ラベル 化粧 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 化粧 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2024/03/18

つづら折れの山道に座り込んで休むニホンカモシカ♂がどいてくれるまでひたすら待つ

 

2023年7月上旬・午後13:20頃・くもり 

里山の急斜面をつづら折れの細い山道を辿って静かに下山していると、前方にニホンカモシカCapricornis crispus)を発見。 
どうやら最近、この山道の左右を誰かがきれいに草刈りしたばかりのようです。 
その山道でカモシカが立ち止まり、毛繕いしていたようです。 
ズームインしてみると、つづら折れの曲がり角でカモシカが向きを変えた際に、股間に睾丸が見えたので♂と判明。
角や耳介にこれと言って特徴はありませんが、すっかり顔馴染みになった♂個体でした。 

こちらを見上げたのに、逃げ出すこともなく、落ち着き払っています。 
私の方が少し高所にいるのに、警戒する素振りを見せませんでした。 
野生のカモシカにしてはあり得ない振る舞いです。
山中でカモシカを追いかけると、最後には上へ上へ逃げますから、敵を見下ろす位置の方がカモシカとしては落ち着くようです。
外敵が急斜面を駆け下りながら襲ってくる方が怖いのでしょう。
近視で私の姿がよく見えてないだけかもしれません。 

カモシカ♂は左耳の裏が痒いらしく、左後脚の蹄で器用に掻きました。 
身震いしてペロペロと舌舐めずりしながら、またこちらを見ました。 
次は体を曲げて、左の脇腹を舐めました。 
吸血性の昆虫に刺されて痒いのでしょう。 

ようやく、ゆっくりと歩き出して、右カーブを曲がりました。(@0:31〜) 
手前に自生するユキツバキ群落の死角に入ると、一旦立ち止まってブルブルッと身震いしました。 
そのままつづら折れの山道を歩き去ります。 
私が足音を忍ばせて追跡すると、次の曲がり角でカモシカ♂に追いつきました。(@0:56〜) 

意外にも、カモシカ♂は山道にどっかりと座り込んでいました。 
手前に自生する茂みの陰に隠れたつもりでいるようです。 
後ろ向きで座っているものの、横目で油断なくこちらの様子を伺っています。 
撮影アングルを確保するために、私が動画を撮りながら左にそっとずれたら、カモシカは気づいて振り返りました。 
私が少しずつ重心移動しても、うっかり枯れ葉を踏んでしまうと、その物音でカモシカに気づかれてしまいます。 
私は動きを止めて撮影に専念します。 

カモシカ♂の濡れた黒い鼻面がヒクヒクと動いています。 
いくらカモシカが近視でもさすがにこの近距離では私の姿は見えているでしょうし、私の体臭も嗅ぎ取っているはずです。 
「またお前か!」と認識しているようです。 
しばらくすると警戒を解いて、谷側に向き直りました。 
私を見上げようとすると、体をひねってかなり無理な体勢になるから疲れるのでしょう。 
それでも油断なく両耳をそばだてています。 

ヤブサメ♂(Urosphena squameiceps)という野鳥がどこか近くでシシシシシ…♪と鳴き始めました。(@1:18〜) 
ヤブサメ♂が断続的に鳴いている他、遠くからホトトギス♂やウグイス♂のさえずる声♪もときどき聞こえてきます。 

再び撮影アングルを確保するために、私が慎重に左へ移動する度に、カモシカ♂はすかさず振り返って見上げました。(@2:30〜) 
舌をペロッと出しただけで、顔の向きを谷側に戻しました。 
まるでカモシカ♂と「だるまさんが転んだ」をして遊んでいるようです。 
急斜面の山道で立ち止まって長撮りする私は足元が不安定なので、手足の筋肉が疲れてきます。 
カモシカを刺激したくないのはもちろんですが、足場が安定した地点まで隙を見て少しずつ移動したくてたまりません。 
(軽量化のために、この日は三脚を持ってきてませんでした。)
カモシカはもう振り返らなくなりましたが、私が左にそっと移動する度に谷側を向いたまま緊張して神経を研ぎ澄ませています。 
いざとなったらすぐに立ち上がって逃走する準備はできているのでしょう。 
山道に座ったまま居眠りすることはありませんでした。
私も突っ立ってないで、もしも山道に座って撮影したら、カモシカは安心して長居してくれたかな? (次回に試してみることにします。)

カモシカ♂が呼吸する度に胴体が膨張収縮を繰り返しています。 
胴体の皮膚の一部が不規則にピクピクッと動くのは、飛来する吸血性昆虫が体に止まらないように追い払う行動です。 
座っているカモシカの口元を見ても反芻していないということは、リラックス状態では無さそうです。 

山道に座って休むカモシカ♂の頭部に後方からズームインしてみても、傷や欠損はありませんでした。(@7:28〜9:00) 
木の幹でゴシゴシと角研ぎしたばかりなのか、細かい木屑(樹皮のカス?)が角の根元に付着しています。 

実は最近、同一個体のニホンカモシカ♂と出会った際には、私が山道を下から通せんぼした形になり、困らせてしまいました。 
関連記事(1ヶ月前の撮影)▶ 細い山道に座り込んで反芻するニホンカモシカ♂ 
このときは結局、カモシカ♂が山道から逸れて行き、私に道を譲ってくれました。 
そのときとは上下関係が逆転していて、今回は私がカモシカを見下ろす位置に立っています。 
実は同一個体のカモシカ♂がそのときのことを根に持って、私に対する仕返しとして山道を長時間塞いでいるのかもしれません。 (通せんぼ)
だとすれば、向こうも私を特定のヒトとしてしっかり個体識別した上で記憶し、少し意地悪な感情や悪戯心をもっていることになります。 
「やられたらやり返す。倍仕返しだ!」 
あるいは、山中でよく出会う私を人畜無害だと信頼してくれた上で、逆に興味津々で観察しているのかも知れません。 
少しずつ近づいてくる私の意図を察した上で、度胸試し(チキンレース)のつもりで座っているのでしょうか。 
私に対して鼻息を荒げる威嚇行動を一度もやりませんでした。 
野生動物に餌付けしなくても、長い年月をかけて信頼関係を築けばここまで近寄れるようになり、長時間観察できる、と身をもって証明できました。(「ヒト付け」という手法です)

座位休息しているニホンカモシカ♂のほぼ全身が見えるようになりました。 
カモシカの座った横の地面には、踏みしだかれた下草が見えます。 
周囲の葉に食痕は見当たりません。 
この山道は昼間も登山客の往来が少ないので、もしかするとカモシカの寝床(ねぐら)なのかもしれません。

遂に、カモシカ♂が前脚、後脚の順に立ち上がりました。(@12:00〜) 
このときも股間の睾丸を確認できました。 
私を振り返って見上げると、舌舐めずりしてから左脇腹を舐めました。 
次は右後脚の蹄の先で顎の下をそっと掻きました。 
こんな繊細な掻き方もできるのか、と感銘を受けました。 
同じ右後脚の蹄で次は右脇腹を掻きました。 
目の前の灌木の枝葉の匂いを嗅いだものの、眼下腺を擦り付けるマーキングはしませんでした。 
再びこちらを見上げて舌舐めずり。 
カモシカがよくやる舌舐めずりは、どんな意味があるのですかね? 
フレーメン反応の一種なのかと思ったこともあるのですが、どうでしょう? 
ナーバスになっている緊張の現れなのかな? 
つづら折れの山道をゆっくり歩いて右へ下り始め、手前に生えた灌木の茂みの死角に消えました。 

つづく→


【アフィリエイト】

2024/03/14

ニホンアナグマの巣穴を乗っ取ったホンドタヌキを個体識別できた!【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月下旬〜7月上旬

ニホンアナグマMeles anakuma)の母子が転出した後の旧営巣地(セット)にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が繰り返し出没するシーンをまとめました。 
アナグマの不在に乗じてタヌキが空き巣を乗っ取ったのかどうか、判断がつきかねていましたが、遂に結論が出ました。 
同一個体のタヌキが巣穴に住み着いて繰り返し出入りしています。


シーン0:6/29・午後13:29・気温28℃(@0:00〜) 
明るい昼間にたまたま撮れた現場の様子です。 


シーン1:6/29・午後13:34・(@0:04〜) 
別アングルでも広角でトレイルカメラを設置しています。 


シーン2:6/29・午後18:28・気温24℃(@0:07〜)日の入り時刻は午後19:09。 
日没前の夕方に現れたタヌキが巣口Lの縁を忍び足で左へ通り過ぎました。 
そのままセットをぐるっと回って、左手前に戻ってきました。 
巣口Rに近寄り匂いを嗅いだものの、中には入りませんでした。 
鼻面を上げて風の匂いを嗅ぎ、左下に立ち去りました。 


シーン3:6/29・午後18:28・気温25℃(@1:00〜)
別アングルの監視映像でリプレイ。 
画面の右端を通って奥の巣口Rへ向かいます。 
巣口Rの匂いを嗅いだだけで、右に立ち去りました。 


シーン4:6/30・午前3:14・気温20℃(@1:31〜) 
日付が変わった深夜未明にタヌキが再び林縁を左から登場。 
顔つきが随分ほっそりした個体です。 
(水浴した直後なのか、見慣れない新参者なのか、不明です。) 
巣口LRの間を慎重に右へ通り抜けました。 

余談ですが、画面の手前で造網性のクモ(種名不詳の蜘蛛)が水平円網の横糸を張っていました。 
巣口Lの周囲に自生するマルバゴマキ灌木の枝を支柱としています。 
アナグマの巣穴付近を飛び回るハエやアブ、ヤブ蚊などを網で捕らえて捕食するのでしょう。


シーン5:7/1・午前8:57・気温22℃(@2:03〜) 
午前中にタヌキが登場。 
晴れてはいるものの、レンズが一部曇っているので、雨上がりなのかもしれません。 
(とにかく湿度が高そうです。) 
巣口LRの中間地点で身震いし、濡れそぼった毛皮の水気を切りました。 
その場に座って毛繕いを始めました。 
(体の痒い部位を甘噛みしている?) 

