかもしれません。
アナグマ♀が子育てをする立派な巣穴(セット)は代々受け継いで拡張工事を繰り返すと本で読んでいたのですが、そんな価値のある不動産をあっさり放棄したのは意外です。
翌年の繁殖期までにタヌキから奪い返すつもりなのかな?
実はアナグマのヘルパー♂とタヌキ(尾に黒点▼)が同じ巣穴に仲良く同居しているという可能性も考えられます。(「同じ穴のむじな」仮説)

巣穴Lの中は水浸しで住めない状態なのかもしれない…?と勝手に想像しているのですけど、定かではありません。 
タヌキは右上へ立ち去ったかと思いきや、すぐに戻ってきました。 
奥の巣口Rで身震いしてから入巣R。 


シーン7:7/5・午後15:40・気温24℃(@4:31〜) 
3日後の午後に例の個体(尾に黒点▼)が登場。 
鬱蒼とした二次林の林床は真っ昼間でもやや薄暗いです。 
自然光下で見た時に毛皮が全体的に白っぽい印象なのは、夏毛だからなのでしょうか。 
(老齢個体はメラニン色素が薄れて白髪化するのかな?) 

奥の巣口Rを点検してから身震いし、手前へ来ました。 
手前の巣口Lの匂いを嗅いでから方向転換して、左奥の灌木林へ立ち去りました。 
採餌に出かけたようです。 
その後、帰巣シーンは撮れていません。 


シーン8:7/6・午前4:53・気温19℃(@5:31〜)日の出時刻は午前4:19。 
翌日の早朝にようやく戻ってきた例のタヌキ(尾に黒点▼)が右から回り込んで巣口Rへ向かいました。 
巣口Rの匂いを嗅いだだけで中には入らず、奥の二次林へ向かいました。  
すぐに画面の右上隅から戻ってきたところで、録画が打ち切られました。(尻切れトンボ) 


つづく→

2024/03/13

巣穴の近くで地面を掘って餌を探すニホンアナグマのヘルパー♂【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月下旬〜7月上旬

ニホンアナグマMeles anakuma)の母親♀が幼獣4頭を連れて生まれた巣穴 から転出すると、トレイルカメラにアナグマが写る頻度が激減しました。
転出先の巣穴の位置が突き止められていればそっちに監視カメラを設置し直すのですが、分からないので、同じ営巣地(セット)の監視を惰性で続けることにします。
(たまに面白い発見があるので、惰性の観察も侮れません。)


シーン1:6/29・午後14:41・晴れ・気温26℃(@0:04〜) 
手前の巣穴Lから外に出てきたばかりと思われる個体が、左へ立ち去りました。 
(出巣Lのシーンを撮り損ねたようです。)
2つの巣口LRの間の広場が、林冠ギャップによる日溜まりになっています。 

余談ですが、いつの間にか画面の左に造網性クモの垂直円網が斜めに張られていました。 
このカメラアングルでは、風に揺れている網がほとんど直線に見えます。 
(白い円網にピントは合っていませんが、中央のこしきにクモが占座しているようです。) 
アナグマの巣口L周辺を飛び回るヤブ蚊?やキイロコウカアブなどの双翅目を効率よく捕食できる場所なのでしょう。 

【参考文献】 
櫻庭知帆; 小林秀司; 髙﨑浩幸. キイロコウカアブはニホンアナグマを対象とした自動撮影カメラの設置適地を教えてくれる. Naturalistae, 2016, 20: 57-60. 


シーン2:6/29・午後13:34・晴れ(@0:28〜) 
別アングルに設置した広角の監視カメラで明るい時間にたまたま撮れた現場の様子です。 
少し遠いですが、右の巣穴Rの入口付近でハエ?やキイロコウカアブ?が飛び回っています。 


シーン3:6/30・午前3:44・気温20℃(@0:28〜) 
日付が変わった未明に、アナグマが奥の広場に登場しました。 
営巣地(セット)周辺の地面の匂いを嗅ぎ回り、左下に立ち去りました。 

左右の目の大きさが均等なので、母親♀ではなくヘルパー♂だと思いますが、ほっそりした体型に見えます。 
腹面に乳首の有無を確認できませんでした。 
出産育児の過労から解放された母親♀の疲れた目つき(右目<左目)が回復したのでしょうか? 
完全に余所者(新顔)の♀がやって来たのかも知れません。 



シーン4:7/3・午前4:32・気温19℃(@1:25〜)日の出時刻は午前04:18。 
3日後の明け方に左から来た個体が、手前の巣穴Lから伸びるアクセストレンチを右前足で掘っていました。 
顔つきがずんぐりむっくりしているので、ヘルパー♂が成獣の体つきに近づいてきたような気がします。 
巣口Lを点検したものの、中には入らずに近くで地面を掘り返してミミズを探しています(探餌)。 
身震いしてから右下に立ち去りました。 


シーン5:7/3・午前4:35・(@2:14〜) 
2分後に戻ってきたアナグマが画面右端エリアをうろついています。 
残念ながら顔を見せてくれませんでした。 


【考察】
ニホンアナグマの母子が転出してヘルパー♂だけが取り残されたと私は初め思いました。
気ままな独身生活を送るようになったのかもしれませんが、それにしても巣穴への出入りが監視カメラになかなか写っていません。
あるいは、家族と一緒に引っ越した後もヘルパー♂がときどき前の営巣地(セット)に戻ってきて、巣穴を点検したりメンテナンスしたりするだけなのかもしれません。

アナグマ家族がどこか別の巣穴へ転出した理由はもしかすると、梅雨の長雨で巣内が水浸しになり、中の巣材が濡れてカビが生え、住めなくなったのかもしれません。(居住環境の悪化)
ファイバースコープを巣穴に突っ込んで中を観察してみたいのですが、観察1年目の今季はとにかくアナグマを刺激しないように自重します。
濡れた巣材を外に干して乾かす行動をするとアナグマ関連の本で読んでいたものの、私は未だ実際に見たことがありません。 

つづく→

2024/03/11

梅雨の晩にアナグマ営巣地の林床を駆け回り餌を探す野ネズミ【トレイルカメラ:暗視映像】

 


2023年6月下旬・午後20:02・雨・気温19℃ 

雨が降りしきる晩に野ネズミ(ノネズミ)が二次林の林床をチョロチョロと走り回り、餌を探しています。 

ニホンアナグマMeles anakuma)の母子が巣穴から転出した後なので、野ネズミが空き巣に侵入する頻度が上がるかと予想したのですが、そうでもありませんでした。 
ただし、これは単純な話ではありません。 
アナグマのヘルパー♂だけが居残っているかもしれませんし、タヌキがアナグマの巣穴を乗っ取った可能性もあります。
そもそも野ネズミの出現頻度が一時期よりも減っている(個体数の増加が抑えられている)のは、ホンドテンやニホンイタチ、フクロウなど夜行性の捕食者が暗躍するようになったせいではないか?と推測しています。 

つづく→

2024/03/10

スギ防風林でニホンアナグマの溜め糞を通りすがりに調べるホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年6月下旬・午前4:01・(日の出時刻は午前4:15) 



ニホンアナグマMeles anakuma)が排便に通う溜め糞場stmpにホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が夜明け前に登場しました。 
スギ防風林を左からやって来たようで、朽ち果てた切株の上に乗り、アナグマの溜め糞stmpを見下ろしています。 
アナグマの新鮮な糞の匂いを嗅いでから左に立ち去りました。 

