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2023/12/10

朽木に止まったコゲラの鳴き声♪と飛び立ち(野鳥)

 

2023年5月上旬・午後14:10頃・くもり 

平地の池のほとりで啄木鳥がドラミングする音を聞きました。 
ドラミング音のする方へそっと近づくと、花盛りのウワミズザクラ樹上からコゲラDendrocopos kizuki)が飛び去り、 少し離れた朽木の天辺に止まり直しました。
 (映像はここから。) 
 同一個体なら♂ということになる。 
コゲラ♂は朽木を嘴で軽くつついてから、チッチッチッ♪と甲高い声で鳴き出しました。 
初めて聞く鳴き声で、カワセミの鳴き声を連想しました。 

やがて朽ち木から飛び立つと、私の方へ向かって波状に飛んで来ました。 
1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
飛翔シーンを正面から撮れたのは珍しいです。 

※ 動画編集時に逆光補正を施しています。


コゲラの鳴き声を声紋解析してみる

いつものように、撮影した動画ファイルから音声パートをWAVファイルとして抽出し、鳴いている部分を切り出してからスペクトログラムを描いてみました。
キキキキキキキキ♪と8回連続で鳴いています。



日本の野鳥さえずり・地鳴き図鑑』を紐解くと、コゲラのキッキッキッキ♪という鳴き方は地鳴きと分類されていました。
その他:くちばしで幹を叩きコロロロという音を出すドラミング(さえずり的な機能をもつ) 
地鳴き:ギィーギィー、とかキッキッキッキと鳴く。 (中略)鳴き声が似ている鳥は特にいない。( p16より引用)

ところが他の資料では、さえずり的な縄張り宣言とされています。 
例えば wikipediaでコゲラを調べると、
つがいや家族がいっしょにいることが多く、お互いの確認をするため「ギー、ギー」という声を出す。なわばりの主張や、遠方への自分の位置の伝達、巣立ったヒナが親鳥に給餌をねだるときなどには、「キッキッキ」という強い声を出す。嘴で木を強く連続して叩いて音を出すドラミングも行う。ドラミング音は、アカゲラなどの大型のキツツキに比べ小さく短い場合が多い。
バードリサーチニュースの「野鳥生態図鑑」によると、
コゲラもドラミングをするが,多くの場合その音はかなり控えめ(約0.4秒間に10回程度で音も小さい)で,遠くまで届かない.その代わり,キッキッキッキという声を張り上げ,この声は遠くまで聞こえるので,アオゲラのピョーという声と同じようにこの声がドラミングの代わりになわばり宣言などの機能を持っていると考えられる.キッキの声は,強く主張する場合の声で,雛が餌をねだるようなときにも,この声に似た声を出すことがある.

2023/10/17

春の池で泳ぐコガモ♂の鳴き声♪(冬の野鳥)

 

2023年4月上旬・午後17:35頃・晴れ 

西日が射す夕方の溜池からピリリ、ピリリ♪と物寂しげな呼笛(または鈴?)のような甲高い鳴き声がするので鳴き声の主を探すと、渡去前の冬鳥コガモ♂(Anas crecca)が水面を遊泳していました。 
1羽に注目してズームインしましたが、嘴の動きを見ると、どこか近くに居る別個体と鳴き交わしているようです。 
コガモ♂の鳴き声は図鑑によって
・♂は「ピッピィー、ピッピッ」と笛のような高い音を繰り返す。(決定版『日本のカモ識別図鑑』p131より) 
・ピリッピリッ(♂)(『色と大きさでわかる野鳥観察図鑑』p159より)
などと聞きなしがされています。 
鴨の鳴き声の中でも私の好きな美声です。 
この池では常連である留鳥カルガモAnas zonorhyncha)が鳴くガーガー♪という濁声とは全く違います。 

コガモ♂が足の水かきを使って水面を遊泳すると、池に波紋が広がります。 
水面に浮かぶ小さな虫?をときどき啄みました。 
池畔からカメラを向ける私を警戒して遠ざかり、岸辺に広がる枯れたヨシ原の方へ移動しました。 

そこへ左から1羽のカルガモが登場。(@1:28〜) 
水上でニアミスしても互いに無関心でした。 
コガモは日本最小の鴨らしく、確かに体格はカルガモ>コガモでした。 
平地にある溜池の岸辺の残雪はすっかり消えていました。 

※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


せっかくなので大好きなコガモ♂鳴き声の声紋解析を試みてみたものの、風切り音のノイズが酷くて、きれいなスペクトログラムが得られませんでした。







2023/09/05

キジ♂が雪原を闊歩しながら初鳴き♪(冬の野鳥)ぐぜり?警報鳴き?

