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2024/03/18

つづら折れの山道に座り込んで休むニホンカモシカ♂がどいてくれるまでひたすら待つ

 

2023年7月上旬・午後13:20頃・くもり 

里山の急斜面をつづら折れの細い山道を辿って静かに下山していると、前方にニホンカモシカCapricornis crispus)を発見。 
どうやら最近、この山道の左右を誰かがきれいに草刈りしたばかりのようです。 
その山道でカモシカが立ち止まり、毛繕いしていたようです。 
ズームインしてみると、つづら折れの曲がり角でカモシカが向きを変えた際に、股間に睾丸が見えたので♂と判明。
角や耳介にこれと言って特徴はありませんが、すっかり顔馴染みになった♂個体でした。 

こちらを見上げたのに、逃げ出すこともなく、落ち着き払っています。 
私の方が少し高所にいるのに、警戒する素振りを見せませんでした。 
野生のカモシカにしてはあり得ない振る舞いです。
山中でカモシカを追いかけると、最後には上へ上へ逃げますから、敵を見下ろす位置の方がカモシカとしては落ち着くようです。
外敵が急斜面を駆け下りながら襲ってくる方が怖いのでしょう。
近視で私の姿がよく見えてないだけかもしれません。 

カモシカ♂は左耳の裏が痒いらしく、左後脚の蹄で器用に掻きました。 
身震いしてペロペロと舌舐めずりしながら、またこちらを見ました。 
次は体を曲げて、左の脇腹を舐めました。 
吸血性の昆虫に刺されて痒いのでしょう。 

ようやく、ゆっくりと歩き出して、右カーブを曲がりました。(@0:31〜) 
手前に自生するユキツバキ群落の死角に入ると、一旦立ち止まってブルブルッと身震いしました。 
そのままつづら折れの山道を歩き去ります。 
私が足音を忍ばせて追跡すると、次の曲がり角でカモシカ♂に追いつきました。(@0:56〜) 

意外にも、カモシカ♂は山道にどっかりと座り込んでいました。 
手前に自生する茂みの陰に隠れたつもりでいるようです。 
後ろ向きで座っているものの、横目で油断なくこちらの様子を伺っています。 
撮影アングルを確保するために、私が動画を撮りながら左にそっとずれたら、カモシカは気づいて振り返りました。 
私が少しずつ重心移動しても、うっかり枯れ葉を踏んでしまうと、その物音でカモシカに気づかれてしまいます。 
私は動きを止めて撮影に専念します。 

カモシカ♂の濡れた黒い鼻面がヒクヒクと動いています。 
いくらカモシカが近視でもさすがにこの近距離では私の姿は見えているでしょうし、私の体臭も嗅ぎ取っているはずです。 
「またお前か!」と認識しているようです。 
しばらくすると警戒を解いて、谷側に向き直りました。 
私を見上げようとすると、体をひねってかなり無理な体勢になるから疲れるのでしょう。 
それでも油断なく両耳をそばだてています。 

ヤブサメ♂(Urosphena squameiceps)という野鳥がどこか近くでシシシシシ…♪と鳴き始めました。(@1:18〜) 
ヤブサメ♂が断続的に鳴いている他、遠くからホトトギス♂やウグイス♂のさえずる声♪もときどき聞こえてきます。 

再び撮影アングルを確保するために、私が慎重に左へ移動する度に、カモシカ♂はすかさず振り返って見上げました。(@2:30〜) 
舌をペロッと出しただけで、顔の向きを谷側に戻しました。 
まるでカモシカ♂と「だるまさんが転んだ」をして遊んでいるようです。 
急斜面の山道で立ち止まって長撮りする私は足元が不安定なので、手足の筋肉が疲れてきます。 
カモシカを刺激したくないのはもちろんですが、足場が安定した地点まで隙を見て少しずつ移動したくてたまりません。 
(軽量化のために、この日は三脚を持ってきてませんでした。)
カモシカはもう振り返らなくなりましたが、私が左にそっと移動する度に谷側を向いたまま緊張して神経を研ぎ澄ませています。 
いざとなったらすぐに立ち上がって逃走する準備はできているのでしょう。 
山道に座ったまま居眠りすることはありませんでした。
私も突っ立ってないで、もしも山道に座って撮影したら、カモシカは安心して長居してくれたかな? (次回に試してみることにします。)

カモシカ♂が呼吸する度に胴体が膨張収縮を繰り返しています。 
胴体の皮膚の一部が不規則にピクピクッと動くのは、飛来する吸血性昆虫が体に止まらないように追い払う行動です。 
座っているカモシカの口元を見ても反芻していないということは、リラックス状態では無さそうです。 

山道に座って休むカモシカ♂の頭部に後方からズームインしてみても、傷や欠損はありませんでした。(@7:28〜9:00) 
木の幹でゴシゴシと角研ぎしたばかりなのか、細かい木屑(樹皮のカス?)が角の根元に付着しています。 

実は最近、同一個体のニホンカモシカ♂と出会った際には、私が山道を下から通せんぼした形になり、困らせてしまいました。 
関連記事(1ヶ月前の撮影)▶ 細い山道に座り込んで反芻するニホンカモシカ♂ 
このときは結局、カモシカ♂が山道から逸れて行き、私に道を譲ってくれました。 
そのときとは上下関係が逆転していて、今回は私がカモシカを見下ろす位置に立っています。 
実は同一個体のカモシカ♂がそのときのことを根に持って、私に対する仕返しとして山道を長時間塞いでいるのかもしれません。 (通せんぼ)
だとすれば、向こうも私を特定のヒトとしてしっかり個体識別した上で記憶し、少し意地悪な感情や悪戯心をもっていることになります。 
「やられたらやり返す。倍仕返しだ!」 
あるいは、山中でよく出会う私を人畜無害だと信頼してくれた上で、逆に興味津々で観察しているのかも知れません。 
少しずつ近づいてくる私の意図を察した上で、度胸試し(チキンレース)のつもりで座っているのでしょうか。 
私に対して鼻息を荒げる威嚇行動を一度もやりませんでした。 
野生動物に餌付けしなくても、長い年月をかけて信頼関係を築けばここまで近寄れるようになり、長時間観察できる、と身をもって証明できました。(「ヒト付け」という手法です)

座位休息しているニホンカモシカ♂のほぼ全身が見えるようになりました。 
カモシカの座った横の地面には、踏みしだかれた下草が見えます。 
周囲の葉に食痕は見当たりません。 
この山道は昼間も登山客の往来が少ないので、もしかするとカモシカの寝床(ねぐら)なのかもしれません。