実は左に5mぐらい離れた地点にタヌキが排便に通う巨大な溜め糞場wbcがあるのです。 

タヌキがアナグマの溜め糞の上に対抗して排便することもありませんし、逆にアナグマがタヌキの溜め糞場で排便することもありません。 
しかし縄張りが重なり合う2種が近接してそれぞれの溜め糞場を設けているということは、お互いに意識し合って糞便の匂いで縄張りを宣言しているのでしょう。

2024/03/09

ニホンアナグマの溜め糞場に飛来した夜蛾を捕食する野ネズミ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年6月下旬・午後22:00頃 

平地のスギ防風林に残されたニホンアナグマMeles anakuma)の溜め糞場stmpをカメラトラップで監視すると、野ネズミ(ノネズミ)がよく写ります。 
明るい昼間に撮った現場の様子はこちらです。 

一方、夜になると暗闇のスギ林の中を夜行性の蛾が複数飛び回っています。 
ある晩アナグマの溜め糞場stmpに来ていた野ネズミが、溜め糞から飛び立った(あるいはたまたま低空で飛来した?)夜蛾に襲いかかりました。 
蛾は素早く飛んで逃げ、狩りに失敗した野ネズミは手前の切株へ立ち去りました。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイ。 

わずか1分半後、次にトレイルカメラが再び起動すると、溜め糞の横で野ネズミが夜蛾を捕食していました。 
狩りに成功した瞬間を撮り損ねたのが残念無念。 
獲物の翅はちぎってその場に捨て、胴体だけを食べています。 
野ネズミの肉食行動は初見で、感動しました。 
野生動物のトイレでは食物連鎖の様々なドラマが静かに繰り広げられているのです。

映像からは餌食となった蛾の種類を見分けられません。
この時期(昼間)はトンボエダシャクがよく飛び回っているのを見かけますが、なんとなくシャクガ科ではなくヤガ科のように見えます。 
夜行性の蛾の中に獣糞で吸汁する種類がいるらしいということは、過去にも観察しています。 
昼行性の蝶と同じく、性成熟に必要なミネラル成分(ナトリウムイオンやアンモニウムイオンなど)を獣糞から摂取しているのでしょう。

2024/03/08

ニホンアナグマ母子が転出した空き巣穴に夜な夜な忍び込んで内見するホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月下旬 

ニホンアナグマMeles anakuma)の母子がどこか別の巣穴に転出すると、それまで使われていた営巣地(セット)にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が夜な夜な侵入するようになりました。 
これまでよりも出現頻度が上がっています。 
アナグマが子育てしている間は特に♀が殺気立っているので、近所のタヌキも遠慮してセットには近寄らないようにしていたのでしょう。
あるいは、アナグマがあちこちに尿による縄張りマーキングを繰り返すことで、まるで結界を張ったように有効だったのでしょう。 
嗅覚の鋭いタヌキは、アナグマの匂いが巣口周辺で日に日に薄れていることを敏感に嗅ぎ取り、日に日に大胆に振る舞うようになっています。 


シーン1:6/26・午前3:22・気温15℃(@0:00〜) 
タヌキが暗い夜にアナグマの営巣地に来たのは、これが初めてです。 
これまでタヌキは明るい日中または薄明薄暮の時間帯にこっそり訪れていて、アナグマの活動が活発になる夜には決して現れませんでした。 
夜は営巣地(セット)に近づこうとするタヌキを巣穴の主であるアナグマが(吠え立てながら?)積極的に追い払っていたのかもしれません。 

深夜未明に現れたタヌキは、左の巣口Lへ真っ直ぐ向かい、そのまま迷いなく巣L内に侵入しました。 

まさに「同じ穴のむじな」という諺通りです。 
アナグマの空き巣をタヌキがこのまま乗っ取るのかな? 


シーン2:6/26・午前3:22・気温16℃(@0:25〜) 
別アングルのトレイルカメラでも、タヌキの巣穴L侵入シーンがしっかり撮れていました。 
しかしカメラの設置アングルがいまいちで、手前の巣口Lがしっかり写っていません。 


シーン3:6/26・午前3:24・(@0:25〜) 
カメラの起動が遅れてしまいましたが、1分20秒後に右へ立ち去るタヌキの後ろ姿が写っていました。 
タヌキは巣穴Lに居座ったり乗っ取ったりしないで、内見しただけで帰ったようです。 


シーン4:6/27・午前0:36・気温19℃(@0:45〜) 
翌日の深夜にもタヌキがアナグマの旧営巣地にやって来ました。 
巣口Rを覗き込んでから、蚊にでも刺されたのか右の脇腹を舐めて毛繕いしています。 
今宵は奥の巣穴Rへ慎重に潜り込みました。

アナグマの母子が転出した後、ヘルパー♂が取り残されたと思ったのですが、ヘルパー♂も不在がちなのかもしれません。 


シーン5:6/27・午前0:36・気温19℃(@1:43〜) 
別アングルの公開映像でもタヌキの入巣Rシーンが撮れていました。 
前夜のタヌキと同一個体かどうか、個体識別ができていません。 

巣穴の主であるアナグマ(ヘルパー♂)が不法侵入者を追い払うために飛び出してこないということは、留守なのでしょう。 
独りになったヘルパー♂はタヌキを怖がって居留守を使っている可能性はどうでしょう? 

タヌキが巣口Rlの横で地面の匂いを嗅いで方向転換しながら排尿マーキングしたように見えたのは、私の気のせいでしょうか?(@2:21〜) 
排尿姿勢から見ると、片足を上げなかったので♀のようです。 
タヌキが潜り込んだのは巣穴Rrでした。 

この後、タヌキが出巣Rするシーンが撮れていません。 
単に撮り損ねたのか、それともタヌキが巣R内に居座ったのか、不明です。 


シーン6:6/28・午前3:41・気温20℃(@2:43〜) 
翌日の深夜未明、土砂降りの豪雨が降りしきる中、タヌキが登場。 
身震いしてから慎重に巣穴Rlの中に潜り込みました。 

この後、タヌキが出巣Rするシーンが撮れていません。 
単に撮り漏らしたのか、それとも巣R内に居座ったのか、不明です。 

一時的な雨宿りではなく、いよいよアナグマの空き巣をタヌキが本格的に乗っ取ったような気がしてきました。


 シーン7:6/29・午前5:12・気温20℃(@3:14〜)日の出時刻は午前4:16。 
翌日の早朝、雨は止んでいました。 
やって来たタヌキが奥の巣口Rを覗き込んで匂いを嗅いだものの、中には入らずに左奥の二次林へ立ち去りました。 

登場するタヌキの個体識別ができるようになれば、より面白くなりそうです。 


【追記】
アナグマ関連の本を読んで「幼獣が生まれた巣穴から母子はやがて引っ越す」という予備知識があったので、そのように解釈しているのですが、トレイルカメラの電池切れで肝心の転出行動を記録できていません。
したがって、タヌキが力づくでアナグマの巣穴を乗っ取り占拠したという可能性も排除できません。


2024/03/07

ニホンアナグマの母子が新しい巣穴に転出した後に取り残されたヘルパー♂【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月下旬 