 

2023年2月下旬・午後14:25頃・晴れ 

雪で埋もれた郊外の畑からケッケッケ…♪という鳴き声がします。 
鳴き声の主はキジ♂(Phasianus versicolor)でした。 
辺りをキョロキョロ見回しながら雪原をゆっくり歩き、ケッケッ♪と鳴き続けています。 
固く凍結した雪面に新雪がうっすらと積もっていて、その上にキジ♂の足跡が浅くきれいに残ります。 
雪原を横断したキジ♂は、無雪の車道に降りたようですが、住宅地の死角に消えて見失いました。 

これが今季のキジの初鳴きでした。 
雪国の厳しい冬が終わりを迎え、これからキジの繁殖期が始まります。 
ケッケッケッ♪と繰り返す鳴き方はあまり聞いたことがありませんが、いかにも不完全で下手糞な鳴き方です。 
ケンケーン♪と本格的に鳴いて縄張り宣言する前に、鳴き方を練習しているのでしょう。 
日照時間が長くなり、衝動の高まりで鳴き始めた、というべきでしょうか。 
あるいは変声期の若鳥♂なのかな? 
ある種の若鳥や繁殖期以外の成鳥が出す不規則な小さな鳴き声を「ぐぜり」と呼びます。 


【追記】
この奇妙な鳴き方について、キジの専門家が別の見解を示している記事を見つけました。
WEB版よりもPDF版の方が詳細に記述されています。)
林暁央「バードリサーチニュース 生態図鑑 キジ」Bird Research News Vol.14 No.1 2017.1.5.より引用
ケッケッケッ(警報鳴き・Alarm call):他の雄がなわばりに侵入した時や危険な状況になった時に鳴く. 
言われてみるとそうかもしれませんが、今回の動画を見て分かるように、撮影時には手前の立木のせいで私の視界が限られていました。
被写体となったキジ♂の視線の先に別個体♂がいたかどうか見定められませんでした。
また、キジ♂の足取りがゆっくりしていたので、リラックスしている(危険を感じていない)と判断しました。
もし危険を感じたら、走ったり飛んで逃げたりするはずです。

という訳で、素人ながら私の「ぐぜり説」も今のところ捨てがたいので、両論併記しておきます。

繁殖期のキジ♂がケンケーン♪と鳴きながらドドドド♪と力強く羽ばたく母衣打ち(ドラミング)を専門家は囀りさえずりとは言わないそうです。
そもそもキジはキジ目に属し、歌わない鳥に分類されています。
♂が歌う(囀るさえずる)鳥はスズメ目(鳴禽類)に属する小鳥たちです。
キジ♂の母衣打ち行動は、雛や幼鳥の時期に見聞きして学習する必要がない本能行動です。
ということは、ケンケーン♪という鳴き声は「ぐぜり」で自主練する必要がないかもしれません。
つまり、ケッケッケ…♪という未熟な(下手糞な)ぐぜりを経てケンケーン♪という勇壮な鳴き方になる、という私の仮説は怪しくなりました。
この点に思い至り、急に「ぐぜり説」への自信がなくなってきました。
キジ♂を雛から育ててみれば鳴き方の変化を検証できるはずですが、残念ながら野鳥の飼育は法で禁じられています。
もし「ぐぜり説」が正しければ、この時期にあちこちで同様の鳴き声が聞こえるはずです。

キジ♂のぐぜり?を声紋解析してみる

いつもの手順で、オリジナルの動画ファイルから音声をWAVファイルに抽出してから、ノイズの少ない部分を適当に2箇所切り出し、スペクトログラムを描いてみました。





2023/07/05

ヒグラシ♂の鳴き声♪を声紋解析してみる

 

2022年7月中旬・午後13:25頃・晴れ 

里山の水場近くでスギと雑木の混交林から聞こえるヒグラシ♂(Tanna japonensis)の蝉時雨せみしぐれを動画で録音してみました。 
単独個体の鳴き声ではなく複数個体が鳴き交わしている合唱です。 
アマガエルや野鳥の鳴き声もかすかに聞こえます。 