遂に、カモシカ♂が前脚、後脚の順に立ち上がりました。(@12:00〜) 
このときも股間の睾丸を確認できました。 
私を振り返って見上げると、舌舐めずりしてから左脇腹を舐めました。 
次は右後脚の蹄の先で顎の下をそっと掻きました。 
こんな繊細な掻き方もできるのか、と感銘を受けました。 
同じ右後脚の蹄で次は右脇腹を掻きました。 
目の前の灌木の枝葉の匂いを嗅いだものの、眼下腺を擦り付けるマーキングはしませんでした。 
再びこちらを見上げて舌舐めずり。 
カモシカがよくやる舌舐めずりは、どんな意味があるのですかね? 
フレーメン反応の一種なのかと思ったこともあるのですが、どうでしょう? 
ナーバスになっている緊張の現れなのかな? 
つづら折れの山道をゆっくり歩いて右へ下り始め、手前に生えた灌木の茂みの死角に消えました。 

つづく→


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2024/03/17

ニホンアナグマの幼獣4頭を溜め糞場に連れて来て排便およびスクワットマーキングした母親♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年7月上旬

スギ防風林にあるニホンアナグマMeles anakuma) 専用の溜め糞場stmpを自動センサーカメラで見張っています。


シーン1:6/29・午後14:46(@0:00〜) 
明るい日中にたまたま撮れた現場の様子です。 
トレイルカメラを設置するアングルに少し失敗してしまいました。 
画面の左下に朽ち果てた切株が見えます。 
その少し下にアナグマの溜め糞場stmpがあるのですけど、画角内にしっかり写っていません。 


シーン2:7/4・午後20:11(@0:06〜) 
アナグマの母親♀が溜め糞場stmpで排便していました。
その周囲を3頭の幼獣がウロチョロしています。 

用を足し終えた母親♀が林床に掘られた溝(古い用水路の跡?)に沿って奥へ立ち去る途中で立ち止まり、尻を地面の落ち葉に擦り付けました。(@0:21〜) 
スクワットマーキングと呼ばれる匂い付けの行動です。 
更に奥へ進んでから左折し、茂みの中に姿を消しました。 
しばらくすると、4頭目の最後の幼獣個体が慌てて家族群を追いかけて行きます。 
はぐれかけながらも、迷子にならず良かったです。 
下草の匂いを嗅ぎ回り、道草を食っています。 
発育の遅い個体という訳でも無さそうで、独立心・冒険心の強い性格なのかも知れません。 

アナグマの母親♀が4頭の幼獣を引率して縄張りを連れ歩き、溜め糞場stmpの位置を教えたことになります。 
今回、幼獣はどの個体も排便しませんでした。 
幼獣の成長はめざましく、母親について一緒に歩き、夜の森を探餌徘徊できるほど体力がついていました。
母親♀は幼獣を引き連れて夜の森を歩く際に、幼獣を誘導する鳴き声(ジェジェジェビーム♪)を発していませんでした。
(音量を上げても聞き取れず) 
ヘルパー♂は同伴していませんでした。(育児には参加しないのでしょう。)
アナグマの家族がこの溜め糞場stmpに来る頻度は低いので、縄張り内のどこか別な場所にも溜め糞場があることが予想されます。 

アナグマの母子の姿が営巣地(セット)から忽然と消えたので、天敵に捕食されて全滅したのではないか?と内心では不安でした。 
母子ともに無事が確かめられて一安心。 
幼獣が生まれた巣穴を離れてどこか別の巣穴へ母子が転出したということが、これではっきりしました。 


※ 動画編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


つづく→

2024/03/16

ニホンアナグマ家族が転出した後の巣穴に不法侵入するハクビシン【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年7月上旬・午前4:00頃・気温19℃・日の出時刻は午前4:19。 

ニホンアナグマMeles anakuma)の母子が転出した後の巣穴をトレイルカメラで監視し続けていると、夜明け前にハクビシン(白鼻芯、白鼻心;Paguma larvata)がやって来ました。 
アナグマ営巣地(セット)のある平地の二次林でハクビシンを見かけるのは初めてです。 
手前の巣穴Lへ慎重に忍び寄り、画角の外に姿を消しました。
カメラの設置アングルがいまいちだったせいで、巣穴Lの中までしっかり入ったかどうか、見届けられませんでした。 
巣穴Lを内見しただけかもしれませんが、出巣Lする様子は撮れていません。 

てっきりホンドタヌキNyctereutes viverrinus)がアナグマの空き巣を乗っ取り、ねぐらとして使っているのかと思ったのですが、事態はより複雑で、一筋縄ではいきません。
アナグマのヘルパー♂がたまに戻ってきたり、ホンドタヌキ(尻尾に黒点▼) が塒として使ったり、通りすがりのハクビシンが侵入を試みたりと流動的で、空き巣の争奪戦になっているようです。

アリストテレスは「自然は真空を嫌う」という科学史では有名な言葉を残しています。 
※ 容器にポンプをつないで陰圧にすると、普通の容器は体気圧によってぺしゃんこに押し潰されてしまいます。今となってはアリストテレスの素朴な自然観は否定(修正)されています。強力な真空ポンプと頑丈な密閉容器を発明したことで(技術革新)、後世の人類は真空状態を作り出し、真空の宇宙空間にも進出しました。

この名言は、物理学的な真空現象についてだけでなく、生態学的な暗喩(メタファー)にもなっています。 
つまり、自然界の生き物はニッチの空白(真空地帯)を嫌って、周囲からどんどん侵入して来るのです。 
アナグマ家族が健在だった頃は、営巣地の周辺で排尿マーキングをしたり、臭腺・肛門腺によるスクワットマーキングしたりして、縄張り宣言していました。
嗅覚が退化している我々ヒトには全く分かりませんが、匂い付けで縄張りに結界を張っているのでしょう。
それでも営巣地に侵入してくる不届き者に対しては、アナグマ♀が吠えながら突進して追い払っていました(縄張り防衛の実力行使)。
充分に育った幼獣を引き連れてアナグマ一家がよその巣穴へ急に転出すると、それまで住んでいた巣穴の付近からアナグマの匂いが急速に薄れてしまいます。
その結果、新たな侵入者を招くことになるのでしょう。
自力では巣穴を掘れないのに巣穴で暮らしたがる哺乳類は多く、アナグマが掘った空き巣は引く手あまたの優良物件となっています。

つづく→


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・シリーズ鳥獣害を考える 6『なぜハクビシン・アライグマは急にふえたの?