ニホンアナグマMeles anakuma)の営巣地(セット)でヨチヨチ歩きの幼獣たちの姿をカメラトラップが捉えたのは、前回6/17が最後でした。 
それ以来、アナグマの出没記録がパタッと激減しました。 
おそらく、母親♀は4頭の幼獣たちを連れて別の巣穴に引っ越してしまったようです。 
母子が採食のために森の中を少しずつ遠出できるようになり、幼獣に体力が付いたら、引率して新しい巣穴へ引っ越しするのでしょう。
体重が増えた幼獣を母親♀が1頭ずつ咥えて遠くの新しい巣穴まで運び、その重労働を4往復もするのは無理だと思います。
アナグマ関連の本を読んでいて「幼獣が生まれた巣穴から母子はやがて引っ越す」という予備知識があったので、それほど動転したり落胆したりしないで済みました。 


新しい世界へ!
 それは突然でした。母アナグマは赤ちゃんたちが一緒に歩けるだけの体力がついたと判断したのでしょう。
 いつもはジェジェジェビームを使って赤ちゃんたちを巣の外へ連れ出すとビームはオフにするのですが、この時はオンのままです。
 赤ちゃんたちは教えられたとおり母アナグマの後をついてゆき、そのまま森へ消えてゆきました。 (福田幸広『アナグマはクマではありません』p90より引用)

トレイルカメラ2台に絶えず監視される生活が嫌になって母子が営巣地から逃去したのか?とか、天敵に襲われて皆殺しにされたのか?とか、あれこれ思い悩むところでした。
運悪くカメラの電池が切れていたため、引っ越しの行動が動画で記録できなかったのも残念です。 
転出先の巣穴がどこにあるのか、私は未だ見つけられていません。 
そして、この営巣地にはヘルパー♂が独り残されたようです。 


シーン1:6/22・午後17:48・気温18℃(@0:00〜)日の入り時刻は午後19:08。 
日没前の夕方に右上から登場したアナグマが獣道を通って奥の二次林に立ち去りました。 
1台の監視カメラの設置アングルに失敗してしまい、巣口Lをしっかり狙えていませんでした。 


シーン2:6/27・午前4:10・気温17℃(@0:20〜)日の出時刻は午前4:15。 
5日後の日の出直前に右から久しぶりにアナグマが登場。 
なんとなく、♀ではなくヘルパー♂のような気がします。 
ここ数日は幼獣の姿を全く見かけません。 
2つの巣口LRの中間地点に佇んで、辺りを警戒しています。 

実は約3.5時間前に、タヌキがアナグマの営巣地に来ていました。(映像公開予定) 
タヌキの残り香を嗅ぎ取って警戒しているのかもしれません。 


シーン2:6/27・午前4:19・気温19℃(@1:20〜) 
日の出直後に奥の巣穴Rから外に出てきたアナグマが、2つの巣口LRの中間地点に座り込みました。 
左の林内を見つめています。(警戒?) 
腹面に乳首が見えなかったことから、この個体もヘルパー♂だと思います。 
同居していた家族が急に減って寂しいという感情があるのでしょうか?
巣口Lの横を通り過ぎ、左へ立ち去りました。 


シーン3:6/27・午前4:20・気温17℃(@2:21〜) 
別アングルに設置したトレイルカメラによる広角の映像に切り替えます。 
5倍速の早回し映像でお届けします。 
左奥の灌木林の中をアナグマが頻りにうろついています。 
林内でおそらくミミズなどを採食しているのでしょう。 


シーン4:6/27・午後13:26・気温23℃・晴れ(@2:35〜) 
明るい真っ昼間にアナグマが奥の巣穴Rに潜り込みました。
しばらくして再び出巣Rしたアナグマが、林縁の広場で身震いしてから左奥の二次林へ走り去りました。 


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2024/03/06

スギ林床にあるニホンアナグマの溜め糞場に夜な夜な来る野ネズミ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年6月下旬 

スギ防風林にあるニホンアナグマMeles anakuma)の溜め糞場stmpにカメラトラップを設置して見張っていると、野ネズミ(ノネズミ)が夜な夜な写っていました。 

画面の右に斜めに転がっている細長い棒状の物体は、林床に不法投棄された手押し車(猫車)の朽ちた金属フレームです。 
アナグマはこれを目印にして、溜め糞場stmpに来ているのかもしれません。 


シーン1:6/22・午後19:56(@0:00〜)日の入り時刻は午後19:08。 
晩に野ネズミが登場しました。 
起動したトレイルカメラに驚いたようで、溜め糞場の上に乗ったまま野ネズミが静止(フリーズ)していました。 
一体何をしていたのでしょう? 
我々ヒトの衛生感覚からすると考えられませんが、野ネズミは素足で溜め糞の上に乗っても平気なようです。 
警戒を解くと手前に立ち去りました。 

このときは溜め糞場stmpの主の正体がまだ不明で(アナグマの排便シーンが写る5日前)、まさか野ネズミが排便に通っているのか?と意外に思ったりしました。 
しかし、ネズミの糞にしては形状が明らかに異なりますし、野ネズミが同じ場所に繰り返し排便して溜め糞の山を作るという習性も聞いたことがありません。 


シーン2:6/22・午後21:54(@0:16〜) 
スギの落葉落枝が敷き詰められた林床をチョロチョロと走り回って餌を探しています。 
その通り道にアナグマの溜め糞場stmpがあるようです。 


シーン3:6/23・午前0:57・気温(@0:27〜) 
溜め糞の匂いを嗅ぎ、辺りをうろついてから、手前に立ち去りました。 
手前の切株に野ネズミの巣穴があるのかな? 


シーン4:6/25・午前0:13・気温(@0:45〜) 
溜め糞stmpの右上で、林床のスギ落葉の中に顔を突っ込んでいました。 
おそらく獲物となる虫を探しているのでしょう。 
諦めて奥に立ち去りました。 


シーン5:6/26・午前1:34・気温(@1:22〜) 
野ネズミが深夜にスギの林床を奥から手前にやって来ました。 
アナグマの溜め糞場stmpの匂いを嗅いだだけで通り過ぎました。 


画面の左下隅に写っているには、朽ちた切株です。 
(トレイルカメラに近過ぎて、赤外線が白飛びしてしまっています。) 
実はその根元に、オニグルミ堅果の殻が大量に散乱していました。 
クルミの殻には2個ずつ穴が開いていて、アカネズミApodemus speciosus)の食痕と分かりました。(映像公開予定) 
近くにオニグルミの木は自生していないので、アカネズミが秋にオニグルミの落果を拾い集めて切株の隙間などにせっせと貯食したのでしょう。 
冬に貯蔵庫のクルミを食べた後のゴミ捨て場になっていたのです。 
今回トレイルカメラを設置してみて、野ネズミの出現頻度が高いことから、おそらく巣穴が近くにあるのだろうと予想できます。 




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2024/03/05

スギ防風林の溜め糞場に通って排便するニホンアナグマ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年6月下旬 

平地のスギ防風林にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞場wbcがあります。 



タヌキの溜め糞場wbc-1から約5m離れた地点に、別の溜め糞場stmpを新たに見つけました。 
朽ちた切株と捨てられた古い手押し車(猫車)の間に溝が掘られていて(農業用水路の跡?)、そこに黒っぽい下痢便が残されていたのです。 
タヌキの溜め糞場とは異なり、しっかりした固形の糞が残っていないのが特徴です。 
気にはなっていたものの、監視するためのトレイルカメラの数が足りなくて、検証が後回しになっていました。 
他のプロジェクトがようやく一段落したので、溜め糞場stmpにトレイルカメラを設置したところ、ニホンアナグマMeles anakuma)が排便に通っていることが判明しました。 