ヒグラシ♂の鳴き声を声紋解析してみる

オリジナルの動画ファイルから音声パートをWAV形式で書き出してから、「カナカナカナ…♪」とひときわ盛り上がった部分2箇所を切り出し、スペクトログラムを描いてみました。 
3つ目の短い声紋は、近くで「ジジジ…♪」と鳴いた声です。(@0:21〜) 
警戒声というよりも、何か身の危険を感じて飛び去る際の遭難声(distress call)だと思います。

2022/11/18

アカマツの樹上から聞こえるニイニイゼミ♂の鳴き声♪を声紋解析してみる

 

2022年7月中旬・午後15:25頃・晴れ 

里山で幅広い稜線を下山していると、アカマツの樹上からチィー♪というニイニイゼミ♂(Platypleura kaempferi)の特徴的な鳴き声が聞こえました。 
今回も鳴き声の主を見つけられませんでした。 (悔しいことに、セミプロじゃない私は一度も鳴いているニイニイゼミの姿を見つけたことがありません。) 
ニイニイゼミの体色は、木の幹に止まると見事に紛れる迷彩色になっています。 
近寄ってじっくり探そうとすると、警戒して鳴き止んでしまいます。 
仕方がないので、アカマツを見上げて鳴き声だけ採集(録音)しました。
耳を澄ますと、遠くでウグイス♂もかすかに鳴いていますね。

ニイニイゼミ♂の鳴き声を声紋解析してみる

オリジナルの動画ファイルから音声パートをWAVファイルに抽出してから、ノイズの少ない冒頭部を切り出してスペクトログラムを描いてみました。
音程が途中から上がります。
野鳥の囀りとは違い、きれいな倍音構造は認められませんでした。




 

↑【おまけの動画】 
「松尾芭蕉の詩が引き起こした蝉の大論争【ゆるむし学ラジオ】」

2022/10/20

ヒガシキリギリス♂の鳴き声♪を声紋解析してみる

 

2022年7月下旬・午前11:35頃・晴れ 

線路沿いの草むらからキリギリスの鳴く声がします。 
鳴き声の主を探すと、 ススキの生い茂る草むらの中にヤブカンゾウの群落があり、天辺のつぼみヒガシキリギリス♂(Gampsocleis mikado)が乗っていました。 
鳴いているキリギリス♂を見つけたのは初めてです。 
地上からの高さは目測で110cmぐらいでした。 

翅の動きに注目すると鳴き声と一致するので、この個体の鳴き声で間違いありません。 
ときどきチョン♪と鋭く鳴くときの翅の動きが顕著です。 
近くにいるらしい別個体♂と交互に鳴き交わしているようです。 
鳴き続けるのも激しい運動なのか、腹部を伸縮させて腹式呼吸しています。
近くの車道をひっきり無しに通る車の走行音がうるさいのに、キリギリス♂は周囲の雑音に負けじと平気で鳴いています。 
気温を測り忘れました。
・オスは前翅に発音器をもち、 
・成虫は夏に現れ、草むらなどに生息して他の昆虫などを捕えて食べる。鳴き声は「ギー!」と「チョン!」の組み合わせで、普通は「ギー!」の連続の合間に「チョン!」が入る。(wikipedia:キリギリスより引用)

自然の観察事典40『鳴く虫観察事典』によると、  
♂のキリギリスの前羽を調べてみると、羽のつけ根の部分だけが、背なかの上で重なりあうようになっています。この部分の左前羽の裏側には、太い翅脈に小さな歯がならんだヤスリがあります。そして右前羽の表側には、羽のふちの近くにまさつ片とよばれるかたい突起があります。キリギリスが羽をふるわせるたびに、重なりあった羽の部分で、まさつ片がヤスリをこすり、音を発生させます。発生したこの音を、膜状の発音鏡でさらに大きくして、キリギリスは、野原に大きな声を響かせるのです。(中略) 超音波をふくむ高い音波は、葉や枝に反射して遠くまでとどきません。そのため、キリギリスの♂たちは、繁った葉がじゃまにならないように、高い茎や枝にのぼって鳴きます。(p5より引用)