2024/03/15

ニホンアナグマの溜め糞場で野ネズミが食べている物とは?【トレイルカメラ:暗視映像】

 


2023年6月下旬・午前2:40頃 

平地のスギ防風林にあるニホンアナグマMeles anakuma)の溜め糞場stmpで深夜に野ネズミ(ノネズミ)が何かを食べていました。 
残念ながら食べているメニューを映像から見極められませんでしたが、3つの可能性が考えられます。 
さすがにアナグマの糞(軟便)そのものは食べないはずです。 

(1)糞塊に蠢く糞虫やウジ虫など食糞性の昆虫類(分解者)。 
栄養価も高く、数としては圧倒的に多いはずです。 

(2)溜め糞の糞便臭に誘引されて飛来する夜行性の蛾。 
この動画の最後でも夜蛾が飛来しました。 
直後に野ネズミが夜蛾に襲いかかったかもしれないのに、狩りの瞬間を撮り損ねてしまって残念無念。 

(3)溜め糞に含まれる未消化の種子。 
アナグマの主食はミミズと言われていますが、実際は雑食らしいです。 
前日の昼間に撮った溜め糞stmpの写真に未消化の種子と思われる小さな粒々がしっかり写っていました。 
下に再掲します。 
いつか糞の内容物をしっかり調べれば、アナグマによる種子散布の実態も分かってくるはずです。(なかなか忙しくて余力がありません)

つづく→


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・『おもしろいネズミの世界 : 知れば知るほどムチュウになる
 
溜め糞stmpの左の表面に未消化の種子

2024/03/14

ニホンアナグマの巣穴を乗っ取ったホンドタヌキを個体識別できた!【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月下旬〜7月上旬

ニホンアナグマMeles anakuma)の母子が転出した後の旧営巣地(セット)にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が繰り返し出没するシーンをまとめました。 
アナグマの不在に乗じてタヌキが空き巣を乗っ取ったのかどうか、判断がつきかねていましたが、遂に結論が出ました。 
同一個体のタヌキが巣穴に住み着いて繰り返し出入りしています。


シーン0:6/29・午後13:29・気温28℃(@0:00〜) 
明るい昼間にたまたま撮れた現場の様子です。 


シーン1:6/29・午後13:34・(@0:04〜) 
別アングルでも広角でトレイルカメラを設置しています。 


シーン2:6/29・午後18:28・気温24℃(@0:07〜)日の入り時刻は午後19:09。 
日没前の夕方に現れたタヌキが巣口Lの縁を忍び足で左へ通り過ぎました。 
そのままセットをぐるっと回って、左手前に戻ってきました。 
巣口Rに近寄り匂いを嗅いだものの、中には入りませんでした。 
鼻面を上げて風の匂いを嗅ぎ、左下に立ち去りました。 


シーン3:6/29・午後18:28・気温25℃(@1:00〜)
別アングルの監視映像でリプレイ。 
画面の右端を通って奥の巣口Rへ向かいます。 
巣口Rの匂いを嗅いだだけで、右に立ち去りました。 


シーン4:6/30・午前3:14・気温20℃(@1:31〜) 
日付が変わった深夜未明にタヌキが再び林縁を左から登場。 
顔つきが随分ほっそりした個体です。 
(水浴した直後なのか、見慣れない新参者なのか、不明です。) 
巣口LRの間を慎重に右へ通り抜けました。 

余談ですが、画面の手前で造網性のクモ(種名不詳の蜘蛛)が水平円網の横糸を張っていました。 
巣口Lの周囲に自生するマルバゴマキ灌木の枝を支柱としています。 
アナグマの巣穴付近を飛び回るハエやアブ、ヤブ蚊などを網で捕らえて捕食するのでしょう。


シーン5:7/1・午前8:57・気温22℃(@2:03〜) 
午前中にタヌキが登場。 
晴れてはいるものの、レンズが一部曇っているので、雨上がりなのかもしれません。 
(とにかく湿度が高そうです。) 
巣口LRの中間地点で身震いし、濡れそぼった毛皮の水気を切りました。 
その場に座って毛繕いを始めました。 
(体の痒い部位を甘噛みしている?) 

この個体は、後ろ姿を見た時に白っぽい毛が生え揃う尻尾の中央部やや右寄りに小さな黒斑▼があるのが特徴です。 
赤外線の暗視映像でも認められ、個体識別に使えそうです。 
タヌキの尻尾の模様に注目する個体識別法は、野紫木洋『オコジョの不思議』という名著を最近読んで、たまたま知りました。(p74の挿絵) 
タヌキは尻尾の模様だけでもバリエーションがあるらしく、これなら私も個体識別ができそうです。 
いつも後ろ姿の尻尾を見せてくれるとは限らないので、正面または横から見た時の特徴も必死で見つけ出す必要があります。
性別も今のところは不明です。
過去の映像も遡って見直すと、この個体が登場していたかも知れません。 

朝帰りしたタヌキが、そのまま慎重に奥の巣穴Rに潜り込みました。 
(その後、出巣Rしたシーンが撮れていません。) 
今はこのタヌキが巣穴Rにちゃっかり住み着いているようです。 


シーン6:7/2・午前4:20・気温18℃(@2:47〜)日の出時刻は午前4:17。 
翌日の日の出直後に、例のタヌキ(尾に黒点▼)の後ろ姿が写りました。 
出巣Rした直後なのかも知れません。 
奥の巣口Rにゆっくり近づき、匂いを嗅いだものの中には入らずに毛繕いを始めました。 


シーン6:7/2・午前4:21・(@3:48〜) 
次にトレイルカメラが起動したときには、広場を経由して手前の巣口Lに来ていました。 
アクセストレンチを辿ってゆっくり入巣L。 
しばらくすると、巣穴Lから外に出てきて、身震いしました。 
ゆっくり出巣Lしたので、アナグマのヘルパー♂に中から追い払われたようには見えません。 
やはりアナグマはヘルパー♂も不在で、タヌキがこの営巣地(セット)を完全に乗っ取ったようです。 
このタヌキは巣穴をねぐらとして使っているようです。
アナグマのヘルパー♂は巣穴を防衛しないで、あっさりタヌキに明け渡したようです。 
ヘルパー♂も母子について行って新しい巣穴に転出したのかもしれません。
アナグマ♀が子育てをする立派な巣穴(セット)は代々受け継いで拡張工事を繰り返すと本で読んでいたのですが、そんな価値のある不動産をあっさり放棄したのは意外です。
翌年の繁殖期までにタヌキから奪い返すつもりなのかな?
実はアナグマのヘルパー♂とタヌキ(尾に黒点▼)が同じ巣穴に仲良く同居しているという可能性も考えられます。(「同じ穴のむじな」仮説)

巣穴Lの中は水浸しで住めない状態なのかもしれない…?と勝手に想像しているのですけど、定かではありません。 
タヌキは右上へ立ち去ったかと思いきや、すぐに戻ってきました。 
奥の巣口Rで身震いしてから入巣R。 


シーン7:7/5・午後15:40・気温24℃(@4:31〜) 
3日後の午後に例の個体(尾に黒点▼)が登場。 
鬱蒼とした二次林の林床は真っ昼間でもやや薄暗いです。 
自然光下で見た時に毛皮が全体的に白っぽい印象なのは、夏毛だからなのでしょうか。 
(老齢個体はメラニン色素が薄れて白髪化するのかな?) 