アナグマの溜め糞場を見つけたのは、これが2例目です。(n=2) 
タヌキとアナグマが溜め糞場を共有(隣接)しているのは、別の地点(里山のスギ林道)でも観察しています。 
アナグマが溜め糞場に下痢便を排泄するのも、同じく別の地点(里山のスギ林道)で観察済みです。 


シーン1:6/27・午前2:44・(@0:00〜) 
夜中に左から来た獣が溜め糞の匂いを嗅いでいます。 
切株の方を向いて溜め糞場stmpに跨がり、脱糞しました。 
残念ながら手前の切株が邪魔で顔が見えませんでした。 
(もっと高所から見下ろすように監視カメラを設置する必要ありそうです。) 
林床の溝を通って右下へ立ち去る際に、ようやくアナグマと判明しました。 
おそらく♀(または若いヘルパー♂)のようです。 
スクワットマーキング(臭腺や肛門腺による匂い付け)はしませんでした。 


シーン2:6/28・午前3:45・大雨(@0:25〜) 
梅雨の激しい豪雨が降りしきる深夜に、溜め糞場stmpに来たアナグマが左を向いて軟便を排泄しました。 
用を足すと、溝を通って右に駆け去りました。 
逃走シーンを1/3倍速のスローモーションでリプレイ。


詳細は伏せますが、アナグマの営巣地(セット)から遠くない場所に、この溜め糞場stmpは位置しています。 
この映像では、画面の左上の方向にアナグマの営巣地があります。 
ちなみに、タヌキの溜め糞場wbcは、画面の左下方向にあります。
溜め糞場stmpに通うアナグマを個体識別したくなりますが、右目が左目よりも小さい♀かどうか、この動画のアングルからは見分けられませんでした。 

アナグマ関連の本には、巣穴の近くに溜め糞場があると記述してあります。
例えば、熊谷さとし、安田守『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』(2011年)でアナグマの掲載ページを参照すると、
巣穴の近くに穴を掘り、中にフンをした「表札フン」。ミミズ類を多く食べたときのフンは、形状が崩れやすいという。
地域によっては、タヌキに似た「ためフン場」をつくる場合もある。(p68より引用)

ところが、なぜか私のフィールドでは当てはまらず、巣穴から結構離れた地点にあります。(n=2)
営巣地にトレイルカメラを2台設置して重点的に監視しても、巣穴の近くで脱糞するアナグマの決定的な証拠映像を一度も撮れたことがありません。
(排尿マーキング行動は何度も撮れています。)
営巣地と溜め糞場の分離がこの地域のニホンアナグマ個体群に特有の習性だとしたら面白いのですが、進化的にどんな意味があるのか、今のところ分かりません。
ホンドタヌキの縄張りと重なり合って密接に共存していることが一つの鍵になりそうです。


2024/03/04

ニホンアナグマの家族群:6/15〜6/17の野外育児【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月中旬 

ニホンアナグマMeles anakuma)の家族が巣外で過ごす様子を3日分(6/15〜6/17)まとめました。 
この時期はトレイルカメラカメラの電池が消耗していて、撮り漏らしが多いです。 


シーン1:6/15・午後19:02(@0:00〜)日の入り時刻は午後19:06。 
日の入り直前に巣口Rをうろついていた個体が右の巣穴Rに戻りました。 


シーン2:6/15・午後19:55(@0:13〜) 
すっかり暗くなった晩に♀が巣穴Rから外に出て来ました。
♀が巣口Rで幼獣の体を舐め始めました。(対他毛繕い) 
深夜に小雨が降り始めました。 
身震いしてから入巣R。(@0:23〜) 


シーン3:6/16・午前5:35(@0:26〜)日の出時刻は午前4:13。 
早朝に活動を再開したときには、雨は止んでいました。 
明るい昼間にはトレイルカメラの赤外線LEDを点灯する必要がないので電力消費が少なく、通常通り1分間録画してくれます。 

巣外で辺りを警戒していたヘルパー♂がぐるっと回り込んで巣口Rに行くと、中から顔を出した♀と相互毛繕いしました。 
朝の挨拶が済むと♀は巣穴Rへ、ヘルパー♂は巣穴Lにそれぞれ戻りました。 


シーン4:6/16・午後18:07(@0:47〜)日の入り時刻は午後19:07。 
夕方に活動を再開した♀が巣穴Rの奥から後ろ向きで1頭の幼獣を外に引きずり出しました。
しばらくすると、更に2頭の幼獣も巣口Rに出て来ました。 
♀が計3頭の幼獣の毛皮をそれぞれ舐めてやります。 
その合間に、♀自身も体の痒い部位を掻いたり、毛繕いしたりしています。 
親子の群れは林縁の広場に移動しました。 
巣穴Rに残っていた最後の幼獣個体(4頭目)が遅れて外に出てきました。(@1:29〜) 
自力でアクセストレンチを上り、家族に合流しました。 
♀が幼獣全員(計4頭)をまとめて育児するのを見るのは珍しいです。 
これまでは3+1頭の2組に分けて育児していました。 

♀は林縁で採食してるようですが、後ろ姿でよく見えません。 
林縁を歩き回り、幼獣にミミズなどの採食法を教えているのでしょうか。 

親子水入らずの時間が続きます。 
林内からセットに戻ってきた♀は、仰向けでのんびり毛繕いしながら、幼獣たちを自由に遊ばせています。 

幼獣2頭が自力で巣口Rの中に戻りました。 
残る幼獣2頭は巣口Lに戻りました…と思いきや、再び巣口Lの外に出てきてウロウロしています。 
右から来た♀が巣口Lの幼獣2頭に対他毛繕いすると、引率して獣道を左へ向かいました。 
食餌に出かけたようです。
しばらくするとセットに戻ってきた♀は、幼獣2頭を連れて巣口Rへ向かいました。 
午後18:40、ようやく計4頭の幼獣全員をまとめて巣穴Rに連れ戻したことになります。
日によって状況は変わりますが、この日6/16はヘルパー♂が巣穴Lに、残りの母子が巣穴Rにそれぞれ住み分けていました。 


シーン5:6/17・午前4:27(@3:04〜)日の出時刻は午前4:13。 
日の出直後の早朝に活動を始めた成獣が入巣R。 


シーン6:6/17・午後18:11(@3:11〜) 
♀が巣口Rから2頭の幼獣を外に連れ出し、汚れた毛皮を舐めてやります。 
♀は広場に移動して仰向けになり、自ら毛繕いを始めました。 




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2024/03/02

巣外で幼獣を世話するようになったニホンアナグマのヘルパー♂:6/14一夜の育児行動【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月中旬 

ニホンアナグマMeles anakuma)の家族がとある一夜(6/14)に巣外で過ごす様子をまとめました。 
既に報告済みの部分は除外した残りの行動です。 
別アングルに設置した新旧2台の自動撮影カメラで監視しています。 
トレイルカメラ2台分の監視映像を見直すのは大変ですけど、互いに補完し合えるので、アナグマの行動を正しく解釈できるようになります。


シーン1:6/14・午前3:50・気温18℃(@0:00〜) 
手前の巣穴Lに出入りしたアナグマが、巣外で体を掻き、左へ立ち去りました。 
この個体が♀なのかヘルパー♂なのか、識別ができていません。 
外出した個体は体中が泥だらけなので、なんとなくヘルパー♂のような気がするのですけど、定かではありません。 
深夜(日の出前)の行動はこれが最後でした。 
日の出時刻は午前4:13。 

採餌のために外出した個体が帰巣するシーンが撮れていないのが気がかりです。 
技術的な問題でトレイルカメラが撮り損ねているだけなら良いのですが、私の知らない別の出入り口がどこかにあるのでしょうか? 