この個体は、後ろ姿を見た時に白っぽい毛が生え揃う尻尾の中央部やや右寄りに小さな黒斑▼があるのが特徴です。 
赤外線の暗視映像でも認められ、個体識別に使えそうです。 
タヌキの尻尾の模様に注目する個体識別法は、野紫木洋『オコジョの不思議』という名著を最近読んで、たまたま知りました。(p74の挿絵) 
タヌキは尻尾の模様だけでもバリエーションがあるらしく、これなら私も個体識別ができそうです。 
いつも後ろ姿の尻尾を見せてくれるとは限らないので、正面または横から見た時の特徴も必死で見つけ出す必要があります。
性別も今のところは不明です。
過去の映像も遡って見直すと、この個体が登場していたかも知れません。 

朝帰りしたタヌキが、そのまま慎重に奥の巣穴Rに潜り込みました。 
(その後、出巣Rしたシーンが撮れていません。) 
今はこのタヌキが巣穴Rにちゃっかり住み着いているようです。 


シーン6:7/2・午前4:20・気温18℃(@2:47〜)日の出時刻は午前4:17。 
翌日の日の出直後に、例のタヌキ(尾に黒点▼)の後ろ姿が写りました。 
出巣Rした直後なのかも知れません。 
奥の巣口Rにゆっくり近づき、匂いを嗅いだものの中には入らずに毛繕いを始めました。 


シーン6:7/2・午前4:21・(@3:48〜) 
次にトレイルカメラが起動したときには、広場を経由して手前の巣口Lに来ていました。 
アクセストレンチを辿ってゆっくり入巣L。 
しばらくすると、巣穴Lから外に出てきて、身震いしました。 
ゆっくり出巣Lしたので、アナグマのヘルパー♂に中から追い払われたようには見えません。 
やはりアナグマはヘルパー♂も不在で、タヌキがこの営巣地(セット)を完全に乗っ取ったようです。 
このタヌキは巣穴をねぐらとして使っているようです。
アナグマのヘルパー♂は巣穴を防衛しないで、あっさりタヌキに明け渡したようです。 
ヘルパー♂も母子について行って新しい巣穴に転出したのかもしれません。
アナグマ♀が子育てをする立派な巣穴(セット)は代々受け継いで拡張工事を繰り返すと本で読んでいたのですが、そんな価値のある不動産をあっさり放棄したのは意外です。
翌年の繁殖期までにタヌキから奪い返すつもりなのかな?
実はアナグマのヘルパー♂とタヌキ(尾に黒点▼)が同じ巣穴に仲良く同居しているという可能性も考えられます。(「同じ穴のむじな」仮説)

巣穴Lの中は水浸しで住めない状態なのかもしれない…?と勝手に想像しているのですけど、定かではありません。 
タヌキは右上へ立ち去ったかと思いきや、すぐに戻ってきました。 
奥の巣口Rで身震いしてから入巣R。 


シーン7:7/5・午後15:40・気温24℃(@4:31〜) 
3日後の午後に例の個体(尾に黒点▼)が登場。 
鬱蒼とした二次林の林床は真っ昼間でもやや薄暗いです。 
自然光下で見た時に毛皮が全体的に白っぽい印象なのは、夏毛だからなのでしょうか。 
(老齢個体はメラニン色素が薄れて白髪化するのかな?) 

奥の巣口Rを点検してから身震いし、手前へ来ました。 
手前の巣口Lの匂いを嗅いでから方向転換して、左奥の灌木林へ立ち去りました。 
採餌に出かけたようです。 
その後、帰巣シーンは撮れていません。 


シーン8:7/6・午前4:53・気温19℃(@5:31〜)日の出時刻は午前4:19。 
翌日の早朝にようやく戻ってきた例のタヌキ(尾に黒点▼)が右から回り込んで巣口Rへ向かいました。 
巣口Rの匂いを嗅いだだけで中には入らず、奥の二次林へ向かいました。  
すぐに画面の右上隅から戻ってきたところで、録画が打ち切られました。(尻切れトンボ) 


つづく→

2024/03/08

ニホンアナグマ母子が転出した空き巣穴に夜な夜な忍び込んで内見するホンドタヌキ【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月下旬 

ニホンアナグマMeles anakuma)の母子がどこか別の巣穴に転出すると、それまで使われていた営巣地(セット)にホンドタヌキNyctereutes viverrinus)が夜な夜な侵入するようになりました。 
これまでよりも出現頻度が上がっています。 
アナグマが子育てしている間は特に♀が殺気立っているので、近所のタヌキも遠慮してセットには近寄らないようにしていたのでしょう。
あるいは、アナグマがあちこちに尿による縄張りマーキングを繰り返すことで、まるで結界を張ったように有効だったのでしょう。 
嗅覚の鋭いタヌキは、アナグマの匂いが巣口周辺で日に日に薄れていることを敏感に嗅ぎ取り、日に日に大胆に振る舞うようになっています。 


シーン1:6/26・午前3:22・気温15℃(@0:00〜) 
タヌキが暗い夜にアナグマの営巣地に来たのは、これが初めてです。 
これまでタヌキは明るい日中または薄明薄暮の時間帯にこっそり訪れていて、アナグマの活動が活発になる夜には決して現れませんでした。 
夜は営巣地(セット)に近づこうとするタヌキを巣穴の主であるアナグマが(吠え立てながら?)積極的に追い払っていたのかもしれません。 

深夜未明に現れたタヌキは、左の巣口Lへ真っ直ぐ向かい、そのまま迷いなく巣L内に侵入しました。 

まさに「同じ穴のむじな」という諺通りです。 
アナグマの空き巣をタヌキがこのまま乗っ取るのかな? 


シーン2:6/26・午前3:22・気温16℃(@0:25〜) 
別アングルのトレイルカメラでも、タヌキの巣穴L侵入シーンがしっかり撮れていました。 
しかしカメラの設置アングルがいまいちで、手前の巣口Lがしっかり写っていません。 


シーン3:6/26・午前3:24・(@0:25〜) 
カメラの起動が遅れてしまいましたが、1分20秒後に右へ立ち去るタヌキの後ろ姿が写っていました。 
タヌキは巣穴Lに居座ったり乗っ取ったりしないで、内見しただけで帰ったようです。 


シーン4:6/27・午前0:36・気温19℃(@0:45〜) 
翌日の深夜にもタヌキがアナグマの旧営巣地にやって来ました。 
巣口Rを覗き込んでから、蚊にでも刺されたのか右の脇腹を舐めて毛繕いしています。 
今宵は奥の巣穴Rへ慎重に潜り込みました。

アナグマの母子が転出した後、ヘルパー♂が取り残されたと思ったのですが、ヘルパー♂も不在がちなのかもしれません。 


シーン5:6/27・午前0:36・気温19℃(@1:43〜) 
別アングルの公開映像でもタヌキの入巣Rシーンが撮れていました。 
前夜のタヌキと同一個体かどうか、個体識別ができていません。 

巣穴の主であるアナグマ(ヘルパー♂)が不法侵入者を追い払うために飛び出してこないということは、留守なのでしょう。 
独りになったヘルパー♂はタヌキを怖がって居留守を使っている可能性はどうでしょう? 