ヒガシキリギリス♂の鳴き声を声紋解析してみる 

いつものようにオリジナルの動画ファイルから音声をWAVファイルとして抽出し、なるべくノイズの少ない部分※を適当に切り出してからスペクトログラムを描いてみました。 
「チョン、ギー♪」から始まり、後半はなぜかチョン♪が省略されています。 
鳥の囀りさえずりとはまるで異なり、声紋にきれいな倍音構造は認められません。 
(※ 車の往来が途切れたときでも、風切り音が混じったり、歩行者の足音が聞こえたり、近くの町工場から出るノイズが混入したりしています。) 
音質にこだわるのなら、採集して飼育下で静かな深夜に録音するしかなさそうです。
つづく→ 鳴きながら脱糞するヒガシキリギリス♂


以下の写真では、発音器の前翅を激しく動かしている写真をあえて選んで掲載します。

2022/09/03

水場の周囲の森に響くアカショウビン♂のさえずり(野鳥)

 

2022年7月上旬・午後15:35頃・晴れ 

トレイルカメラの電池を交換するために山中の泉に行くと、周囲の森(スギと雑木林の混合林)からアカショウビン♂(Halcyon coromanda major)が鳴く声が響き渡りました。 
美声でキョロロロロ…♪と音階が下がる特徴的な鳴き方です。 
どこで鳴いているのか、姿を見つけることはできませんでした。 
複数個体♂が縄張り宣言で鳴き交わしているように私は聞こえたのですけど、どうでしょうか? 

関連記事(1年前の撮影)▶ アカショウビン♂のさえずり♪(野鳥)

アカショウビン♂の囀りさえずりを声紋解析してみる

いつものようにオリジナルの動画から音声をWAVファイルに抽出してからクリアに鳴いている部分を適当に切り出し、スペクトログラムを描画してみました。
尻下がりの声紋が繰り返されています。




※ 動画編集時に音声を正規化して音量を上げています。 

もしかすると、アカショウビンは水場のオタマジャクシを捕食しに来るのではないか?と思いつきました。 
果たしてトレイルカメラで狩りの瞬間が撮れるでしょうか? 
果報は寝て待つことにしましょう。


2022/09/01

夕方のスギ山林に響き渡るツツドリ♂のさえずり♪(野鳥)

 

2022年6月下旬・午後17:20頃・くもり 

夕方に杉林の山道を歩いていると、急にツツドリ♂(Cuculus saturatus)が鳴き始めました。 
ポポ、ポポ、ポポ…♪と単調に繰り返しています。 
照度が下がり、夕方のコーラスタイムになったのでしょう。 
ちなみに、この日の日没時刻は午後19:06ですが、山の東側斜面では太陽が山の端に隠れてしまうとすぐに薄暗くなります。 
どこで鳴いているのか、ツツドリ♂の姿を見つけられませんでした。 
ツツドリはカッコウの仲間ですから、♀は托卵します。
その様子をいつか観察してみたいのですが、まずは山林で宿主の鳥の巣を見つける必要があります。

関連記事(4年前の撮影)▶ 柳でイモムシを捕食するツツドリ(野鳥)


ツツドリ♂の囀りさえずりを声紋解析してみる

オリジナルの動画から音声をWAVファイルに抽出し、スペクトログラムを描いてみました。
集音マイクを使っている訳ではないので、他種の野鳥の鳴き声のきれいな声紋の方が目立っています。



松田道生、蒲谷鶴彦『野鳥を録る―野鳥録音の方法と楽しみ方』によると、
・低い声のツツドリのさえずりは400Hzに、音の中心があり一定していることがわかります。
・ツツドリの声紋は400Hzの低音域で、一本調子に2声ずつ鳴いている。(p206、p208より引用)

2022/06/15

ベニマシコ♂の地鳴き♪を声紋解析してみる(冬の野鳥)

 

2021年12月下旬・午後13:00頃・くもり

湿地帯に生えた落葉樹(おそらくハンノキまたは柳?)の梢にベニマシコ♂(Uragus sibiricus)が止まり、小声でフイッ、フイッ♪と繰り返し鳴いていました。 
忙しなく左右をキョロキョロ見回しながら鳴いています。 
最後はヒッ♪と鳴きながら急に左下へ飛び去りました。 
飛び立つ瞬間を1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 
山形新聞社『やまがた野鳥図鑑』p167には「ベニマシコが飛び立つ時には「プルルッ」とやや大きい羽音を出す」と書いてあったのですが、今回撮れた映像で羽音は特に聞き取れませんでした。 

※ 動画編集時に逆光補正と音声の正規化を施しています。
逆光で曇り空を背景にほとんどシルエットしか写ってなかったのですが、逆光補正したらベニマシコの美しい紅色が見えるようになりました。