シーン2:6/2・午後18:12:・気温19℃(@0:29〜) 
アナグマは明るい昼間、巣内で寝ています。 
日の入り時刻は午後19:06。 
日によって状況は変わるようですが、この日6/14は巣穴Lの居室に子育て中の母子が陣取り、ヘルパー♂は巣穴Rに住んでいたようです。 
夕方に薄暗くなると、目覚めた成獣2頭(母親とヘルパー♂)が巣外に出て相互毛繕いするのが、1日の始まりのルーチンであることが分かってきました。 

夕方の挨拶が済むと、♀は巣穴Lに戻りました。 
巣外に残った個体は、体の痒い部分を掻きむしったり毛繕いしたりしています。 
このとき腹面に乳首がなくて股間に睾丸が見えたので、ヘルパー♂(1歳仔♂)と判明。(@1:19〜) 

やがて巣穴Lから後ろ向きで再び外に出てきた♀は、幼獣1頭の首筋を咥えていました。 
幼獣を巣口Lに残したまま、♀はヘルパー♂と再び相互毛繕い。 
その間に巣口Lの幼獣は中に戻ってしまったようです。 
しばらくすると、♀は再び入巣L。 
ヘルパー♂が仰向けの大股開きで毛繕いしてくれるので、睾丸だけでなく陰茎も見えました。(@2:46〜) 
再び出巣Lした♀と相互毛繕い。 
♀の腹面には横から見ても乳首が目立ちます。 

巣口Lから自力で登って来た幼獣に気を取られて♀が振り返ると、ヘルパー♂は♀の背後から尻の匂いを嗅ぎました。(@3:22〜) 
初めて見る行動ですが、イヌはよくやります。
アナグマの場合は、臭腺や肛門腺の匂いを確認しているのでしょう。 

♀は巣口Lから1頭の幼獣の首筋を咥えてアクセストレンチに引きずり出しました。 


シーン3:6/14・午後18:18・(@3:57〜) 
成獣♀♂ペア(というか親子)と幼獣1頭が巣外で一緒になり、仲睦まじく相互毛繕いしています。 
♀が巣穴Lに戻ると、巣外に残ったヘルパー♂が幼獣の毛皮を舐め始めました。(@4:06〜) 
ヘルパー♂から幼獣への対他毛繕い(直接的な育児行動)を見るのは初めてかもしれません。
幼獣がある程度育つまでは、ヘルパー♂が幼獣に触れたり近づいたりするのを♀が禁じていたのではないかという気がしています。
(観察歴の浅い私の個体識別が不完全だっただけで、これまでもやっていた可能性はあります。)

巣外でしばらく幼獣の尻を舐めてやってから、ヘルパー♂は自分が先導して幼獣を巣穴Rへ誘導しました。 
幼獣がヘルパー♂の居る方へ向かって進もうとするものの、巣口Rが深いので踏み留まっています。 
勇気を出して脚を踏み出したら巣口Rの断崖をずり落ちそうになり、おまけに灌木の細い根っこが首に挟まってしまいました。 
進退窮まった幼獣はケケケケ♪というような遭難声♪を発しました。(@6:24〜) 
それを聞いたヘルパー♂が右から戻って来ました。 
同時に♀が左の巣穴Lから心配そうに顔を出しました。 
もがいていた幼獣が巣口Rに転がり落ちてしまいました。 
それを見た♀が慌てて左の巣口Lから駆け寄り、巣口Rで幼獣を舐めてやって安心させました。 
♀が突進してくると、ヘルパー♂は右に退散してしまいました。 
♀に怒られると思って、怯えたように見えます。
擬人化すると、「幼獣が悲鳴を上げたのは俺のせいじゃない。俺は悪くない!悪くない!」とヘルパー♂は慌てて言い訳してそうです。 

やがてヘルパー♂が戻ってくると、3頭(♀とヘルパー♂と幼獣)が一緒になって相互毛繕いを始めました。 
成獣2頭の間に幼獣が割り込もうとしたりして、微笑ましい光景です。 
急に♀が怒ってヘルパー♂に軽く攻撃しました。(@7:31〜) 
ヘルパー♂から♀への対他毛繕いがしつこかったのか、それとも幼獣に構うヘルパー♂を♀が追い払ったのか、カメラのアングルがいまいちでよく分かりませんでした。
いずれにしても、子育て中の母親♀の機嫌を取るのは難しいようです。 
ヘルパー♂はすごすごと林縁に退散して、バツが悪そうに自分の体を掻いています。 
ほとぼりが冷めてから再び広場の母子に近づこうとしたものの、♀に軽く牽制されてしまいました。(@8:00〜) 

ところがすぐ後に別アングルのカメラに切り替わると(@8:10〜)、♀の方からヘルパー♂に歩み寄って仲直りの相互毛繕いを始めました。 
互いに毛皮を舐めたり甘噛みしたりしています。 
なんとも仲睦まじい一家団欒の光景です。 
アナグマの♂が若いヘルパー(1歳仔の息子♂)だという予備知識がなければ、疑いもなく一夫一妻制だと思うはずです。

幼獣の世話をヘルパー♂に任せた♀が手前の巣穴Lに入りかけると、(@8:57〜) ヘルパー♂が急に何かに警戒して(驚いて?)、奥の巣穴Rの方に駆け出しました。 
♀の発した唸り声♪(怒声? 警戒声?)を聞いて、咄嗟に巣穴Rへ逃げ込もうとしたようです。
このとき咄嗟に幼獣を守ろうとしないで広場に置き去りにした点が興味深く思いました。 
今回は幸い、何事もありませんでした。 
しかし、危機に際して幼い兄弟姉妹を見殺しにしかねないヘルパー♂の不作為は注目に値します。 
アナグマにも嫉妬からくるカイン・コンプレックスがあるとしたら、ヘルパー制度はそもそも成り立たないはずです。
ヘルパー♂と幼獣が異父兄弟だとすると、血縁度が0.25と低いため、ヘルパー♂が幼獣を守るという利他的行動のメリットが乏しいと説明可能です。 
嗅覚が鋭いアナグマは家族内で互いに体臭を嗅いだだけで個体識別できたり、血縁度まで分かってしまうのでしょうか? 
あるいは、母親♀が怒るので、ヘルパー♂は幼獣を救助するどころか下手に手を出せないのかな? 
例えば、ヘルパー♂が巣内から幼獣を咥えて外に連れ出す行動を私は一度も見たことがありません。(母親♀が許さないのでしょう。) 

やがて幼獣は自力でアクセストレンチを下って母親の後を追うように入巣Lしました。 
 一度ヘルパー♂は巣穴Lに戻りかけたのですが、中を覗き込んだだけで、巣外の広場に戻りました。 
ひたすら毛繕いと体掻きを続けています。 