奥の巣口Rを点検してから身震いし、手前へ来ました。 
手前の巣口Lの匂いを嗅いでから方向転換して、左奥の灌木林へ立ち去りました。 
採餌に出かけたようです。 
その後、帰巣シーンは撮れていません。 


シーン8:7/6・午前4:53・気温19℃(@5:31〜)日の出時刻は午前4:19。 
翌日の早朝にようやく戻ってきた例のタヌキ(尾に黒点▼)が右から回り込んで巣口Rへ向かいました。 
巣口Rの匂いを嗅いだだけで中には入らず、奥の二次林へ向かいました。  
すぐに画面の右上隅から戻ってきたところで、録画が打ち切られました。(尻切れトンボ) 


つづく→

2024/03/13

巣穴の近くで地面を掘って餌を探すニホンアナグマのヘルパー♂【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月下旬〜7月上旬

ニホンアナグマMeles anakuma)の母親♀が幼獣4頭を連れて生まれた巣穴 から転出すると、トレイルカメラにアナグマが写る頻度が激減しました。
転出先の巣穴の位置が突き止められていればそっちに監視カメラを設置し直すのですが、分からないので、同じ営巣地(セット)の監視を惰性で続けることにします。
(たまに面白い発見があるので、惰性の観察も侮れません。)


シーン1:6/29・午後14:41・晴れ・気温26℃(@0:04〜) 
手前の巣穴Lから外に出てきたばかりと思われる個体が、左へ立ち去りました。 
(出巣Lのシーンを撮り損ねたようです。)
2つの巣口LRの間の広場が、林冠ギャップによる日溜まりになっています。 

余談ですが、いつの間にか画面の左に造網性クモの垂直円網が斜めに張られていました。 
このカメラアングルでは、風に揺れている網がほとんど直線に見えます。 
(白い円網にピントは合っていませんが、中央のこしきにクモが占座しているようです。) 
アナグマの巣口L周辺を飛び回るヤブ蚊?やキイロコウカアブなどの双翅目を効率よく捕食できる場所なのでしょう。 

【参考文献】 
櫻庭知帆; 小林秀司; 髙﨑浩幸. キイロコウカアブはニホンアナグマを対象とした自動撮影カメラの設置適地を教えてくれる. Naturalistae, 2016, 20: 57-60. 


シーン2:6/29・午後13:34・晴れ(@0:28〜) 
別アングルに設置した広角の監視カメラで明るい時間にたまたま撮れた現場の様子です。 
少し遠いですが、右の巣穴Rの入口付近でハエ?やキイロコウカアブ?が飛び回っています。 


シーン3:6/30・午前3:44・気温20℃(@0:28〜) 
日付が変わった未明に、アナグマが奥の広場に登場しました。 
営巣地(セット)周辺の地面の匂いを嗅ぎ回り、左下に立ち去りました。 

左右の目の大きさが均等なので、母親♀ではなくヘルパー♂だと思いますが、ほっそりした体型に見えます。 
腹面に乳首の有無を確認できませんでした。 
出産育児の過労から解放された母親♀の疲れた目つき(右目<左目)が回復したのでしょうか? 
完全に余所者(新顔)の♀がやって来たのかも知れません。 



シーン4:7/3・午前4:32・気温19℃(@1:25〜)日の出時刻は午前04:18。 
3日後の明け方に左から来た個体が、手前の巣穴Lから伸びるアクセストレンチを右前足で掘っていました。 
顔つきがずんぐりむっくりしているので、ヘルパー♂が成獣の体つきに近づいてきたような気がします。 
巣口Lを点検したものの、中には入らずに近くで地面を掘り返してミミズを探しています(探餌)。 
身震いしてから右下に立ち去りました。 


シーン5:7/3・午前4:35・(@2:14〜) 
2分後に戻ってきたアナグマが画面右端エリアをうろついています。 
残念ながら顔を見せてくれませんでした。 


【考察】
ニホンアナグマの母子が転出してヘルパー♂だけが取り残されたと私は初め思いました。
気ままな独身生活を送るようになったのかもしれませんが、それにしても巣穴への出入りが監視カメラになかなか写っていません。
あるいは、家族と一緒に引っ越した後もヘルパー♂がときどき前の営巣地(セット)に戻ってきて、巣穴を点検したりメンテナンスしたりするだけなのかもしれません。

アナグマ家族がどこか別の巣穴へ転出した理由はもしかすると、梅雨の長雨で巣内が水浸しになり、中の巣材が濡れてカビが生え、住めなくなったのかもしれません。(居住環境の悪化)
ファイバースコープを巣穴に突っ込んで中を観察してみたいのですが、観察1年目の今季はとにかくアナグマを刺激しないように自重します。
濡れた巣材を外に干して乾かす行動をするとアナグマ関連の本で読んでいたものの、私は未だ実際に見たことがありません。 

つづく→

ニホンアナグマの溜め糞場で獲物を待ち伏せするサビハネカクシがキンバエを狩り損なう

 

2023年6月下旬・午後12:45頃・くもり

スギ防風林で朽ちた切株の横に残されたニホンアナグマMeles anakuma)の溜め糞場を定点観察しています。 
鬱蒼としたスギ植林地の林床は、昼間でもかなり薄暗くなっています。 
黒い軟便が溜まった新鮮な糞塊にサビハネカクシOntholestes gracilis)が2匹乗っていて、獲物を待ち伏せしていました。 
尻尾を少し持ち上げてゆっくり回す行動が気になります。 
猫が獲物を狩ろうとする前の興奮した心理状態を表す仕草を連想しました。 
やがて、1匹のサビハネカクシが溜め糞から吸汁していたキンバエの仲間(種名不詳)に斜め後ろから忍び寄りました。 
しかし狩りは失敗に終わり、キンバエは素早く飛んで逃げ糞塊上の落枝に着陸し直しました。 
クロボシヒラタシデムシOiceoptoma nigropunctatum)の幼虫エンマムシの仲間の成虫(種名不詳)も溜め糞上を徘徊したり潜り込んだりしているのですが、固い鎧で身を固めた甲虫類にサビハネカクシが襲いかかることはありません。 
溜め糞場で肉食性のハネカクシ類が狩りに成功する瞬間を動画に撮るのが今季の目標です。
失敗続きでもめげずに地道に動画を撮り続けるしかありません。

動画を撮影中に画面を黄色っぽい昆虫が低空かつ高速で飛び回っています。 
ようやく溜め糞の横の下草に止まったので接写してみると、キイロコウカアブPtecticus aurifer)でした。 
性別の見分け方を知らないのですけど、交尾相手のキイロコウカアブ♀が吸汁・産卵のため溜め糞場に飛来するのを待ち伏せしている♂なのでしょうか? 