関連記事(5年前の撮影)▶ 倒木で鳴く♪ベニマシコ♂(冬の野鳥)

 

ベニマシコ♂の地鳴き♪を声紋解析してみる 

オリジナルの動画ファイルから音声をWAVファイルとして抽出し、スペクトログラムを描いてみました。 
音声編集アプリAudacityを久しぶりに起動したら、最近アップデートしたのか使い勝手がなぜか変わっていて、冒頭の不要部分(カメラのズームインのノイズ)をカットできませんでした。



2021/11/08

クリの灌木で鳴くエゾゼミ♂を声紋解析してみる

 

2021年8月下旬・午前11:30頃・晴れ 

里山の尾根道を歩いていたら近くでセミが喧しく鳴く声がするので主を探すと、若いクリ(栗)灌木の細い枝に下向きに止まっていました。 
現場は標高562m地点で、地上からの高さ〜3.5mの地点にセミが止まっています(目測)。 
逆光なのでストロボを焚いて(日中シンクロ)写真に撮ると、その正体はエゾゼミ♂(Lyristes japonicus)でした。 
周囲に灌木の枝葉が生い茂り、その隙間から撮影アングルを確保するのに苦労しました。 

周囲で鳴く同種♂の声に負けじと、ジー♪(またはギー♪)と単調に鳴き始めました。 
メロディが全く無く、情緒の欠片もありません。
側面から♂の発音器官である腹弁が見えます。 
ジー♪と単調に鳴いている間は腹部を上下に動かしています。 
腹弁の振動は動画からは確認できませんでした。
口吻を枝に突き刺して吸汁しておらず、鳴くことに専念しています。 
疲れたのか鳴き止むと、腹部も動かなくなりました。 

保育社『検索入門:セミ・バッタ』p28によると、エゾゼミの鳴き声はギィーーと連続音で、終奏音が断続的になるのがアカエゾゼミとは違う特徴なのだそうです。 

しばらく見守ってもエゾゼミ♂はクリの木から飛び立たず、私は諦めて立ち去りました。 

エゾゼミ♂の鳴き声を声紋解析してみる 


いつものように、オリジナルの動画ファイルから音声をWAVファイルとして抽出してからノイズを除去しました。
鳴いている部分(鳴き初めから鳴き終わりまで)の約30秒間を切り出し、スペクトログラムを描いてみました。 
鳥の鳴き声の美しい声紋とは全く異質ですね。


関連記事(同時期の撮影)▶ ミズナラの枝で鳴くエゾゼミ♂♪


2021/10/19

滑翔するノスリの鳴き声♪を声紋解析してみる(野鳥)

 

2021年7月下旬・午後12:15頃・晴れ 

山麓の林道を私が歩くと、ノスリButeo japonicus)がピーピー♪と甲高く鳴きながら私の頭上の青空を旋回し始めました。 
林の中に居るらしいもう1羽と鳴き交わしているようです。 
営巣地の本命はこの辺りなのかもしれません。 
スギ林の上空を羽ばたくことなく、ぐるぐると滑翔しながら鳴き続けています。 
逆光でも翼の下面にノスリ特有の斑紋(翼角に黒斑)がしっかり見えました。
個体識別できていませんが、おそらく私と顔馴染みの同一個体が警戒の鳴き声を発しているのでしょう。
関連記事(1ヶ月前の撮影)▶ 対人威嚇の波状飛翔ディスプレイを繰り返しながら鳴くノスリ(野鳥)
以前に聞いた威嚇ディスプレイ飛翔の際の鳴き声と音程が明らかに違います。 
この違いは威嚇する親鳥の切迫度の違い(文脈の違い)によるものなのか、それとも巣立った幼鳥など別個体の鳴き声なのかもしれません。 



 『フィールドガイド日本の猛禽類vol.04ノスリ』によると、
 ノスリはサシバと同様によく鳴く鷹で、最もよく効かれるのは「ピーエー」や「ピィー」と強く鳴く声である(鳥との距離によっては「ヒャー」あるいは「ピャー」と聞こえる)。この声は1年を通して成鳥、幼鳥とも飛びながら発することが多く、その意味は鷹や人などの外的に対する威嚇や興奮である。(p3より引用)
山渓カラー名鑑『日本の野鳥』によれば、
割合によく鳴く鳥で、繁殖期には巣の上やその付近で「ピィーヨ」とか「ピィヨー」と優しい声で鳴く。また、飛翔中には「プィヨー」と少し調子を変えた声で鳴くこともある。なお、トビの声に似た鳴き声を聞いたという記録もある。(p152より引用)