巣外に独り残されたヘルパー♂は巣口Rに向かいました。 
この後、ヘルパー♂は独りで巣穴Rの拡張工事を始めました。 

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シーン4:6/14・午後18:52・気温22℃(@9:45〜) 
穴掘り作業が一段落したのか、それとも重労働で疲れた(飽きた)のか、ヘルパー♂が広場で仰向けになり、毛繕いしています。 
赤外線の暗視動画はモノクロなので分かりづらいのですけど、おそらく全身黒土で汚れているようです。 
腹面に乳首が見えず、股間に陰茎および睾丸があることから♂と分かります。(@9:55〜) 
長々と時間をかけて毛づくろいすると、ようやくヘルパー♂は営巣地を離れて獣道を左に立ち去りました。(@11:40〜) 
空腹になって採餌に出かけたのかもしれません。 
あるいは、体の泥汚れを落とすために、近くの小川や田んぼへ水浴びしに行ったのではないかと予想しました。
もしかしてアナグマは泥汚れも気にならず、水浴行動をやらないのかな?
アナグマが頻繁に体を掻いているということは、吸血性の体外寄生虫に悩まされていることを意味します。
砂浴びをする鳥のように、アナグマも穴を掘って土を全身に浴びることで体外寄生虫を少しでも駆除しようとしているのかもしれません。

ヘルパー♂の帰巣シーンは撮れていません。


シーン5:6/14・午後19:20・気温21℃(@11:46〜) 
巣穴Lから♀が外に出てきました。 
巣外で独り身だしなみを整えると、1頭の幼獣を外に連れ出して毛繕いを始めました。 
更にもう2頭の幼獣も巣口Lから自力でアクセストレンチの傾斜を登って来ます。 
巣外に出た幼獣は計3頭になりました。 

今回も4頭の幼獣を同時に外出させるシーンが一度もなかった点が興味深いです。 
どうやら、この母親♀は幼獣を3+1頭の2組に分けて育児をしているようです。 
授乳・睡眠のリズムが1頭だけ違うのでしょうか。
アナグマの♀には普通3対6個の乳首があるはずですけど、ひょっとするとこの♀個体は乳の出が悪くて、4頭の幼獣を同時に授乳できないのかもしれません。
来季のヘルパー♂候補に特別な帝王学を授けるために、他の兄弟姉妹と分けて育てているとしたら面白いですね。(素人の勝手な妄想です) 
次のヘルパー候補の幼獣♂の子育てはヘルパー♂に任せていたりして…と素人が勝手に妄想してみました。
この問題を解明するには、映像から幼獣を個体識別しないといけません。
しかし幼獣の性別を見分けるのも私には難し過ぎて、とても無理です。 

後半になるとトレイルカメラの電池が消耗して、断片的な短い映像しか撮れなくなりました。 
それでも熱源を動体検知する度に健気に起動して、短いながらも録画してくれます。 

午後19:25にカメラの電池が完全に切れて、撮影終了。 
最後の画面には2頭の幼獣だけが写っていて、♀は不在に見えます。 
左の死角にいるのか、それとも巣穴Lに戻って残りの幼獣の世話をしているのか、不明です。


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


アナグマは巣外で過ごすほとんどの時間を毛繕いと体掻きに費やしています。 
体中が痒い原因は、巣内で吸血性の体外寄生虫(ノミやダニなど)が蔓延しているのではないか?と心配になります。 
ただし、疥癬のように体毛がどんどん抜ける症状は見ていません。
余談ですが、設置したトレイルカメラの電池を交換するために、定期的に現場入りする必要があります。 
撮れた動画をその場でチェックするのに長時間かかるため、私はアナグマ営巣地(セット)の林床に直に座り込んで作業していました。 
梅雨時は蒸し暑いので、長ズボンではなく短パンを履いていました。 
ヤブ蚊は意外と気にならないのですが、帰宅すると、股間がひどく痒くなりました。 
おそらく私が気づかない間に何か吸血性の虫が私の脚を這い登って短パンの隙間から潜り込み、私の無防備な股間を刺したり噛んだりしたのでしょう。 
皮膚科を受診するまでもなく、まめに入浴して股間を清潔に保ったら自然に治癒しました。
患部を掻き毟りたくなる衝動を必死に我慢するのが大変でした。
これに懲りた私は、アナグマ営巣地で地面に直接座るのを止めました。 
必ず折り畳み椅子を持参して、それに座るようにしています。 
長ズボンを履いていたら股間の虫さされを防げたかもしれませんが、夏は耐え難い暑さで熱中症になりそうです。 
営巣地の森に踏み込む前に虫除けスプレーを予め全身に噴霧するかどうか迷いました。
嗅覚の鋭いアナグマが虫除けスプレーの異臭を嫌がるのではないかと心配で、今季は一度も使わず我慢しました。 
こういう細かいノウハウはアナグマ関連の文献を読んでも書いてないため、自分で失敗しながら工夫するしかありません。 
お恥ずかしい裏話ですが、せっかくですのでブログに記録しておきます。 




【アフィリエイト】



 

↑【おまけの動画】 
兄弟を助けたくなる条件とは?利他行動を定式化した「ハミルトン則」【血縁淘汰2】#64 by ゆる生態学ラジオ 

ラジオ形式にこだわっているチャンネルのため、この難解なトピックを図表を使わずにトークだけで解説しようとチャレンジしています。 
(私にはとても無理です。)

2024/02/29

ヘルパー♂が巣穴を掘る作業中に進捗状況を確かめに来て労をねぎらうニホンアナグマ♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月中旬 6/14・午後18:45〜18:47(日の入り時刻は午後19:06) 

日没前の夕刻にニホンアナグマMeles anakuma)のヘルパー♂が巣穴Rrの拡張工事に没頭しています。 
巣穴の中から掻き出した土砂に混じって腐葉土も出土しました。 
おそらく巣材(寝床)として大量に搬入した落ち葉などが分解したものでしょう。 
今まで使っていた居室(子供部屋?)を大幅に改築工事していることが伺えます。 

ヘルパー♂が巣穴Rrの奥深くに潜り込んでいるときに、左側の巣穴Lから母親♀が顔を出しました。 
腹面に乳首が発達していて、左右の目が不均等(右目<左目)なのが、この♀個体の特徴です。 
夕方の営巣地(セット)周辺を警戒しているだけかと思いきや、♀が巣穴Lから外に出てきて巣穴Rの方へ早足で突進しました。 


不意をつかれたヘルパー♂が巣口Rrから慌てて外に跳び退りました。 
ヘルパー♂の方が母親♀よりも少しだけ体格が大きいのに、♀には頭が上がらない様子が見て取れます。 

てっきり、泥だらけで面影が失せたヘルパー♂を外敵(侵入者)と誤認した♀が攻撃するのかと思いました。
アナグマは視力が良くない上に薄暗い時間帯ですし、穴掘りで全身真っ黒に汚れた息子(1歳仔♂)と気づかなくても無理はありません。 
擬人化すると、おかんが息子に 「ちょっとあんた家の玄関先で何してんの、脅かさないでよ〜、誰かと思ったわ」 とか言ってそうです。

しかし、2頭の小競り合いにはならず、♀はヘルパー♂が掘ったばかりの巣穴Rrに入って中を調べています。 
内見を済ませた♀が外に出てくると、巣外で待っていたヘルパー♂に近づいて互いに毛繕いをしました。 
しかし、今回の相互毛繕いは儀式的な挨拶のようなもので、短く終わりました。 
ヘルパー♂の毛皮の泥汚れを♀が対他毛繕いで本格的に落としてやることはありませんでした。 