タヌキが巣口Rlの横で地面の匂いを嗅いで方向転換しながら排尿マーキングしたように見えたのは、私の気のせいでしょうか?(@2:21〜) 
排尿姿勢から見ると、片足を上げなかったので♀のようです。 
タヌキが潜り込んだのは巣穴Rrでした。 

この後、タヌキが出巣Rするシーンが撮れていません。 
単に撮り損ねたのか、それともタヌキが巣R内に居座ったのか、不明です。 


シーン6:6/28・午前3:41・気温20℃(@2:43〜) 
翌日の深夜未明、土砂降りの豪雨が降りしきる中、タヌキが登場。 
身震いしてから慎重に巣穴Rlの中に潜り込みました。 

この後、タヌキが出巣Rするシーンが撮れていません。 
単に撮り漏らしたのか、それとも巣R内に居座ったのか、不明です。 

一時的な雨宿りではなく、いよいよアナグマの空き巣をタヌキが本格的に乗っ取ったような気がしてきました。


 シーン7:6/29・午前5:12・気温20℃(@3:14〜)日の出時刻は午前4:16。 
翌日の早朝、雨は止んでいました。 
やって来たタヌキが奥の巣口Rを覗き込んで匂いを嗅いだものの、中には入らずに左奥の二次林へ立ち去りました。 

登場するタヌキの個体識別ができるようになれば、より面白くなりそうです。 


【追記】
アナグマ関連の本を読んで「幼獣が生まれた巣穴から母子はやがて引っ越す」という予備知識があったので、そのように解釈しているのですが、トレイルカメラの電池切れで肝心の転出行動を記録できていません。
したがって、タヌキが力づくでアナグマの巣穴を乗っ取り占拠したという可能性も排除できません。


2024/03/04

ニホンアナグマの家族群:6/15〜6/17の野外育児【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月中旬 

ニホンアナグマMeles anakuma)の家族が巣外で過ごす様子を3日分(6/15〜6/17)まとめました。 
この時期はトレイルカメラカメラの電池が消耗していて、撮り漏らしが多いです。 


シーン1:6/15・午後19:02(@0:00〜)日の入り時刻は午後19:06。 
日の入り直前に巣口Rをうろついていた個体が右の巣穴Rに戻りました。 


シーン2:6/15・午後19:55(@0:13〜) 
すっかり暗くなった晩に♀が巣穴Rから外に出て来ました。
♀が巣口Rで幼獣の体を舐め始めました。(対他毛繕い) 
深夜に小雨が降り始めました。 
身震いしてから入巣R。(@0:23〜) 


シーン3:6/16・午前5:35(@0:26〜)日の出時刻は午前4:13。 
早朝に活動を再開したときには、雨は止んでいました。 
明るい昼間にはトレイルカメラの赤外線LEDを点灯する必要がないので電力消費が少なく、通常通り1分間録画してくれます。 

巣外で辺りを警戒していたヘルパー♂がぐるっと回り込んで巣口Rに行くと、中から顔を出した♀と相互毛繕いしました。 
朝の挨拶が済むと♀は巣穴Rへ、ヘルパー♂は巣穴Lにそれぞれ戻りました。 


シーン4:6/16・午後18:07(@0:47〜)日の入り時刻は午後19:07。 
夕方に活動を再開した♀が巣穴Rの奥から後ろ向きで1頭の幼獣を外に引きずり出しました。
しばらくすると、更に2頭の幼獣も巣口Rに出て来ました。 
♀が計3頭の幼獣の毛皮をそれぞれ舐めてやります。 
その合間に、♀自身も体の痒い部位を掻いたり、毛繕いしたりしています。 
親子の群れは林縁の広場に移動しました。 
巣穴Rに残っていた最後の幼獣個体(4頭目)が遅れて外に出てきました。(@1:29〜) 
自力でアクセストレンチを上り、家族に合流しました。 
♀が幼獣全員(計4頭)をまとめて育児するのを見るのは珍しいです。 
これまでは3+1頭の2組に分けて育児していました。 

♀は林縁で採食してるようですが、後ろ姿でよく見えません。 
林縁を歩き回り、幼獣にミミズなどの採食法を教えているのでしょうか。 

親子水入らずの時間が続きます。 
林内からセットに戻ってきた♀は、仰向けでのんびり毛繕いしながら、幼獣たちを自由に遊ばせています。 

幼獣2頭が自力で巣口Rの中に戻りました。 
残る幼獣2頭は巣口Lに戻りました…と思いきや、再び巣口Lの外に出てきてウロウロしています。 
右から来た♀が巣口Lの幼獣2頭に対他毛繕いすると、引率して獣道を左へ向かいました。 
食餌に出かけたようです。
しばらくするとセットに戻ってきた♀は、幼獣2頭を連れて巣口Rへ向かいました。 
午後18:40、ようやく計4頭の幼獣全員をまとめて巣穴Rに連れ戻したことになります。
日によって状況は変わりますが、この日6/16はヘルパー♂が巣穴Lに、残りの母子が巣穴Rにそれぞれ住み分けていました。 


シーン5:6/17・午前4:27(@3:04〜)日の出時刻は午前4:13。 
日の出直後の早朝に活動を始めた成獣が入巣R。 


シーン6:6/17・午後18:11(@3:11〜) 
♀が巣口Rから2頭の幼獣を外に連れ出し、汚れた毛皮を舐めてやります。 
♀は広場に移動して仰向けになり、自ら毛繕いを始めました。 




【アフィリエイト】 『アナグマはクマではありません

2024/03/02

巣外で幼獣を世話するようになったニホンアナグマのヘルパー♂:6/14一夜の育児行動【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月中旬 

ニホンアナグマMeles anakuma)の家族がとある一夜(6/14)に巣外で過ごす様子をまとめました。 
既に報告済みの部分は除外した残りの行動です。 
別アングルに設置した新旧2台の自動撮影カメラで監視しています。 
トレイルカメラ2台分の監視映像を見直すのは大変ですけど、互いに補完し合えるので、アナグマの行動を正しく解釈できるようになります。


シーン1:6/14・午前3:50・気温18℃(@0:00〜) 
手前の巣穴Lに出入りしたアナグマが、巣外で体を掻き、左へ立ち去りました。 
この個体が♀なのかヘルパー♂なのか、識別ができていません。 
外出した個体は体中が泥だらけなので、なんとなくヘルパー♂のような気がするのですけど、定かではありません。 
深夜(日の出前)の行動はこれが最後でした。 
日の出時刻は午前4:13。 

採餌のために外出した個体が帰巣するシーンが撮れていないのが気がかりです。 
技術的な問題でトレイルカメラが撮り損ねているだけなら良いのですが、私の知らない別の出入り口がどこかにあるのでしょうか? 



シーン2:6/2・午後18:12:・気温19℃(@0:29〜) 
アナグマは明るい昼間、巣内で寝ています。 
日の入り時刻は午後19:06。 
日によって状況は変わるようですが、この日6/14は巣穴Lの居室に子育て中の母子が陣取り、ヘルパー♂は巣穴Rに住んでいたようです。 
夕方に薄暗くなると、目覚めた成獣2頭(母親とヘルパー♂)が巣外に出て相互毛繕いするのが、1日の始まりのルーチンであることが分かってきました。 

夕方の挨拶が済むと、♀は巣穴Lに戻りました。 
巣外に残った個体は、体の痒い部分を掻きむしったり毛繕いしたりしています。 
このとき腹面に乳首がなくて股間に睾丸が見えたので、ヘルパー♂(1歳仔♂)と判明。(@1:19〜) 

やがて巣穴Lから後ろ向きで再び外に出てきた♀は、幼獣1頭の首筋を咥えていました。 
幼獣を巣口Lに残したまま、♀はヘルパー♂と再び相互毛繕い。 
その間に巣口Lの幼獣は中に戻ってしまったようです。 
しばらくすると、♀は再び入巣L。 
ヘルパー♂が仰向けの大股開きで毛繕いしてくれるので、睾丸だけでなく陰茎も見えました。(@2:46〜) 
再び出巣Lした♀と相互毛繕い。 
♀の腹面には横から見ても乳首が目立ちます。 

巣口Lから自力で登って来た幼獣に気を取られて♀が振り返ると、ヘルパー♂は♀の背後から尻の匂いを嗅ぎました。(@3:22〜) 
初めて見る行動ですが、イヌはよくやります。
アナグマの場合は、臭腺や肛門腺の匂いを確認しているのでしょう。 

♀は巣口Lから1頭の幼獣の首筋を咥えてアクセストレンチに引きずり出しました。 


シーン3:6/14・午後18:18・(@3:57〜) 
成獣♀♂ペア(というか親子)と幼獣1頭が巣外で一緒になり、仲睦まじく相互毛繕いしています。 
♀が巣穴Lに戻ると、巣外に残ったヘルパー♂が幼獣の毛皮を舐め始めました。(@4:06〜) 
ヘルパー♂から幼獣への対他毛繕い(直接的な育児行動)を見るのは初めてかもしれません。
幼獣がある程度育つまでは、ヘルパー♂が幼獣に触れたり近づいたりするのを♀が禁じていたのではないかという気がしています。
(観察歴の浅い私の個体識別が不完全だっただけで、これまでもやっていた可能性はあります。)