アナグマの溜め糞に隣接するスギの落ち葉に微小なアリ(種名不詳)が群がっていました。 
アリは泥状の軟便の上を歩きたくないようです。
左の黒い糞塊には未消化の種子が含まれていた。

2024/03/12

有毒植物ナニワズの熟果を採食するニホンザルの子猿【トレイルカメラ】

 



2023年6月下旬・午後14:10頃・気温27℃ 

ニホンアナグマMeles anakuma)の母子が転出した後の営巣地にニホンザルMacaca fuscata fuscata)の小群が白昼堂々、遊動して通りかかりました。 
母子が連れ立って左下から登場しました。 
母親と思われる♀がアナグマの巣口LとRを順に覗き込んでいる間に、子猿が奥に駆け出しました。 
林床で目立つ赤い実を摘んで採食したようです。 
手前のマルバゴマキの枝葉が邪魔なのですが、1.5倍に拡大して子猿の採食行動をリプレイしてみましょう。 
下草で虫を見つけて捕食(掴み取り)したのではなく、確かに赤い実を摘果・採食していました。

更に別個体が画面の右上隅から登場し、合流した子猿にちょっかいを掛けました。 
子ザルは一時的に樹上に逃げてやり過ごしました。 

平地の二次林にも野生ニホンザルの群れが生息しているとは知りませんでした。 
山から降りてきたのでしょうか? 
平地に点在する二次林が緑の回廊になっているのかもしれません。

トレイルカメラで撮れた動画をその場でチェックしてからすぐに現場検証して、残っていた謎の赤い実の写真を撮りました。 
ヒメアオキかと勘違いしそうになったのですが、調べてみると、ナニワズ(別名エゾナニワズ、エゾナツボウズ)というジンチョウゲ科の落葉小低木と分かりました。 
早春に黄色い花を咲かせていたのを覚えています。 
この時期(6月下旬)、どんどん黄葉して落葉するのが気になりました。 
この二次林は鬱蒼と葉が生い茂り、林冠ギャップがほとんどありません。
てっきり日照不足で小低木の葉は枯れてしまうのかと初めは思いました。 
しかしナニワズは冬緑性で夏に落葉する珍しい植物なのだと知りました。 
ナツボウズという別名はそこから由来しています。
スプリング・エフェメラルと似たような繁殖戦略(フェノロジー)なのでしょう。

驚いたことに、ナニワズの赤い熟果(液果)は有毒なのだそうです。 
花、葉、樹皮、果実など植物全体にクマリン系配糖体のダフィニン(daphnin)を含み有毒です。 
アイヌ民族はナニワズの木から絞った液を矢毒に用いたそうです。 
クマリンは血液凝固を阻害する殺鼠剤として有名です。 
しかし鳥類には毒性が無いらしく、ヒヨドリが熟したオニシバリ(ナニワズの近縁種)の実を丸呑みして未消化の種子を含む糞をすることで種子散布に貢献しているそうです。 
一方、カワラヒワはオニシバリの種子捕食者として関わっているそうです。 

【参考文献】 
鈴木惟司. 南関東における有毒性小低木オニシバリ Daphne pseudomezereum (ジンチョウゲ科 Thymelaeaceae) の果実食者と種子捕食者. 山階鳥類学雑誌, 2016, 48.1: 1-11. 

Google Scholarで検索すると、全文PDFが無料でダウンロード可能です。
読んでみると、カメラトラップを用いた研究でした。
メインのストーリーは鳥類による種子散布ですが、哺乳類についても記述がありました。
オニシバリ3個体の近くでアカネズミ属Apodemus(5回),ニホンアナグマMeles anakuma(6回)及びハクビシンPaguma larvata(1回)の3種が記録された。またこれら以外に,撮影状態が悪く被写体を特定できなかったが,ネズミ類と思われる動物に反応した記録が6回得られた。哺乳類についてはいずれのケースでもオニシバリ果実の採食は記録されなかった。

恐らくその有毒性のために本種(オニシバリ:しぐま註)は他の日本産ジンチョウゲ属数種とともにニホンジカCervus nipponの不嗜好性植物となっている。

この研究では、ニホンザルは登場していません。 
また、私がネット検索してもニホンザルがナニワズの果実を採食した例は知られていないようです。 
ニホンザルの採食メニューを膨大なリストにまとめた文献にもナニワズやオニシバリは掲載されていませんでした。 
という訳で、今回の動画はニホンザルがナニワズの熟果を採食したシーンを録画した貴重な証拠映像かも知れません。 
味見した直後に不味くて吐き出したかどうか不明ですが、続けて幾つもナニワズ熟果を採食しないで子猿はナニワズの群落から立ち去りました。 
登場した3頭のうち、若い子猿だけがナニワズ熟果を採食(味見・毒味)したのも興味深いです。 
このアナグマ営巣地(セット)で夜な夜な活動していた野ネズミの出現頻度が減ったのは、もしかするとナニワズの実(天然の殺鼠剤)を食べて次々に死んでしまったのかもしれません。 
ニホンザルは野ネズミよりも大型なので、1個ぐらいナニワズ果実を食べても致死量とはならないのでしょう。 
しかし一気に大量に食べると、ダフィニンの毒性により体調を壊すはずです。 
熟した液果が赤く色づくのは種子散布者の鳥や動物に食べてもらうための適応のはずなのに、有毒成分が抜けないのはどういうことでしょう? (アメとムチ?)
種子散布者に果実を少量ずつ食べてもらいたい植物(ナニワズ)の戦略で毒を含んでいるのではないかと考えられます。 
ニホンザルの成獣がナニワズの果実を食べようとしなかったのは、経口毒性を身をもって学習済みだったからかもしれません。
ナニワズの赤い実を食べた子猿が遊動して遠くで排便すれば、未消化の種子がやがて発芽して、種子散布に成功したことになります。
ナニワズの果実を解毒するために、ニホンザルが特定の土や薬草を併せて食べるように進化したら面白いですね。


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この二次林内のあちこちで見つけたナニワズの群落
子猿が採食した現場
その拡大写真

2024年3月中旬 

残雪が溶ける前にスギ防風林の林縁に咲いていたナニワズの花および蕾の写真を撮りました。
冬の間は緑の葉が付いたまま雪の下に埋もれていたことになります。(冬緑性)

一方、庭木に植栽されるジンチョウゲは常緑性です。

2024/03/11

梅雨の晩にアナグマ営巣地の林床を駆け回り餌を探す野ネズミ【トレイルカメラ:暗視映像】

 


2023年6月下旬・午後20:02・雨・気温19℃ 

雨が降りしきる晩に野ネズミ(ノネズミ)が二次林の林床をチョロチョロと走り回り、餌を探しています。 

ニホンアナグマMeles anakuma)の母子が巣穴から転出した後なので、野ネズミが空き巣に侵入する頻度が上がるかと予想したのですが、そうでもありませんでした。 
ただし、これは単純な話ではありません。 
アナグマのヘルパー♂だけが居残っているかもしれませんし、タヌキがアナグマの巣穴を乗っ取った可能性もあります。
そもそも野ネズミの出現頻度が一時期よりも減っている(個体数の増加が抑えられている)のは、ホンドテンやニホンイタチ、フクロウなど夜行性の捕食者が暗躍するようになったせいではないか?と推測しています。 

つづく→

2024/03/10

スギ防風林でニホンアナグマの溜め糞を通りすがりに調べるホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年6月下旬・午前4:01・(日の出時刻は午前4:15) 