 

※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。

林道を更に少し進んだ所にある、いつもお気に入りの止まり木(スギ樹冠)に今回ノスリは居ませんでした。 
 

帆翔するノスリの鳴き声を声紋解析してみる 

絶対音感が無い私でも鳴き声を比較できるように、スペクトログラムを描いてみましょう。 
まずいつものように、オリジナルの動画ファイルから音声をWAVファイルに抽出します。 
周囲の山林で絶え間なく鳴いているニイニイゼミ♂(Platypleura kaempferi)の蝉しぐれ♪でかき消されそうなので、そのピンクノイズを音声編集アプリのAudacityで除去します。 
ノスリが鳴いている部分を適当に切り出してから、スペクトログラムを描いてみました。

2021/10/04

ノスリが樹上で鳴き交わす声を声紋解析してみる(野鳥)

 

2021年7月中旬・午後14:45頃・晴れ
前回の記事(15日前の撮影):▶ スギ樹冠で鳴き続ける♪ノスリ(野鳥)

山麓でスギ(杉)の梢に止まっていたノスリButeo japonicus)が、林縁を歩いて来る私の姿を遠くから目敏く見つけると警戒し、ピーエ、ピーエ♪と甲高い声で鳴き始めました。 
この辺りを縄張りとしている(おそらく近くで営巣している)ペアのうちの1羽がお気に入りの止まり木で周囲を見張っているのです。 
冒頭のシーン(@0:00 〜 0:25)ではニイニイゼミ♂(Platypleura kaempferi)たちがチー…ジー…♪と絶え間なく鳴き続ける蝉しぐれ♪がうるさいのですが、耳を澄ますとノスリの鳴き声も聞こえます。 

 ※ 動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 

嘴の動きと鳴き声が同期しています(リップシンクロ)から、この個体の鳴き声で間違いありません。 
ただし、初めは被写体まで遠いので、鳴き声が少し遅れて届きます。 

止まり木にもう少し近づいて撮影してみましょう。 
ノスリは樹冠で少しバランスを崩しかけたものの、なんとか体勢を立て直しました。 
嘴を大きく開けて鳴く際に、口内が少しピンクに見えました。 

私は未だ自信を持って個体識別できないのですが、同じ止まり木で鳴いていた前回の写真と見比べると別個体のような気がします。 
ただし、撮影した時間帯が違うので、光の当たり方で羽の色の印象が異なって見えるだけかもしれません。 (前回は夕日を浴びていた)

単独で鳴いていた前回と異なり、今回は近くにいる別個体とピーエ、ピーエ♪と鳴き交わしていました。 
もう1羽がどこにいるのか、残念ながら見つけられませんでした。 
おそらくつがいのパートナーではないかと思うのですが、巣立った幼鳥かもしれません。 
幸い後半はニイニイゼミの合唱(蝉しぐれ)があまり聞こえなくなりました。 
単調な鳴き声でも2羽の音程が微妙に違う点が興味深く思いました。 
被写体のノスリは、少し低い音程で鳴いています。 
ノスリは一般的に体格が♀>♂らしいので、鳴き声の音程が違っても不思議ではありません。 
逆に、今後は鳴き声の音程から個体識別できるかもしれません。  

撮影後に私が横を通り過ぎるとノスリは鳴き止みました。 
今回は私を追いかけてきたりディスプレイ飛翔で威嚇してくることはありませんでした。 
もうお互いに顔馴染みなので、私のことをある程度は信頼してくれているようです。

実はもう1羽が近くの灌木林に潜んでいて、私が知らずに横を通りかかると慌てて飛び去りました。 
その辺りに営巣木があるのかな?(要確認) 
もう1羽を動画に撮り損ねてしまったのが、残念無念。 
フィールドでこうした突発的な出来事にも対応するには、常に動画を撮り続けながら行動しないといけません。
ドライブレコーダーのように1人称目線で記録できるアクションカメラが欲しくなります。