巣外でしばらく幼獣の尻を舐めてやってから、ヘルパー♂は自分が先導して幼獣を巣穴Rへ誘導しました。 
幼獣がヘルパー♂の居る方へ向かって進もうとするものの、巣口Rが深いので踏み留まっています。 
勇気を出して脚を踏み出したら巣口Rの断崖をずり落ちそうになり、おまけに灌木の細い根っこが首に挟まってしまいました。 
進退窮まった幼獣はケケケケ♪というような遭難声♪を発しました。(@6:24〜) 
それを聞いたヘルパー♂が右から戻って来ました。 
同時に♀が左の巣穴Lから心配そうに顔を出しました。 
もがいていた幼獣が巣口Rに転がり落ちてしまいました。 
それを見た♀が慌てて左の巣口Lから駆け寄り、巣口Rで幼獣を舐めてやって安心させました。 
♀が突進してくると、ヘルパー♂は右に退散してしまいました。 
♀に怒られると思って、怯えたように見えます。
擬人化すると、「幼獣が悲鳴を上げたのは俺のせいじゃない。俺は悪くない!悪くない!」とヘルパー♂は慌てて言い訳してそうです。 

やがてヘルパー♂が戻ってくると、3頭(♀とヘルパー♂と幼獣)が一緒になって相互毛繕いを始めました。 
成獣2頭の間に幼獣が割り込もうとしたりして、微笑ましい光景です。 
急に♀が怒ってヘルパー♂に軽く攻撃しました。(@7:31〜) 
ヘルパー♂から♀への対他毛繕いがしつこかったのか、それとも幼獣に構うヘルパー♂を♀が追い払ったのか、カメラのアングルがいまいちでよく分かりませんでした。
いずれにしても、子育て中の母親♀の機嫌を取るのは難しいようです。 
ヘルパー♂はすごすごと林縁に退散して、バツが悪そうに自分の体を掻いています。 
ほとぼりが冷めてから再び広場の母子に近づこうとしたものの、♀に軽く牽制されてしまいました。(@8:00〜) 

ところがすぐ後に別アングルのカメラに切り替わると(@8:10〜)、♀の方からヘルパー♂に歩み寄って仲直りの相互毛繕いを始めました。 
互いに毛皮を舐めたり甘噛みしたりしています。 
なんとも仲睦まじい一家団欒の光景です。 
アナグマの♂が若いヘルパー(1歳仔の息子♂)だという予備知識がなければ、疑いもなく一夫一妻制だと思うはずです。

幼獣の世話をヘルパー♂に任せた♀が手前の巣穴Lに入りかけると、(@8:57〜) ヘルパー♂が急に何かに警戒して(驚いて?)、奥の巣穴Rの方に駆け出しました。 
♀の発した唸り声♪(怒声? 警戒声?)を聞いて、咄嗟に巣穴Rへ逃げ込もうとしたようです。
このとき咄嗟に幼獣を守ろうとしないで広場に置き去りにした点が興味深く思いました。 
今回は幸い、何事もありませんでした。 
しかし、危機に際して幼い兄弟姉妹を見殺しにしかねないヘルパー♂の不作為は注目に値します。 
アナグマにも嫉妬からくるカイン・コンプレックスがあるとしたら、ヘルパー制度はそもそも成り立たないはずです。
ヘルパー♂と幼獣が異父兄弟だとすると、血縁度が0.25と低いため、ヘルパー♂が幼獣を守るという利他的行動のメリットが乏しいと説明可能です。 
嗅覚が鋭いアナグマは家族内で互いに体臭を嗅いだだけで個体識別できたり、血縁度まで分かってしまうのでしょうか? 
あるいは、母親♀が怒るので、ヘルパー♂は幼獣を救助するどころか下手に手を出せないのかな? 
例えば、ヘルパー♂が巣内から幼獣を咥えて外に連れ出す行動を私は一度も見たことがありません。(母親♀が許さないのでしょう。) 

やがて幼獣は自力でアクセストレンチを下って母親の後を追うように入巣Lしました。 
 一度ヘルパー♂は巣穴Lに戻りかけたのですが、中を覗き込んだだけで、巣外の広場に戻りました。 
ひたすら毛繕いと体掻きを続けています。 

巣外に独り残されたヘルパー♂は巣口Rに向かいました。 
この後、ヘルパー♂は独りで巣穴Rの拡張工事を始めました。 

関連記事()▶  


シーン4:6/14・午後18:52・気温22℃(@9:45〜) 
穴掘り作業が一段落したのか、それとも重労働で疲れた(飽きた)のか、ヘルパー♂が広場で仰向けになり、毛繕いしています。 
赤外線の暗視動画はモノクロなので分かりづらいのですけど、おそらく全身黒土で汚れているようです。 
腹面に乳首が見えず、股間に陰茎および睾丸があることから♂と分かります。(@9:55〜) 
長々と時間をかけて毛づくろいすると、ようやくヘルパー♂は営巣地を離れて獣道を左に立ち去りました。(@11:40〜) 
空腹になって採餌に出かけたのかもしれません。 
あるいは、体の泥汚れを落とすために、近くの小川や田んぼへ水浴びしに行ったのではないかと予想しました。
もしかしてアナグマは泥汚れも気にならず、水浴行動をやらないのかな?
アナグマが頻繁に体を掻いているということは、吸血性の体外寄生虫に悩まされていることを意味します。
砂浴びをする鳥のように、アナグマも穴を掘って土を全身に浴びることで体外寄生虫を少しでも駆除しようとしているのかもしれません。

ヘルパー♂の帰巣シーンは撮れていません。


シーン5:6/14・午後19:20・気温21℃(@11:46〜) 
巣穴Lから♀が外に出てきました。 
巣外で独り身だしなみを整えると、1頭の幼獣を外に連れ出して毛繕いを始めました。 
更にもう2頭の幼獣も巣口Lから自力でアクセストレンチの傾斜を登って来ます。 
巣外に出た幼獣は計3頭になりました。 

今回も4頭の幼獣を同時に外出させるシーンが一度もなかった点が興味深いです。 
どうやら、この母親♀は幼獣を3+1頭の2組に分けて育児をしているようです。 
授乳・睡眠のリズムが1頭だけ違うのでしょうか。
アナグマの♀には普通3対6個の乳首があるはずですけど、ひょっとするとこの♀個体は乳の出が悪くて、4頭の幼獣を同時に授乳できないのかもしれません。
来季のヘルパー♂候補に特別な帝王学を授けるために、他の兄弟姉妹と分けて育てているとしたら面白いですね。(素人の勝手な妄想です) 
次のヘルパー候補の幼獣♂の子育てはヘルパー♂に任せていたりして…と素人が勝手に妄想してみました。
この問題を解明するには、映像から幼獣を個体識別しないといけません。
しかし幼獣の性別を見分けるのも私には難し過ぎて、とても無理です。 

後半になるとトレイルカメラの電池が消耗して、断片的な短い映像しか撮れなくなりました。 
それでも熱源を動体検知する度に健気に起動して、短いながらも録画してくれます。 

午後19:25にカメラの電池が完全に切れて、撮影終了。 
最後の画面には2頭の幼獣だけが写っていて、♀は不在に見えます。 
左の死角にいるのか、それとも巣穴Lに戻って残りの幼獣の世話をしているのか、不明です。


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


アナグマは巣外で過ごすほとんどの時間を毛繕いと体掻きに費やしています。 
体中が痒い原因は、巣内で吸血性の体外寄生虫(ノミやダニなど)が蔓延しているのではないか?と心配になります。 
ただし、疥癬のように体毛がどんどん抜ける症状は見ていません。
余談ですが、設置したトレイルカメラの電池を交換するために、定期的に現場入りする必要があります。 
撮れた動画をその場でチェックするのに長時間かかるため、私はアナグマ営巣地(セット)の林床に直に座り込んで作業していました。 
梅雨時は蒸し暑いので、長ズボンではなく短パンを履いていました。 
ヤブ蚊は意外と気にならないのですが、帰宅すると、股間がひどく痒くなりました。 
おそらく私が気づかない間に何か吸血性の虫が私の脚を這い登って短パンの隙間から潜り込み、私の無防備な股間を刺したり噛んだりしたのでしょう。 
皮膚科を受診するまでもなく、まめに入浴して股間を清潔に保ったら自然に治癒しました。
患部を掻き毟りたくなる衝動を必死に我慢するのが大変でした。
これに懲りた私は、アナグマ営巣地で地面に直接座るのを止めました。 
必ず折り畳み椅子を持参して、それに座るようにしています。 
長ズボンを履いていたら股間の虫さされを防げたかもしれませんが、夏は耐え難い暑さで熱中症になりそうです。 
営巣地の森に踏み込む前に虫除けスプレーを予め全身に噴霧するかどうか迷いました。
嗅覚の鋭いアナグマが虫除けスプレーの異臭を嫌がるのではないかと心配で、今季は一度も使わず我慢しました。 
こういう細かいノウハウはアナグマ関連の文献を読んでも書いてないため、自分で失敗しながら工夫するしかありません。 
お恥ずかしい裏話ですが、せっかくですのでブログに記録しておきます。 




【アフィリエイト】



 

↑【おまけの動画】 
兄弟を助けたくなる条件とは?利他行動を定式化した「ハミルトン則」【血縁淘汰2】#64 by ゆる生態学ラジオ 

ラジオ形式にこだわっているチャンネルのため、この難解なトピックを図表を使わずにトークだけで解説しようとチャレンジしています。 
(私にはとても無理です。)