ニホンアナグマMeles anakuma)が排便に通う溜め糞場stmpにホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が夜明け前に登場しました。 
スギ防風林を左からやって来たようで、朽ち果てた切株の上に乗り、アナグマの溜め糞stmpを見下ろしています。 
アナグマの新鮮な糞の匂いを嗅いでから左に立ち去りました。 

実は左に5mぐらい離れた地点にタヌキが排便に通う巨大な溜め糞場wbcがあるのです。 

タヌキがアナグマの溜め糞の上に対抗して排便することもありませんし、逆にアナグマがタヌキの溜め糞場で排便することもありません。 
しかし縄張りが重なり合う2種が近接してそれぞれの溜め糞場を設けているということは、お互いに意識し合って糞便の匂いで縄張りを宣言しているのでしょう。

2024/03/09

ニホンアナグマの溜め糞場に飛来した夜蛾を捕食する野ネズミ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年6月下旬・午後22:00頃 

平地のスギ防風林に残されたニホンアナグマMeles anakuma)の溜め糞場stmpをカメラトラップで監視すると、野ネズミ(ノネズミ)がよく写ります。 
明るい昼間に撮った現場の様子はこちらです。 

一方、夜になると暗闇のスギ林の中を夜行性の蛾が複数飛び回っています。 
ある晩アナグマの溜め糞場stmpに来ていた野ネズミが、溜め糞から飛び立った(あるいはたまたま低空で飛来した?)夜蛾に襲いかかりました。 
蛾は素早く飛んで逃げ、狩りに失敗した野ネズミは手前の切株へ立ち去りました。 
1/3倍速のスローモーションでリプレイ。 

わずか1分半後、次にトレイルカメラが再び起動すると、溜め糞の横で野ネズミが夜蛾を捕食していました。 
狩りに成功した瞬間を撮り損ねたのが残念無念。 
獲物の翅はちぎってその場に捨て、胴体だけを食べています。 
野ネズミの肉食行動は初見で、感動しました。 
野生動物のトイレでは食物連鎖の様々なドラマが静かに繰り広げられているのです。

映像からは餌食となった蛾の種類を見分けられません。
この時期(昼間)はトンボエダシャクがよく飛び回っているのを見かけますが、なんとなくシャクガ科ではなくヤガ科のように見えます。 
夜行性の蛾の中に獣糞で吸汁する種類がいるらしいということは、過去にも観察しています。 
昼行性の蝶と同じく、性成熟に必要なミネラル成分(ナトリウムイオンやアンモニウムイオンなど)を獣糞から摂取しているのでしょう。

ニホンアナグマの溜め糞をほじくり返してみると…

 

2023年6月下旬・午前10:00頃 



スギ防風林の中にニホンアナグマMeles anakuma)が通う溜め糞場stmpがあり、定点観察しています。 
放置されたまま朽ちた古い手押し車(猫車)の金属フレームが目印になっています。
約5m離れた地点に残されたタヌキの溜め糞wbc-1と異なり、アナグマの溜め糞は黒い軟便で糞の原形が残っていません。 

すぐ横には朽ち果てた切株があり、その下にオニグルミ堅果の殻が大量に散乱していました。 
殻の両側に丸い穴がくり抜かれていることから、アカネズミApodemus speciosus)の食痕と判明。 
周囲を見回してもオニグルミの木は生えていなかったので、秋にオニグルミの落果を1個ずつせっせと運んで貯食していたのでしょう。 
大雪の積もる冬に貯蔵庫のクルミを食べて暮らし、残りの殻を一箇所に捨てていたのです。 
つまり、この辺りはアナグマのトイレでもあり、アカネズミのゴミ捨て場でもあります。 
どこか近くにアカネズミの巣穴があるはずですけど、朽ち果てた切株の根元は穴だらけで逆によく分かりませんでした。 
後日、すぐ近くのスギ林床(スギ落ち葉の下)に野ネズミ(ノネズミ)の巣穴を発見しました。(映像公開予定)
右上にアカバトガリオオズハネカクシ
 
2023年6月下旬・午後13:50頃

3日後に現場を再訪しました。
鬱蒼としたスギ林の林床は、日中でもかなり薄暗いです。 
小枝でアナグマの溜め糞stmpをほじくってみると、湿った粘土状というか、独特の質感です。 
溜め糞の中から得体の知れない小型の黒い虫が大量に現れ、慌てて逃げ惑います。
糞虫やハネカクシ類、シデムシ類だと思うのですが、糞分析の要領でじっくり調べないと分かりません。
(目の細かいザルに獣糞を入れてほぐしながら流水で洗い流し、未消化の内容物や糞虫を濾し取る手法)
アナグマの調査で忙しくてこれ以上手を広げられず、糞虫の採集調査は後回しになっています。
隣りにあるタヌキの溜め糞wbcと糞虫相を比較するのも面白そうです。

溜め糞stmpの周囲を黄色い昆虫が高速でブンブン飛び回っていました。
ようやく近くの下草に止まったので接写してみると、キイロコウカアブPtecticus aurifer) でした。
右翅だけ広げた謎の体勢です。 
レンズをそっと近づけてもなかなか逃げません。
最後にようやく羽音を立てて飛び去りました。


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・ふしぎいっぱい写真絵本『うんちレストラン』 

2024/03/08

ニホンアナグマ母子が転出した空き巣穴に夜な夜な忍び込んで内見するホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月下旬 

ニホンアナグマMeles anakuma)の母子がどこか別の巣穴に転出すると、それまで使われていた営巣地(セット)にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が夜な夜な侵入するようになりました。 
これまでよりも出現頻度が上がっています。 
アナグマが子育てしている間は特に♀が殺気立っているので、近所のタヌキも遠慮してセットには近寄らないようにしていたのでしょう。
あるいは、アナグマがあちこちに尿による縄張りマーキングを繰り返すことで、まるで結界を張ったように有効だったのでしょう。 
嗅覚の鋭いタヌキは、アナグマの匂いが巣口周辺で日に日に薄れていることを敏感に嗅ぎ取り、日に日に大胆に振る舞うようになっています。 


シーン1:6/26・午前3:22・気温15℃(@0:00〜) 
タヌキが暗い夜にアナグマの営巣地に来たのは、これが初めてです。 
これまでタヌキは明るい日中または薄明薄暮の時間帯にこっそり訪れていて、アナグマの活動が活発になる夜には決して現れませんでした。 
夜は営巣地(セット)に近づこうとするタヌキを巣穴の主であるアナグマが(吠え立てながら?)積極的に追い払っていたのかもしれません。 

深夜未明に現れたタヌキは、左の巣口Lへ真っ直ぐ向かい、そのまま迷いなく巣L内に侵入しました。 

まさに「同じ穴のむじな」という諺通りです。 
アナグマの空き巣をタヌキがこのまま乗っ取るのかな? 