ヘルパー♂の労をねぎらった♀が元の巣穴Lに戻ると、ヘルパー♂はまた独りで巣口Rrの穴掘り作業をせっせと再開しました。 

左右に離れた2つの巣穴LとRは内部でつながっているはずです。
いくら母親♀が幼獣4頭の育児で忙しいからと言っても、ヘルパー♂が巣穴Rrで穴掘りしていることは、巣L内の♀はとっくに承知しているはずです。 
今さらヘルパー♂の穴掘り作業の物音を外敵の侵入と誤認するとは考えにくいです。 

ニホンアナグマの社会では、穴掘りの重労働はヘルパー♂に任せて、母親は幼獣の育児に専念する、という分業が成り立っているようです。
現ヘルパー♂は性成熟する翌年には♀から営巣地を追い出され、次に選ばれた弟が新たにヘルパー♂を務めることになります。
ヘルパー♂が掘った巣穴は、♀が存命中は自分の財産(不動産)になりません。
つまり、ヘルパー♂を務める個体にとって、♀のために巣穴を掘ってやる行動は明らかに利他的行動になります。

※ ヘルパー♂自身が住む巣穴でもあるので、100%利他行動とは言えませんね。

親孝行するのは当然だという人間社会の価値観を持ち込んでも仕方がありません。
(ヒトにはヒトの、アナグマにはアナグマの暮らし方があるのです。)

アナグマにおけるヘルパー制度の進化は血縁選択で説明できるでしょうか? 
ヘルパー♂が母親の育児を間接的に手助けすれば、血縁度の高い弟や妹が無事に育つ確率が高まり、結果的にヘルパー♂の適応度が上がります。 
ここで問題になるのは、父親が同じとは限らないという点です。 
アナグマの交尾は一夫一妻ではなく乱婚ですから、ヘルパー♂が(間接的に)世話する相手は異父の弟妹となる可能性が高く、血縁度は0.50から0.25に下がります。 
血縁度が0.25と低ければ、アナグマのヘルパー♂が♀の育児(対他毛繕いなど)を直接的に手伝わない理由も納得できそうです。
アナグマ家族の全個体から採血したり毛根を採取したりしてDNAで親子鑑定(父性鑑定)すれば、実際の血縁度が求められるはずです。 
残念ながらアマチュアがこれ以上は追求できません。

ある年に母親♀が産んだ幼獣の性別がもしも全て♀だった場合、翌年のヘルパーは若い娘♀(1歳仔♀)が務めるのかどうか、気になります。
例えば今年2023年に生まれた幼獣4頭が全て♀である確率は1/16=6.25%です。
(まさか、アナグマ♀は女王蜂のように子供の性別を自由自在に産み分けられるのでしょうか?)
ヘルパーが♀の場合には、♂よりも非力で巣穴を掘るのは苦手かもしれません。
しかし、乳母として幼獣(弟や妹)に授乳できる可能性があり、ヘルパーが♂の場合よりもヘルパー自身の適応度がより高まることが予想できます。
ヘルパー♀が独立したときのために子育ての練習になる、というメリットもあるでしょう。
母親♀が死亡した時に娘(ヘルパー♀)への巣穴の継承(相続)もスムーズに進むはずです。
逆にアナグマのヘルパーが♂という現状は、私からすると奇妙な社会で、どうやって進化したのか不思議です。



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2024/02/28

夕方に巣穴をせっせと掘り進めるニホンアナグマのヘルパー♂【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月中旬
6/14・午後18:28〜18:51・(日の入り時刻は午後19:06) 

日没前の夕方に、ヘルパー♂と思われるニホンアナグマMeles anakuma)が右の巣口Rを拡張する工事を始めました。 
巣口Rは更に左右2つの穴に別れているのですが、そのうちの右側Rrを巣外から掘り広げています。 
尻尾に隠れて分かりにくいのですが、巣穴Rrに頭を突っ込んでいる間、股間に睾丸がちらっと見えたので、♀ではなくヘルパー♂と判明。 

穴掘り作業を途中から5倍速の早回し映像に加工しました。 
頭を巣穴Rrに突っ込んだままグルグル回るように穴を掘り広げています。 
土に埋まっている木の根っこや岩などの障害物を除けながら素手で巣坑を掘り進めるのは大変そうです。 
梅雨の時期を選んで穴掘り作業しているとしたら、しみ込んだ雨で土壌が少し軟化して作業が楽になっているのかもしれません。 
掘った土は巣外に掻き出します。 

ようやく穴掘りを中断したヘルパー♂が、外に出て来ました。(@1:23〜) 
上半身が黒い土で汚れています。 
アクセストレンチを後退しながら、掘った土砂を前脚で後方へ掻き出しています。 
やはり股間に睾丸がぶら下がっています。 
画面右へアクセストレンチを形成すると、巣口Rrの拡張工事に戻りました。 


その後は休みなく一心不乱に穴を掘り続けています。 
たまに後ろ向きで巣外に出て来ると、ヘルパー♂の毛皮はお尻以外は真っ黒に汚れていました。(@2:15〜) 
掘った土を巣穴Rrから掻き出しながら後退すると、アクセストレンチが右に形成されます。 
毛繕いだけできれいになるとは思えないのですけど、この後で水浴して汚れを落とすのでしょうか? 
作業の途中で身震いしました。(@2:30〜) 

午後18:44 (@3:48〜)
ようやく充分に暗くなり、赤外線の暗視映像に切り替わりました。 

ヘルパー♂が巣穴Rrに奥深く潜って掘り進めている間に、左の巣口Lから♀がひょっこり顔を出して周囲を警戒しました。(@3:57〜) 
その後の顛末が面白いのですが、次回にまとめました。
♀はすぐに巣内Lに引っ込んだようです。 
前日6/13とは逆で、♀と幼獣4頭が暮らす子供部屋は巣穴Lにあるようです。

やがてヘルパー♂は、今まで掘っていたRrの隣にある巣口Rlも掘り始めました。(@4:25〜) 
2本のトンネルは掘る方向が少し違うようですが、共通のアクセストレンチに掘った土を捨てています。 

午後18:51 
映像終了。 


アナグマの体格に性的二型がある(♀<♂)のは、穴掘りの肉体労働を♂に任せるからだと思ったのですが、若いヘルパー♂(1歳仔)の体格は♀と変わらず、筋骨隆々というほどでもありません。
繁殖期に♀との交尾権をめぐる♂同士の激しい闘争行動は見られなかったので、♂の体格が立派になる理由がよく分かりません。 

※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 




福田幸広、田中浩『アナグマはクマではありません』によると、
・頭胴長は♂63〜70cm、♀は56〜61cm。(裏表紙より引用)

・♀は生後1歳で成長が止まり、全長は74cmになり、♂は生後2歳まで成長するので♀よりも体が大きく、研究によると平均値は全長79cmになります。(p19より引用)


・アナグマは一妻多夫制の乱婚型で、♂は子育てには関わらず♀だけが行ないます。(p18より)

・お母さんは穴掘りには消極的。息子にまかせっきりです。掘削作業は♂がすることがほとんどです。 (p24より)





 

↑【おまけの動画】 
早回し加工する前の等倍速動画をご覧になりたい方のために、ブログ限定で公開しておきます。


【追記】
アクセストレンチの作り方について。

熊谷さとし、安田守『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』(2011年)によれば、
アナグマは、前脚でトンネルを掘り進むと、中でUターンして土を外に押し出す。そのため、巣穴の入口に土を押し出した跡が溝状(トレンチ)に残る。これは「アクセストレンチ」と呼ばれ、アナグマの巣穴か判断するポイントになる。 (p69より引用)