2024/02/29

ヘルパー♂が巣穴を掘る作業中に進捗状況を確かめに来て労をねぎらうニホンアナグマ♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月中旬 6/14・午後18:45〜18:47(日の入り時刻は午後19:06) 

日没前の夕刻にニホンアナグマMeles anakuma)のヘルパー♂が巣穴Rrの拡張工事に没頭しています。 
巣穴の中から掻き出した土砂に混じって腐葉土も出土しました。 
おそらく巣材(寝床)として大量に搬入した落ち葉などが分解したものでしょう。 
今まで使っていた居室(子供部屋?)を大幅に改築工事していることが伺えます。 

ヘルパー♂が巣穴Rrの奥深くに潜り込んでいるときに、左側の巣穴Lから母親♀が顔を出しました。 
腹面に乳首が発達していて、左右の目が不均等(右目<左目)なのが、この♀個体の特徴です。 
夕方の営巣地(セット)周辺を警戒しているだけかと思いきや、♀が巣穴Lから外に出てきて巣穴Rの方へ早足で突進しました。 


不意をつかれたヘルパー♂が巣口Rrから慌てて外に跳び退りました。 
ヘルパー♂の方が母親♀よりも少しだけ体格が大きいのに、♀には頭が上がらない様子が見て取れます。 

てっきり、泥だらけで面影が失せたヘルパー♂を外敵(侵入者)と誤認した♀が攻撃するのかと思いました。
アナグマは視力が良くない上に薄暗い時間帯ですし、穴掘りで全身真っ黒に汚れた息子(1歳仔♂)と気づかなくても無理はありません。 
擬人化すると、おかんが息子に 「ちょっとあんた家の玄関先で何してんの、脅かさないでよ〜、誰かと思ったわ」 とか言ってそうです。

しかし、2頭の小競り合いにはならず、♀はヘルパー♂が掘ったばかりの巣穴Rrに入って中を調べています。 
内見を済ませた♀が外に出てくると、巣外で待っていたヘルパー♂に近づいて互いに毛繕いをしました。 
しかし、今回の相互毛繕いは儀式的な挨拶のようなもので、短く終わりました。 
ヘルパー♂の毛皮の泥汚れを♀が対他毛繕いで本格的に落としてやることはありませんでした。 

ヘルパー♂の労をねぎらった♀が元の巣穴Lに戻ると、ヘルパー♂はまた独りで巣口Rrの穴掘り作業をせっせと再開しました。 

左右に離れた2つの巣穴LとRは内部でつながっているはずです。
いくら母親♀が幼獣4頭の育児で忙しいからと言っても、ヘルパー♂が巣穴Rrで穴掘りしていることは、巣L内の♀はとっくに承知しているはずです。 
今さらヘルパー♂の穴掘り作業の物音を外敵の侵入と誤認するとは考えにくいです。 

ニホンアナグマの社会では、穴掘りの重労働はヘルパー♂に任せて、母親は幼獣の育児に専念する、という分業が成り立っているようです。
現ヘルパー♂は性成熟する翌年には♀から営巣地を追い出され、次に選ばれた弟が新たにヘルパー♂を務めることになります。
ヘルパー♂が掘った巣穴は、♀が存命中は自分の財産(不動産)になりません。
つまり、ヘルパー♂を務める個体にとって、♀のために巣穴を掘ってやる行動は明らかに利他的行動になります。

※ ヘルパー♂自身が住む巣穴でもあるので、100%利他行動とは言えませんね。

親孝行するのは当然だという人間社会の価値観を持ち込んでも仕方がありません。
(ヒトにはヒトの、アナグマにはアナグマの暮らし方があるのです。)

アナグマにおけるヘルパー制度の進化は血縁選択で説明できるでしょうか? 
ヘルパー♂が母親の育児を間接的に手助けすれば、血縁度の高い弟や妹が無事に育つ確率が高まり、結果的にヘルパー♂の適応度が上がります。 
ここで問題になるのは、父親が同じとは限らないという点です。 
アナグマの交尾は一夫一妻ではなく乱婚ですから、ヘルパー♂が(間接的に)世話する相手は異父の弟妹となる可能性が高く、血縁度は0.50から0.25に下がります。 
血縁度が0.25と低ければ、アナグマのヘルパー♂が♀の育児(対他毛繕いなど)を直接的に手伝わない理由も納得できそうです。
アナグマ家族の全個体から採血したり毛根を採取したりしてDNAで親子鑑定(父性鑑定)すれば、実際の血縁度が求められるはずです。 
残念ながらアマチュアがこれ以上は追求できません。

ある年に母親♀が産んだ幼獣の性別がもしも全て♀だった場合、翌年のヘルパーは若い娘♀(1歳仔♀)が務めるのかどうか、気になります。
例えば今年2023年に生まれた幼獣4頭が全て♀である確率は1/16=6.25%です。
(まさか、アナグマ♀は女王蜂のように子供の性別を自由自在に産み分けられるのでしょうか?)
ヘルパーが♀の場合には、♂よりも非力で巣穴を掘るのは苦手かもしれません。
しかし、乳母として幼獣(弟や妹)に授乳できる可能性があり、ヘルパーが♂の場合よりもヘルパー自身の適応度がより高まることが予想できます。
ヘルパー♀が独立したときのために子育ての練習になる、というメリットもあるでしょう。
母親♀が死亡した時に娘(ヘルパー♀)への巣穴の継承(相続)もスムーズに進むはずです。
逆にアナグマのヘルパーが♂という現状は、私からすると奇妙な社会で、どうやって進化したのか不思議です。



【アフィリエイト】

2024/02/27

ニホンアナグマのヘルパー♂は母親♀と相互毛繕いするだけで育児を手伝わない:6/13一夜の諸活動【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月中旬

新旧2台のトレイルカメラで別アングルからニホンアナグマMeles anakuma)の営巣地(セット)を監視しています。 
母親♀がとある一夜(6/13)に巣外で幼獣4頭の世話をする様子をまとめました。 
この日はヘルパー♂も登場します。

夜のアナグマは巣外に出て2つの巣穴LRをうろうろと行き来しています。 
巣内でつながっているはずなのに、なんでそんなことをするのか不思議です。
日によって状況は変わりますが、6/13の時点では、巣穴Rは母子が暮らす育児部屋として使われていて、巣穴Lにはヘルパー♂が住んでいると映像から推測できました。 
巣穴の内部構造を素人がどうやって確かめたらよいか分かりません。 
非破壊検査の地中レーダー探査とかやれば、中に住むアナグマに影響を与えずに巣穴の構造を知ることができるのかな?

梅雨の時期なので、断続的に雨が降ります。 
巣外のアナグマはときどき身震いして濡れた毛皮の水気を切るだけで、雨をほとんど気にせずに活動しています。(同じ日の雨夜に幼獣を外に連れ出す動画はこちら。) 

夜行性のアナグマは明るい昼間は巣内で寝て、夕方に暗くなってから巣外活動を再開します。
(日の入り時刻は午後19:05) 

午後18:06〜・気温23℃(@2:38〜) 
久しぶりに成獣2頭(母親♀とヘルパー♂)が同時に巣外に出て、挨拶代わりの相互毛繕いをし始めました。 
日没前の林床は薄暗いですが、辛うじて自然光下で撮影できました。 
乳首または陰茎が見えないと個体識別できないのがつらいところです。 
なんとなく、巣穴Lに近い方がヘルパー♂で、巣穴Rに近い方が♀ではないかという気がします。 
途中から、巣口Rに計4頭の幼獣たちが出て来ました。(@4:38〜) 
巣口Rのアクセストレンチは傾斜が急すぎて、幼獣はまだ自力では登れないようです。 
幼獣が勝手に外に出れないように作られてあるのでしょうか? 
それとも逆に、幼獣にとってバリアフリーとなるように巣口Rのアクセストレンチをなだらかにする工事をこれからするのかな? 