シーン2:6/26・午前3:22・気温16℃(@0:25〜) 
別アングルのトレイルカメラでも、タヌキの巣穴L侵入シーンがしっかり撮れていました。 
しかしカメラの設置アングルがいまいちで、手前の巣口Lがしっかり写っていません。 


シーン3:6/26・午前3:24・(@0:25〜) 
カメラの起動が遅れてしまいましたが、1分20秒後に右へ立ち去るタヌキの後ろ姿が写っていました。 
タヌキは巣穴Lに居座ったり乗っ取ったりしないで、内見しただけで帰ったようです。 


シーン4:6/27・午前0:36・気温19℃(@0:45〜) 
翌日の深夜にもタヌキがアナグマの旧営巣地にやって来ました。 
巣口Rを覗き込んでから、蚊にでも刺されたのか右の脇腹を舐めて毛繕いしています。 
今宵は奥の巣穴Rへ慎重に潜り込みました。

アナグマの母子が転出した後、ヘルパー♂が取り残されたと思ったのですが、ヘルパー♂も不在がちなのかもしれません。 


シーン5:6/27・午前0:36・気温19℃(@1:43〜) 
別アングルの公開映像でもタヌキの入巣Rシーンが撮れていました。 
前夜のタヌキと同一個体かどうか、個体識別ができていません。 

巣穴の主であるアナグマ(ヘルパー♂)が不法侵入者を追い払うために飛び出してこないということは、留守なのでしょう。 
独りになったヘルパー♂はタヌキを怖がって居留守を使っている可能性はどうでしょう? 

タヌキが巣口Rlの横で地面の匂いを嗅いで方向転換しながら排尿マーキングしたように見えたのは、私の気のせいでしょうか?(@2:21〜) 
排尿姿勢から見ると、片足を上げなかったので♀のようです。 
タヌキが潜り込んだのは巣穴Rrでした。 

この後、タヌキが出巣Rするシーンが撮れていません。 
単に撮り損ねたのか、それともタヌキが巣R内に居座ったのか、不明です。 


シーン6:6/28・午前3:41・気温20℃(@2:43〜) 
翌日の深夜未明、土砂降りの豪雨が降りしきる中、タヌキが登場。 
身震いしてから慎重に巣穴Rlの中に潜り込みました。 

この後、タヌキが出巣Rするシーンが撮れていません。 
単に撮り漏らしたのか、それとも巣R内に居座ったのか、不明です。 

一時的な雨宿りではなく、いよいよアナグマの空き巣をタヌキが本格的に乗っ取ったような気がしてきました。


 シーン7:6/29・午前5:12・気温20℃(@3:14〜)日の出時刻は午前4:16。 
翌日の早朝、雨は止んでいました。 
やって来たタヌキが奥の巣口Rを覗き込んで匂いを嗅いだものの、中には入らずに左奥の二次林へ立ち去りました。 

登場するタヌキの個体識別ができるようになれば、より面白くなりそうです。 


【追記】
アナグマ関連の本を読んで「幼獣が生まれた巣穴から母子はやがて引っ越す」という予備知識があったので、そのように解釈しているのですが、トレイルカメラの電池切れで肝心の転出行動を記録できていません。
したがって、タヌキが力づくでアナグマの巣穴を乗っ取り占拠したという可能性も排除できません。


2024/03/07

ニホンアナグマの母子が新しい巣穴に転出した後に取り残されたヘルパー♂【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月下旬 

ニホンアナグマMeles anakuma)の営巣地(セット)でヨチヨチ歩きの幼獣たちの姿をカメラトラップが捉えたのは、前回6/17が最後でした。 
それ以来、アナグマの出没記録がパタッと激減しました。 
おそらく、母親♀は4頭の幼獣たちを連れて別の巣穴に引っ越してしまったようです。 
母子が採食のために森の中を少しずつ遠出できるようになり、幼獣に体力が付いたら、引率して新しい巣穴へ引っ越しするのでしょう。
体重が増えた幼獣を母親♀が1頭ずつ咥えて遠くの新しい巣穴まで運び、その重労働を4往復もするのは無理だと思います。
アナグマ関連の本を読んでいて「幼獣が生まれた巣穴から母子はやがて引っ越す」という予備知識があったので、それほど動転したり落胆したりしないで済みました。 


新しい世界へ!
 それは突然でした。母アナグマは赤ちゃんたちが一緒に歩けるだけの体力がついたと判断したのでしょう。
 いつもはジェジェジェビームを使って赤ちゃんたちを巣の外へ連れ出すとビームはオフにするのですが、この時はオンのままです。
 赤ちゃんたちは教えられたとおり母アナグマの後をついてゆき、そのまま森へ消えてゆきました。 (福田幸広『アナグマはクマではありません』p90より引用)

トレイルカメラ2台に絶えず監視される生活が嫌になって母子が営巣地から逃去したのか?とか、天敵に襲われて皆殺しにされたのか?とか、あれこれ思い悩むところでした。
運悪くカメラの電池が切れていたため、引っ越しの行動が動画で記録できなかったのも残念です。 
転出先の巣穴がどこにあるのか、私は未だ見つけられていません。 
そして、この営巣地にはヘルパー♂が独り残されたようです。 


シーン1:6/22・午後17:48・気温18℃(@0:00〜)日の入り時刻は午後19:08。 
日没前の夕方に右上から登場したアナグマが獣道を通って奥の二次林に立ち去りました。 
1台の監視カメラの設置アングルに失敗してしまい、巣口Lをしっかり狙えていませんでした。 


シーン2:6/27・午前4:10・気温17℃(@0:20〜)日の出時刻は午前4:15。 
5日後の日の出直前に右から久しぶりにアナグマが登場。 
なんとなく、♀ではなくヘルパー♂のような気がします。 
ここ数日は幼獣の姿を全く見かけません。 
2つの巣口LRの中間地点に佇んで、辺りを警戒しています。 

実は約3.5時間前に、タヌキがアナグマの営巣地に来ていました。(映像公開予定) 
タヌキの残り香を嗅ぎ取って警戒しているのかもしれません。 


シーン2:6/27・午前4:19・気温19℃(@1:20〜) 
日の出直後に奥の巣穴Rから外に出てきたアナグマが、2つの巣口LRの中間地点に座り込みました。 
左の林内を見つめています。(警戒?) 
腹面に乳首が見えなかったことから、この個体もヘルパー♂だと思います。 
同居していた家族が急に減って寂しいという感情があるのでしょうか?
巣口Lの横を通り過ぎ、左へ立ち去りました。 


シーン3:6/27・午前4:20・気温17℃(@2:21〜) 
別アングルに設置したトレイルカメラによる広角の映像に切り替えます。 
5倍速の早回し映像でお届けします。 
左奥の灌木林の中をアナグマが頻りにうろついています。 
林内でおそらくミミズなどを採食しているのでしょう。 


シーン4:6/27・午後13:26・気温23℃・晴れ(@2:35〜) 
明るい真っ昼間にアナグマが奥の巣穴Rに潜り込みました。
しばらくして再び出巣Rしたアナグマが、林縁の広場で身震いしてから左奥の二次林へ走り去りました。 