下線部について、私の観察結果と明らかに異なります。

増補改訂版で書き換えられているかどうか、気になります。

熊谷さとし氏は他の著作でも繰り返し書いています。

例えば、熊谷さとし『動物の足跡学入門』(2008年)によると、

アナグマは中に入り込んで方向転換をし、両手で土を外に押し出すのだ。この時の両手の跡がミゾになる。

アナグマは、掘った土を前足で押し出すためにアクセストレンチ(溝)ができる。(p161より引用)

地域個体群によってアナグマの穴掘り行動が違うのかもしれないので、古い本をわざわざ持ち出して熊谷さとし氏を攻撃したり糾弾したりする意図はもちろん私にはありません。
アナグマ関連の書籍がほとんど無かった時代には、(たとえ不完全でも)観察の指針を示してくれる本は非常にありがたかったです。
若輩者があえて苦言を述べさせてもらうならば、穴掘り行動を直接観察してないのに痕跡から推理しただけなら、断定しないで、そのように明記して欲しいです。
アナグマが土を巣内から押し出している様子を示すイラストがもっともらしく添えられているのは、問題がある(誤解を招く)と私は思います。(想像図なら、そのように明記するべき)
ある著作物に刺激・影響を受けた次世代による調査研究によって古い情報が新しく修正されていくのは、自然科学のあるべき姿です。
私のブログもおそらく間違いがいくつも含まれているでしょうし、誰かに指摘されて修正・訂正されていくはずです。


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2024/02/27

ニホンアナグマのヘルパー♂は母親♀と相互毛繕いするだけで育児を手伝わない:6/13一夜の諸活動【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月中旬

新旧2台のトレイルカメラで別アングルからニホンアナグマMeles anakuma)の営巣地(セット)を監視しています。 
母親♀がとある一夜(6/13)に巣外で幼獣4頭の世話をする様子をまとめました。 
この日はヘルパー♂も登場します。

夜のアナグマは巣外に出て2つの巣穴LRをうろうろと行き来しています。 
巣内でつながっているはずなのに、なんでそんなことをするのか不思議です。
日によって状況は変わりますが、6/13の時点では、巣穴Rは母子が暮らす育児部屋として使われていて、巣穴Lにはヘルパー♂が住んでいると映像から推測できました。 
巣穴の内部構造を素人がどうやって確かめたらよいか分かりません。 
非破壊検査の地中レーダー探査とかやれば、中に住むアナグマに影響を与えずに巣穴の構造を知ることができるのかな?

梅雨の時期なので、断続的に雨が降ります。 
巣外のアナグマはときどき身震いして濡れた毛皮の水気を切るだけで、雨をほとんど気にせずに活動しています。(同じ日の雨夜に幼獣を外に連れ出す動画はこちら。) 

夜行性のアナグマは明るい昼間は巣内で寝て、夕方に暗くなってから巣外活動を再開します。
(日の入り時刻は午後19:05) 

午後18:06〜・気温23℃(@2:38〜) 
久しぶりに成獣2頭(母親♀とヘルパー♂)が同時に巣外に出て、挨拶代わりの相互毛繕いをし始めました。 
日没前の林床は薄暗いですが、辛うじて自然光下で撮影できました。 
乳首または陰茎が見えないと個体識別できないのがつらいところです。 
なんとなく、巣穴Lに近い方がヘルパー♂で、巣穴Rに近い方が♀ではないかという気がします。 
途中から、巣口Rに計4頭の幼獣たちが出て来ました。(@4:38〜) 
巣口Rのアクセストレンチは傾斜が急すぎて、幼獣はまだ自力では登れないようです。 
幼獣が勝手に外に出れないように作られてあるのでしょうか? 
それとも逆に、幼獣にとってバリアフリーとなるように巣口Rのアクセストレンチをなだらかにする工事をこれからするのかな? 

ヘルパー♂との相互毛繕いを終えた♀が巣口Rに戻って、幼獣の毛皮を舐めてやります。 
巣口Rに戻った成獣の腹面にようやく乳首が見えたので、私の予想通り♀と判明しました。(@5:24〜) 
ヘルパー♂は一旦、巣穴Lに戻りました。(@5:30〜) 

母親♀は独りで奥の林縁に座り、仰向けで毛繕いしています。 
巣口Rからようやく幼獣が1匹ずつ外に登ってきて、母親の元へ辿り着きました。 
幼獣は邪魔な落枝を乗り越えるのに苦労しています。 
♀は労をねぎらうように幼獣の体を舐めてやります。 
♀が前から来た幼獣とすれ違う際に跨いで尻を軽く擦り付けました。(アロマーキング@9:20〜) 
勝手に巣穴Lに入ってしまった幼獣の首筋を咥えて外に連れ戻しています。 
再び幼獣にアロマーキング(@11:04〜)。 
ようやく全ての幼獣を巣穴Rに連れ戻すと、♀は独りで巣穴Lへ入りました。 

再びヘルパー♂と♀の成獣2頭だけが巣外に出てきました。(@12:13〜) 
アクセストレンチLに仲良く並んで座り、相互毛繕いを始めました。 
アナグマの社会にヘルパー制度があると知らないでこの光景を見たら、一夫一妻制で仲の良い♀♂つがいだなと思ってしまいますね。 
春の交尾期の様子を観察すると、アナグマが一夫一妻制でないのは私でも分かります。
もう相当暗くなったのに、新機種のトレイルカメラがなぜか赤外線の暗視モードに切り替わってくれません。 
仕方がないので、動画編集時に強引に明るく加工しました。 
画質が粗くなるのは仕方がありません。 
別アングルに設置した旧機種では暗視モードで録画できています。 

ようやく♀が別れて入巣Rしました。 
ヘルパー♂だけが巣外に残り、痒い体を掻いたり自分で毛繕いしたり、のんびり過ごしています。 
しばらくすると、ヘルパー♂も入巣Lしました。 
すぐにまた出巣Lしました。 
実はこの後で、ヘルパー♂は巣口Rを掘り広げる工事を始めました。 

すっかり暗くなると(晩に)、巣口Rから母子が外に出て来ました。 
♀から幼獣へ対他毛繕い。


ヘルパー♂が育児(幼獣への対他毛繕いなど)を直接的に手伝っている様子を私はこれまで一度も見たことがありません。 
(個体識別が不完全なせいで見落としているのかと不安になります。)
むしろヘルパー♂であっても幼獣には触れるのも近づくのも母親♀が決して許さず神経質に守っているのかもしれません。 
真っ暗な巣内ではヘルパー♂も育児を分担しているのかな?
ファイバースコープを巣内に突っ込んで観察してみたいのですが、育児期間中に下手なことはしない方が良さそうです。
ヘルパー♂が♀に餌を持ってきて給餌する様子も見たことがありません。
ヘルパー♂が用心棒としての役目を果たしている様子も見たことありませんが、営巣地の周辺に排尿マーキングして歩くだけでも、縄張り防衛になっているのかもしれません。
何が言いたいかというと、アナグマのヘルパー♂は穴掘り以外で♀の育児をほとんどヘルプしていないのに、果たしてヘルパーと呼んで良いのかどうか疑問になってきました。
ヘルパー♂の貢献度に個体差があるのかな?(年によって違うのか?)



※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 




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