ヘルパー♂との相互毛繕いを終えた♀が巣口Rに戻って、幼獣の毛皮を舐めてやります。 
巣口Rに戻った成獣の腹面にようやく乳首が見えたので、私の予想通り♀と判明しました。(@5:24〜) 
ヘルパー♂は一旦、巣穴Lに戻りました。(@5:30〜) 

母親♀は独りで奥の林縁に座り、仰向けで毛繕いしています。 
巣口Rからようやく幼獣が1匹ずつ外に登ってきて、母親の元へ辿り着きました。 
幼獣は邪魔な落枝を乗り越えるのに苦労しています。 
♀は労をねぎらうように幼獣の体を舐めてやります。 
♀が前から来た幼獣とすれ違う際に跨いで尻を軽く擦り付けました。(アロマーキング@9:20〜) 
勝手に巣穴Lに入ってしまった幼獣の首筋を咥えて外に連れ戻しています。 
再び幼獣にアロマーキング(@11:04〜)。 
ようやく全ての幼獣を巣穴Rに連れ戻すと、♀は独りで巣穴Lへ入りました。 

再びヘルパー♂と♀の成獣2頭だけが巣外に出てきました。(@12:13〜) 
アクセストレンチLに仲良く並んで座り、相互毛繕いを始めました。 
アナグマの社会にヘルパー制度があると知らないでこの光景を見たら、一夫一妻制で仲の良い♀♂つがいだなと思ってしまいますね。 
春の交尾期の様子を観察すると、アナグマが一夫一妻制でないのは私でも分かります。
もう相当暗くなったのに、新機種のトレイルカメラがなぜか赤外線の暗視モードに切り替わってくれません。 
仕方がないので、動画編集時に強引に明るく加工しました。 
画質が粗くなるのは仕方がありません。 
別アングルに設置した旧機種では暗視モードで録画できています。 

ようやく♀が別れて入巣Rしました。 
ヘルパー♂だけが巣外に残り、痒い体を掻いたり自分で毛繕いしたり、のんびり過ごしています。 
しばらくすると、ヘルパー♂も入巣Lしました。 
すぐにまた出巣Lしました。 
実はこの後で、ヘルパー♂は巣口Rを掘り広げる工事を始めました。 

すっかり暗くなると(晩に)、巣口Rから母子が外に出て来ました。 
♀から幼獣へ対他毛繕い。


ヘルパー♂が育児(幼獣への対他毛繕いなど)を直接的に手伝っている様子を私はこれまで一度も見たことがありません。 
(個体識別が不完全なせいで見落としているのかと不安になります。)
むしろヘルパー♂であっても幼獣には触れるのも近づくのも母親♀が決して許さず神経質に守っているのかもしれません。 
真っ暗な巣内ではヘルパー♂も育児を分担しているのかな?
ファイバースコープを巣内に突っ込んで観察してみたいのですが、育児期間中に下手なことはしない方が良さそうです。
ヘルパー♂が♀に餌を持ってきて給餌する様子も見たことがありません。
ヘルパー♂が用心棒としての役目を果たしている様子も見たことありませんが、営巣地の周辺に排尿マーキングして歩くだけでも、縄張り防衛になっているのかもしれません。
何が言いたいかというと、アナグマのヘルパー♂は穴掘り以外で♀の育児をほとんどヘルプしていないのに、果たしてヘルパーと呼んで良いのかどうか疑問になってきました。
ヘルパー♂の貢献度に個体差があるのかな?(年によって違うのか?)



※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 




2024/02/26

梅雨の深夜に幼獣2頭を外に連れ出すニホンアナグマ♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月中旬 

シーン1:6/13・午前3:38・雨天・気温20℃(@0:00〜) 
雨が降りしきる深夜未明にニホンアナグマ♀(Meles anakuma)が巣外から手前の巣穴Lに入ると、2頭の幼獣を外に連れ出しました。 
そのまま巣口Lで幼獣たちの毛繕いをしてやっています。 
残る2頭の幼獣は巣内Lでおとなしく寝ているのでしょう。


シーン2:6/13・午前3:40・(@0:51〜) 
巣外で♀が身震いしたり地面を掘ってミミズなどの餌を探したりしている間に、幼獣2頭が自力でアクセストレンチを登ってきます。 
出迎えた♀は幼獣を咥えたり前足で転がしたりして、手元に引き寄せ、排泄物で汚れた尻の辺りを重点的に舐めてやります。 


シーン3:6/13・午前3:42・(@1:51〜) 
♀が幼獣を誘導して少しずつ右へ移動します。 
その途中で♀が幼獣の上に軽く座って尻を擦りつけ、匂い付けしたようです。(アロマーキング@2:12) 
♀は林床の地面や落葉の匂いを嗅ぎ回り、自分の食べる餌を探しているようです。 


シーン4:6/13・午前3:42・(@2:51〜) 
別アングルに設置した旧機種のトレイルカメラによる広角の映像で同じシーンを振り返ります。 
後半♀は幼獣を連れて左へ探餌徘徊に行きました。 


シーン5:6/13・午前3:43・(@2:55〜) 
新機種トレイルカメラの映像に戻ります。 
♀が林床で探餌徘徊している間に、幼獣2頭は♀の周囲をうろついています。 
子連れなので遠出はしないで、巣口Lの周囲に留まっています。 
幼獣は空腹ではないようで、♀の乳首に吸い付くことはありませんでした。 
深夜でも気温が充分に高いので、幼獣が雨に長時間濡れても低体温症になる心配はないようです。 
むしろ水浴代わりのシャワーになって、体毛の汚れが落ちるのかもしれません。 


シーン6:6/13・午前3:44・(@3:07〜) 
♀が率先して奥の巣穴Rに入りました。 
2頭の幼獣もその後をついて行きますが、入巣Rまで見届けられませんでした。 


シーン7:6/13・午前3:44・(@3:38〜) 
別アングルの広角映像に切り替えます。 
カメラの電池が消耗していて、断片的な映像しか撮れなくなりました。 
♀が右の巣穴Rに入った後は、幼獣2頭だけが巣外に取り残されています。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


2024/02/24

巣外で幼獣の世話をするニホンアナグマ♀:6/12一夜の育児行動【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月中旬 

ニホンアナグマMeles anakuma)の母親♀がとある一夜(6/12)に巣外で幼獣4頭の世話をする様子をまとめました。 
巣外での授乳シーンは既に別の動画にまとめたので、それ以外の育児行動です。(対他毛繕いなど) 
新旧のトレイルカメラ2台で別アングルから営巣地(セット)を監視しています。

母親♀は幼獣の首根っこを咥えて1頭ずつ巣外に引きずり出すと、排泄物(幼獣の糞尿)で汚れた毛皮を丁寧に舐めてやります。 
幼獣は未だ巣外で排泄できないので、下の世話は母親♀の仕事です。 

巣穴付近で幼獣を遊ばせている間に、♀は自分の痒い体を掻いたり毛繕いしたりしています。 
複数の幼獣同士でくんずほぐれつしている時などに、幼獣の鳴き声がかすかに聞こえるときがあります。 

幼獣全員を巣内に戻してから、♀は独りで巣穴を離れて外出します。 
縄張りを巡回して採餌するのでしょう。
その間、幼獣は巣内でおとなしく留守番している(寝ている?)ことに感心します。 
幼獣だけで勝手に巣外に出てくることはありません。

♀はなぜか幼獣を3+1頭の2組に分けて育児しているようです。 
授乳や育児の負担を軽減するためにそうしているのか、幼獣1頭の体調が悪くて巣内で寝ているのか、不明です。 
幼獣の性別によって2群に分けて育児しているのだとしたら面白いのですが、私にはとても見分けられません。
例えばヘルパー候補の♂を幼獣の時期から選んで他の兄弟姉妹とは別に育てている(帝王学?を教えている)としたら、面白い話です。

アナグマは主に夜行性で、明るい昼間は巣内で寝ています。 
日が暮れると活動を始め、明け方まで断続的に巣外で過ごします。 

ヘルパー♂の存在感が薄くて、何をしているのか不明です。 
(観察歴が浅い私は、アナグマの個体識別にいまいち自信がありません…。) 
この時期の母親♀は乳首の有無ではっきり見分けられます。


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 
※ 鳴き声が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 


2024/02/23

巣外のアクセストレンチに排尿するニホンアナグマ♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月中旬・午後23:48・気温20℃ 

夜遅くにニホンアナグマ♀(Meles anakuma)が巣外に独りで座って毛繕いしていました。 
自分の乳首を舐めてきれいにしています。 

♀は立ち上がって左に少し移動すると、手前の巣穴Lから伸びるアクセストレンチに跨りました。 
そのまま腰を軽く屈んで排尿し始めたので、衝撃を受けるほど驚きました。 
音量を上げても放尿音は聞き取れませんでした。 
暗視カメラに対して後ろ向きですが、尿道口から放出される尿に赤外線が反射して白く光って見えます。 
乾いた地面がアナグマの尿で黒く濡れ、その範囲がみるみるうちに広がります。 
傾斜のついたアクセストレンチを伝って小便が巣内に流れ込んでいます。 
それを見てアナグマ♀は「しまった!」と後悔したかどうか、アナグマの気持ちは分かりません。
少なくとも、ここで排尿したのは最初で最後でした。
我々ヒトの衛生感覚では理解し難く愚行としか思えないのですが、営巣地のマーキング(匂い付け)も兼ねているのでしょうか? 
ヨチヨチ歩きの幼獣たちが巣外で迷子にならないように、アクセストレンチに念入りに匂い付けしたのかな?
マーキングなら少量の尿で充分なのに、今回は相当な量を一気に排泄しました。
子育てで忙しいアナグマ♀は、巣穴から離れたところ(林内など)に行って排尿する暇もないのでしょうか? 
用を足してすっきりした♀は、手前の巣穴Lに戻りました。 