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2024/03/06

スギ林床にあるニホンアナグマの溜め糞場に夜な夜な来る野ネズミ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年6月下旬 

スギ防風林にあるニホンアナグマMeles anakuma)の溜め糞場stmpにカメラトラップを設置して見張っていると、野ネズミ(ノネズミ)が夜な夜な写っていました。 

画面の右に斜めに転がっている細長い棒状の物体は、林床に不法投棄された手押し車(猫車)の朽ちた金属フレームです。 
アナグマはこれを目印にして、溜め糞場stmpに来ているのかもしれません。 


シーン1:6/22・午後19:56(@0:00〜)日の入り時刻は午後19:08。 
晩に野ネズミが登場しました。 
起動したトレイルカメラに驚いたようで、溜め糞場の上に乗ったまま野ネズミが静止(フリーズ)していました。 
一体何をしていたのでしょう? 
我々ヒトの衛生感覚からすると考えられませんが、野ネズミは素足で溜め糞の上に乗っても平気なようです。 
警戒を解くと手前に立ち去りました。 

このときは溜め糞場stmpの主の正体がまだ不明で(アナグマの排便シーンが写る5日前)、まさか野ネズミが排便に通っているのか?と意外に思ったりしました。 
しかし、ネズミの糞にしては形状が明らかに異なりますし、野ネズミが同じ場所に繰り返し排便して溜め糞の山を作るという習性も聞いたことがありません。 


シーン2:6/22・午後21:54(@0:16〜) 
スギの落葉落枝が敷き詰められた林床をチョロチョロと走り回って餌を探しています。 
その通り道にアナグマの溜め糞場stmpがあるようです。 


シーン3:6/23・午前0:57・気温(@0:27〜) 
溜め糞の匂いを嗅ぎ、辺りをうろついてから、手前に立ち去りました。 
手前の切株に野ネズミの巣穴があるのかな? 


シーン4:6/25・午前0:13・気温(@0:45〜) 
溜め糞stmpの右上で、林床のスギ落葉の中に顔を突っ込んでいました。 
おそらく獲物となる虫を探しているのでしょう。 
諦めて奥に立ち去りました。 


シーン5:6/26・午前1:34・気温(@1:22〜) 
野ネズミが深夜にスギの林床を奥から手前にやって来ました。 
アナグマの溜め糞場stmpの匂いを嗅いだだけで通り過ぎました。 


画面の左下隅に写っているには、朽ちた切株です。 
(トレイルカメラに近過ぎて、赤外線が白飛びしてしまっています。) 
実はその根元に、オニグルミ堅果の殻が大量に散乱していました。 
クルミの殻には2個ずつ穴が開いていて、アカネズミApodemus speciosus)の食痕と分かりました。(映像公開予定) 
近くにオニグルミの木は自生していないので、アカネズミが秋にオニグルミの落果を拾い集めて切株の隙間などにせっせと貯食したのでしょう。 
冬に貯蔵庫のクルミを食べた後のゴミ捨て場になっていたのです。 
今回トレイルカメラを設置してみて、野ネズミの出現頻度が高いことから、おそらく巣穴が近くにあるのだろうと予想できます。 




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2024/03/05

スギ防風林の溜め糞場に通って排便するニホンアナグマ【トレイルカメラ:暗視映像】

 

2023年6月下旬 

平地のスギ防風林にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が残した溜め糞場wbcがあります。 



タヌキの溜め糞場wbc-1から約5m離れた地点に、別の溜め糞場stmpを新たに見つけました。 
朽ちた切株と捨てられた古い手押し車(猫車)の間に溝が掘られていて(農業用水路の跡?)、そこに黒っぽい下痢便が残されていたのです。 
タヌキの溜め糞場とは異なり、しっかりした固形の糞が残っていないのが特徴です。 
気にはなっていたものの、監視するためのトレイルカメラの数が足りなくて、検証が後回しになっていました。 
他のプロジェクトがようやく一段落したので、溜め糞場stmpにトレイルカメラを設置したところ、ニホンアナグマMeles anakuma)が排便に通っていることが判明しました。 

アナグマの溜め糞場を見つけたのは、これが2例目です。(n=2) 
タヌキとアナグマが溜め糞場を共有(隣接)しているのは、別の地点(里山のスギ林道)でも観察しています。 
アナグマが溜め糞場に下痢便を排泄するのも、同じく別の地点(里山のスギ林道)で観察済みです。 


シーン1:6/27・午前2:44・(@0:00〜) 
夜中に左から来た獣が溜め糞の匂いを嗅いでいます。 
切株の方を向いて溜め糞場stmpに跨がり、脱糞しました。 
残念ながら手前の切株が邪魔で顔が見えませんでした。 
(もっと高所から見下ろすように監視カメラを設置する必要ありそうです。) 
林床の溝を通って右下へ立ち去る際に、ようやくアナグマと判明しました。 
おそらく♀(または若いヘルパー♂)のようです。 
スクワットマーキング(臭腺や肛門腺による匂い付け)はしませんでした。 


シーン2:6/28・午前3:45・大雨(@0:25〜) 
梅雨の激しい豪雨が降りしきる深夜に、溜め糞場stmpに来たアナグマが左を向いて軟便を排泄しました。 
用を足すと、溝を通って右に駆け去りました。 
逃走シーンを1/3倍速のスローモーションでリプレイ。


詳細は伏せますが、アナグマの営巣地(セット)から遠くない場所に、この溜め糞場stmpは位置しています。 
この映像では、画面の左上の方向にアナグマの営巣地があります。 
ちなみに、タヌキの溜め糞場wbcは、画面の左下方向にあります。
溜め糞場stmpに通うアナグマを個体識別したくなりますが、右目が左目よりも小さい♀かどうか、この動画のアングルからは見分けられませんでした。 

アナグマ関連の本には、巣穴の近くに溜め糞場があると記述してあります。
例えば、熊谷さとし、安田守『哺乳類のフィールドサイン観察ガイド』(2011年)でアナグマの掲載ページを参照すると、
巣穴の近くに穴を掘り、中にフンをした「表札フン」。ミミズ類を多く食べたときのフンは、形状が崩れやすいという。
地域によっては、タヌキに似た「ためフン場」をつくる場合もある。(p68より引用)

ところが、なぜか私のフィールドでは当てはまらず、巣穴から結構離れた地点にあります。(n=2)
営巣地にトレイルカメラを2台設置して重点的に監視しても、巣穴の近くで脱糞するアナグマの決定的な証拠映像を一度も撮れたことがありません。
(排尿マーキング行動は何度も撮れています。)
営巣地と溜め糞場の分離がこの地域のニホンアナグマ個体群に特有の習性だとしたら面白いのですが、進化的にどんな意味があるのか、今のところ分かりません。
ホンドタヌキの縄張りと重なり合って密接に共存していることが一つの鍵になりそうです。


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