ノスリの鳴き交わす声を声紋解析してみる

オリジナルの動画ファイルからいつものように音声をWAVファイルとして抽出し、鳴き交わしている部分を適当に4ヶ所切り出してからスペクトログラムを描いてみました。





風切り音のノイズが混入したり、背後でシジュウカラ?が鳴いていたりしたのですが、意外にきれいな声紋が得られました。
動画の被写体となった個体をAとして、少し離れたところで鳴いている別個体をBと呼ぶことにします。
ABAまたはABの順で鳴いている声紋です。
ピーエ♪と尻下がりで鳴く度に「へ」の字の形で記録されています。
近くで鳴いているAの方が鳴き声の倍音構造(への字が縦に重なる)が明瞭に描かれていました。
2羽の音程の違いが「へ」の字が描かれる位置の高低で示されると期待したのですが、意外にも素人目には違いがよく分かりませんでした。
それよりも興味深いことに、個体Bが鳴いた声紋の倍音構造がAよりもシンプルでした。
(下から2番目の約4kHz成分がBでは抜け落ちています。)
絶対音感が無くて音響学の用語を知らない私には、緻密な記述ができません…。
Bが少し遠い所で鳴いているせいだけではない気がします。
もしもノスリAとBがいつも決まってこのように鳴くとすれば、声紋から個体識別できそうです。
♀♂番の性別による違いなのか、それとも声変わり前後の違い(幼鳥→成鳥)なのか、いずれにせよ面白いですね。
あるいは、鳴き声に込められた意味・文脈によって違うのかもしれません。
とりあえず、見た目でもノスリを個体識別できるようにならないといけません。

【追記】
15日前に全く同じ止まり木の梢で私に対して警戒声を発していた個体の鳴き声も声紋解析してみたところ、Aと同じパターンでした。


2021/09/13

餌乞いで鳴く♪モズの幼鳥(野鳥)

 

2021年7月上旬・午前11:35頃・くもり 

民家の裏庭を囲む板塀の天辺にモズLanius bucephalus)が独り止まっていました。 
横を向いた時に下嘴が黄色っぽく、過眼線が薄いことに気づきました。 
どうやら幼鳥のようです。
モズらしく尾羽を上下に動かしています。 
親鳥が巣外給餌に来てくれるまでおとなしく待っているのでしょう。
ときどき首を傾げてみせる仕草が可愛らしいですね。 
モズ幼鳥が見下ろす視線の先には生ゴミを処理するコンポスト容器が置いてあるので、その周囲を飛び回るハエなどに興味を示しているのかもしれません。 

前半は静かにしていたのですが、しばらくするとモズ幼鳥は半開きにした翼を細かく震わせながらキチキチキチ…♪と鋭く鳴き始めました♪(@1:38) 
おそらく近くに飛来した親鳥を見かけた幼鳥が餌乞いを始めたのでしょう。 
嘴の内部は鮮やかな赤色で、橙色で縁取られています。 
いよいよ巣外給餌のシーンを観察できるかと期待したのですが、モズ幼鳥は鳴きながら飛び去ってしまいました。 
隠し撮りしている私に気づいて警戒したのかな? 
餌乞い行動および飛び立ちを1/5倍速のスローモーションでリプレイ。 

モズ幼鳥の餌乞い♪を声紋解析してみる

いつものようにオリジナルの動画ファイルから音声をWAVファイルに抽出し、鳴いている部分を切り出してからスペクトログラムを描いてみました。




手元にある資料を調べても、モズ幼鳥(巣立ち雛)の餌乞い行動に関する解説は見つかりませんでした。 
日本の野鳥さえずり・地鳴き図鑑』でモズを調べると、
地鳴き:ギチギチギチなどと鳴く。 巣立ちビナがいるあたりに人やネコ、カラスが近づくと、ギチギチとうるさく鳴き騒ぐ。(p34より引用)
唐沢孝一『モズの話:よみもの動物記』という本によると、
えさねだり行動はまれで、むしろ(幼鳥同士の:しぐま註)排他的行動が目立つ。1羽の幼鳥の止っている背後から襲いかかるように飛びつくシーンとか、他の1羽を7〜8mも追いかけるのもみられる。つつき合ったり、弱い声ではあるがギギギ…といった威嚇音も発し、秋の高鳴きのころのなわばり争い行動を感じさせる。(p177より引用)
一人前になるにつれて攻撃性が高まり排他的傾向が強まり、幼鳥の群は解体し、分散してしまうようである。  巣立った幼鳥たちは、ほんの2週間くらい親子の生活を送り、親の方から子離れして姿を消してしまう。残された幼鳥たちは、群れたり、追い合ったりしながら次第に狩りのテクニックやはやにえ行動を自得していく。 (p179より引用)

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