別アングルに設置したトレイルカメラによる広角映像でもアナグマの放尿シーンが撮れていました。 
手前に自生するマルバゴマキ灌木が邪魔でよく見えないのが残念です。 

その後、アナグマはアクセストレンチを掘る拡張工事を始めませんでした。 (巣外で幼獣に授乳を開始
したがって、アクセストレンチの土を柔らかくして掘りやすくするために放尿したという可能性は否定できます。

関連記事()▶ 


2024/02/22

育児に疲れて深夜に巣外で独り横になって休むニホンアナグマ♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月中旬・午前3:45頃 

深夜未明にニホンアナグマMeles anakuma)成獣が単独で巣外の林縁で休んでいます。 
横臥したまま体を掻きました。 
目を閉じたり開けたりしているので、横臥でうつらうつらと居眠りしているようです。 
動きに乏しいので、一部は5倍速の早回し映像でご覧ください。 

下腹部に陰茎がちらっと見えたような気がしたのでヘルパー♂かと思ったのですが、左右の目の大きさが異なる(右目<左目)上に、腹面に乳首が見えることから、♀のようです。 
(右手前に生えた灌木が邪魔で、しっかり観察できません…。) 
幼獣4頭の育児でお疲れの母親♀が巣外でしばし休憩しているのでしょう。 

※ トレイルカメラの電池が消耗していて、細切れの映像しか撮れなくなりました。
それでもアナグマが身動きする度に健気に起動して、短時間ながらも録画しようとします。


川岸でカルガモの雛5羽を見守る♀(野鳥):羽繕い・羽ばたき練習・ストレッチ運動

 

2023年6月中旬・午後14:10頃・晴れ 

街なかを流れる川の岸辺でカルガモAnas zonorhyncha)の親子群を見つけました。 
手前から奥に向かって流れる川の岸近くの浅瀬で5羽の雛が集まり、各々が羽繕いしています。 
そこは幼い雛でも立てるほどの浅い水深です。 
羽繕いの合間にときどき立ち上がって素早く羽ばたくのは、飛翔筋を鍛えるための運動かもしれませんが、カルガモ成鳥でも見られるように、羽繕いの後のルーチンと思われます。 
それから、短い翼を伸ばしたり、片足立ちになって後脚を伸ばしたりして、ストレッチ運動するときもあります。 
水かきのついた足で体の痒い部位を掻く行動も見られました。 
身だしなみを整えると、首を曲げて自分の背中の羽毛に差し込み、休息体勢になりました。
欠伸をしている雛もいます。 

その間、親鳥♀だけが石垣の護岸に上陸して佇み、プールの監視員のように油断なく5羽の雛を見守っています。 
黒い過眼線のおかげで、♀がどこを見ているのか分かりにくいのですが、横目で私を警戒しているようです。 

1羽の雛が母親♀の元へ行こうとしても、石垣の護岸を登れません。 
♀の足元で石垣の隙間を啄んでいるのは、小さな虫を捕食しようとしているのでしょう。 
川面にはアメンボ(種名不詳)が滑走していますが、カルガモの雛たちは捕食しようとせず見送りました。 

兄弟姉妹の群れから1羽だけ離れていた雛鳥が川に戻って嘴を川の水に浸し、羽繕いを始めました。 


2024/02/21

ニホンアナグマ母子が巣外で過ごす6/11一夜の行動【トレイルカメラ:暗視映像】

 



2023年6月中旬 

とある一夜(東北地方南部で梅雨入りした6/11)にニホンアナグマMeles anakuma)の営巣地(セット)で撮影された母子の行動をまとめてみました。 
この夜の授乳シーンなどはすでに別の動画にまとめました。 
2台のトレイルカメラで別アングルから監視すると、互いに補完し合ってアナグマの行動が良く理解できるようになります。 


シーン1・6/11・午前1:52・気温18℃(@0:00〜) 
手前の巣口Lから伸びるアクセストレンチに座った母親♀の方へ幼獣3頭がよちよちと登って行きます。 
♀は幼獣の毛皮を甘噛みしたり舐めたりしてきれいにしてやります。(対他毛繕い) 
1頭の幼獣が自分で身震いしました。 


シーン2・6/11・午前1:52・(@1:00〜) 
別アングルで設置した旧機種のトレイルカメラで撮れた広角映像に切り替えて、同じシーンを振り返ります。 
左の巣口Lから3頭の幼獣が次々に登って行き、♀の元へ行きました。 


シーン3・6/11・午前2:02・(@1:12〜) 
♀が先に入巣Lした後で、取り残された2頭の幼獣が覚束ない足取りでアクセストレンチを下りていきます。 
1匹が横転して斜面の溝を巣口Lにずり落ちました。 
幼獣の安全面でもアクセストレンチは上手いこと出来ていると感心しました。 


シーン4・6/11・午前2:05・(@1:33〜) 
単独で出巣Lした成獣が巣口Lで身震いしてからノソノソと歩いて左上奥の二次林に入って行きました。 
この個体は、♀ではなくヘルパー♂だったようです。 


シーン5・6/11・午前2:05・(@1:51〜) 
ヘルパー♂が採餌に出かける様子を別アングルの広角映像でご覧ください。 


シーン6・6/11・午前2:08・(@1:58〜) 
出巣Lした♀(右目<左目;乳房あり)が巣口Lで身震いしてからぐるっと回って巣口Rを点検。 
左上奥の二次林へ向かいました。 


シーン6・6/11・午前2:08・(@2:45〜) 
別アングルの広角映像。 


シーン7・6/11・午前2:14・(@2:52〜) 
成獣1頭が帰巣Lしました。 
カメラの起動が遅れて、どちらの個体か見分けられません。 


シーン8・6/11・午前2:15・(@3:00〜) 
巣口Lに座っていた♀が左の巣穴Lに入る際に、巣口Lに居た幼獣とすれ違いました。 


シーン9・6/11・午前2:21・(@3:11〜) 
出巣Lした♀が身震いしてから座り、自分の痒い首筋を右後足で掻きました。 
ノソノソ歩いて奥の巣穴Rへ入りました。 


シーン10・6/11・午前2:21・(@3:47〜) 
別アングルの広角映像に切り替えます。 


シーン11・6/11・午前2:36・(@3:58〜) 
幼獣4頭の引っ越し(L➔R)を無事に済ませた後、♀が手前の巣穴Lに戻ってきました。 
幼獣が残っていないことを確かめると、再び外に出てきました。 
広場をぐるっと回ってから入巣R。 


シーン12・6/11・午前2:36・(@4:46〜) 
別アングルの広角映像で振り返ります。 
♀(右目<左目)が入巣Rするまでしっかり見届けることができました。 


シーン13・6/11・午前3:11・気温21℃(@5:05〜) 
巣外で仰向けになった♀が毛繕いしたり痒い体をゴシゴシ掻いたりしています。 
腹面に乳首が見えます。 
最後は手前へ歩いて死角に消えました。 


シーン14・6/11・午前3:10(@5:53〜) 
別アングルの広角映像で振り返ります。 
最後は入巣Lせずに獣道を歩いて左に向かいました。 


シーン15・6/11・午前4:12・気温18℃(@6:04〜) 
外出から戻ってきた♀が身震いしてから入巣R。 


シーン16・6/11・午前4:12(@6:20〜) 
別アングルの広角映像で振り返ります。 


シーン17・6/11・午後19:03・気温18℃(@6:27〜) 
日中は巣内で寝て、すっかり日が暮れた晩に活動を再開します。 
巣外でぷるぷると身震いしてから入巣R。 


シーン18・6/11・午後19:02・気温18℃(@6:38〜) 
別アングルの広角映像で振り返ります。 


シーン19・6/11・午後19:44・気温18℃(@6:45〜) 
♀が謎の外敵を追い払った直後、巣口Rに戻って幼獣3頭に対他毛繕いしてやっています。 


シーン20・6/11・午後19:46・気温18℃(@6:57〜) 
計4頭の幼獣が巣口Rに全員揃っています。 
♀は営巣地(セット)をうろつき始めました。 
巣口LRの中間地点に座って自分の体を掻いてから、巣口Rに戻って幼獣3頭の毛皮を舐めてやります。 
巣口Rで遊ぶ幼獣たちとすれ違うように♀が入巣Rしました。 

暗視映像で見た時に♀の目の大きさが左右で異なって見える(右目<左目)のは、もしかすると斜視なのですかね? 


シーン21・6/11・午後19:51・気温18℃(@7:21〜) 
♀が右へ立ち去りました。 


シーン22・6/11・午後19:56(@7:35〜) 
巣材を集めてきた直後、出巣Rした♀が身震いしてから今度は右へ向かいます。 
しばらく戻ってこなかったので、採餌に出かけたのでしょう。 


シーン23・6/11・午後21:51・気温18℃(@7:50〜) 
アクセストレンチLに佇んでいる成獣の後ろ姿が写りました。 
毛皮が濡れているように見えるのは、気のせいでしょうか? 
外出中に夜露で濡れたのか、それとも水場や水田で水浴してきたのかな? 
身震いしてから入巣R。 


シーン24・6/11・午後21:51(@8:22〜) 
別アングルの広角映像で振り返ります。 
この映像では、毛皮が濡れているようには見えませんね。 


シーン25・6/11・午後23:14・気温17℃(@8:49〜) 
♀が身震いしてから巣口LRの中間地点に座り込みました。 
左右の後足を使って痒い体をゴシゴシ掻いてしばらくすると、大量の細かい抜け毛(フケ?)が夜風に乗って舞い、カメラに向かって飛んできます。 
♀は奥の巣穴Rへ向かいました。 


シーン26・6/11・午後23:14・(@9:49〜) 
別アングルの広角映像で振り返ります。 
体を掻いてから巣口Rに幼獣を迎えに行きました。 
このとき軽く唸るように鳴いた♪のですが、5倍速の早回し映像に加工してしまいました。 


シーン27・6/11・午後23:16・(@10:01〜) 
小雨がぱらついています。 
幼獣1頭を巣外に連れ出していました。 
♀は体を掻いてから、幼獣を外に放置したまま、さっさと入巣Lしてしまいました。
巣口LRの中間地点に独り残された幼獣は、辺りを静かに(鳴かずに)ウロウロするばかりです。 
♀が巣口Lに顔を出したところで、録画終了。 


シーン28・6/11・午後23:16・(@11:01〜) 
別アングルの広角映像に切り替えます。 
♀が巣外に幼獣を独り短時間だけ放置するのは珍しくないことが分かってきました。 
巣L内に居る他の幼獣3頭の様子を見に行ったのでしょう。 
しばらくすると、巣外で母子が合流。 


シーン29・6/11・午後23:18・(@11:23〜) 
♀が幼獣を先導して奥の巣穴Rに入りました。 
幼獣は追いかけながら♀の乳首に吸いつこうとします。 
巣口Rで♀が幼獣を咥えて持ち上げました。 
入巣Rしたがらない幼獣に手を焼いているのかな? 


シーン30・6/11・午後23:18・(@11:50〜) 
別アングルの広角映像で振り返ります。 
最後は巣口Rに2頭の幼獣の姿が見えます。 


※ 動画の一部は編集時に自動色調補正を施しています。 


2024/02/20

晴れた夜でも雨夜でも幼獣を連れて隣の巣穴に引っ越すニホンアナグマ♀【トレイルカメラ:暗視映像】

 


2023年6月中旬

ニホンアナグマ♀♂(Meles anakuma) 

シーン1・6/11・午前2:23・(@0:00〜) 
♀が手前の巣穴Lに入り、しばらくすると後ろ向きで外に出て来ました。 
幼獣が自力で歩けるようになったと思っていたのに、久しぶりに母親♀が幼獣aを咥えて巣外に引きずり出しました。
逃げ回ろうとする幼獣を咥えるのも大変そうですし、重く育った幼獣を引きずって歩くのも重労働です。 

2つの巣口LRの中間地点に母子が座って、♀が幼獣aの毛皮を舐めてやります(対他毛繕い)。 
成獣の腹面に乳首が見えることから、母親♀と見分けられます。 
(左右の目の大きさや首筋の白斑の有無では、見る角度によって個体識別が難しいことがあります。) 


シーン2・6/11・午前2:23・(@0:46〜) 
幼獣aの搬出シーンが別アングル(広角)の旧機種トレイルカメラでも録画されていました。 
アクセストレンチはなかなかの急斜面であることが見て取れます。 
地上でしばらく毛繕いしてやってから、幼獣aの首筋を再び咥えて右側の巣穴へ運び込みました。 
1頭目の幼獣を巣穴LからRへ引っ越ししたことになります。 (L➔R)


シーン3・6/11・午前2:27・(@1:47〜) 
戻ってきた♀が手前の巣穴Lに入りました。 
前回と同じく、後退しながら2頭目の幼獣bを巣穴Lの外に連れ出します。 
首根っこの皮を噛まれた幼獣はおとなしく引きずられて運ばれます。 
今回は幼獣を地面に下ろして休憩・毛繕いしないで、一気に奥の巣穴Rへ運びました。 


シーン4・6/11・午前2:27・(@2:32〜) 
別アングルの広角映像に切り替えて同じシーンを振り返ります。 


シーン5・6/11・午前2:29・(@3:15〜) 
巣穴Lに戻ってきた♀が後ろ向きで3頭目の幼獣cを外に引きずり出しました。 
今回も奥の巣穴Rへ休憩無しで一気に運びます。 


シーン6・6/11・午前2:29・(@3:51〜) 
別アングルの広角映像に切り替えて同じシーンを振り返ります。 
幼獣cを巣穴Rに搬入した♀が再び出巣Rする様子まで録画されていました。 


シーン7・6/11・午前2:30・(@4:31〜) 
最後の幼獣dは(仲間が居なくて寂しくなって?)巣口Lで待機していました。 
迎えに来た母親♀は、外に引きずり出した幼獣dを巣口LRの中間地点で下ろして、毛皮を舐めてやります。 
幼獣dは空腹ではなかったらしく、♀の乳首に吸いつこうとしません。 
覚束ない足取りで地面を歩き回ろうとしますが、それを母親が前足で制して転がし、毛繕いしてやします。 
巣外での対他毛繕いは、1頭目と4頭目の幼獣に対してのみ行いました。 


シーン8・6/11・午前2:30・(@5:00〜) 
別アングルの広角動画に切り替えて、同じシーンを振り返ります。 
身震いしてから左の巣穴Lに戻った♀が、巣口Lから4頭目の幼獣dを外に連れ出します。 
巣口LRの中間地点で幼獣dを下ろして、時間をかけて丁寧に毛皮を舐めてやります。 


シーン9・6/11・午前2:33・(@5:46〜) 
♀が先導して右の巣穴Rに戻り、幼獣dを誘い込みます。 
幼獣dは自力で歩いて入巣Rできましたが、巣口Rを塞ぐように露出している細い木の根っこを乗り越えるのに難儀しています。 

これで計4頭の幼獣a-dの引っ越し(L➔R)が無事に完了しました。 
 幼獣全員の引っ越しが完了したかどうか、新居に連れてくるのを忘れた幼獣がいないかどうか、母親♀はどうやって知るのでしょう? 
四つ子を育てる母親は、巣穴に同居する幼獣の個体数を1から4まで数えることができるのでしょうか? 
(羊が1匹、羊が2匹、羊が3匹、…zzz) 
それとも、4頭の幼獣それぞれに固有な体臭や鳴き声で識別しているのですかね? 


シーン9からシーン10の間に、逆に巣穴RからLへ幼獣を引っ越し(R➔L)したはずなのに、なぜか撮れていません。 
地中では2つの巣穴がつながっているのではないか?という気がします。 


シーン10・6/13・午前3:50(@6:13〜) 
2日後には雨が降りしきる深夜に幼獣の引っ越し作業?を始めました。 
手前の巣穴Lに戻った♀が幼獣を外に連れ出しました。 


シーン11・6/13・午前3:48(@6:50〜) 
別アングルの広角動画に切り替えて、同じシーンを振り返ります。 
旧機種のトレイルカメラは、時刻を正確に合わせても、すぐに狂い始めてしまいます。 


シーン12・6/13・午前3:50(@7:00〜) 
2頭の幼獣を巣穴Lの外に連れ出していました。 
幼獣はケケケッ♪と小声で鳴きながら、覚束ない足取りで歩き回ります。 

♀は幼獣1頭の毛繕いをしてやってから、首筋を咥えて奥の巣穴Rへ運びます。 
その間に、もう1匹の幼獣はアクセストレンチをずるずると滑り降りて手前の巣穴Lに戻ってしまいました。 


シーン13・6/13・午前3:50(@7:49〜) 
別アングルの広角映像に切り替えて、同じシーンを振り返ります。 


シーン14・6/13・午前3:52(@7:58〜) 
左の巣穴Lに戻った♀が後ろ向きで幼獣を咥えて外に引きずり出します。 
カメラの電池が消耗してきて、断片的な暗視映像しか撮れなくなりました。 


シーン15・6/13・午前3:52(@8:07〜) 
巣口Lで待っていた幼獣を♀が咥えて外に運び出しました。 
大きく育った幼獣はとても重そうで、途中で地面に下ろして尻の辺りを舐めてやります。 
足元をうろつく幼獣に♀が跨って自分の尻を擦り付け、アロマーキング(臭腺・肛門腺による匂い付け)をしました。 
雨の降る中を幼獣は奥の巣穴Rへ自力で歩いて行きました。 


シーン16・6/13・午前3:52(@9:08〜) 
別アングルで設置したトレイルカメラの広角映像に切り替えます。 


※ 鳴き声や雨音が聞き取れるように、動画編集時に音声を正規化して音量を強制的に上げています。 
画面に表示される気温はすべて異常値です。(暗視動画の連続撮影によるカメラ本体の過熱)


我々ヒトの感覚では、雨が降る日にわざわざ乳幼児を外に連れ出す母親の気がしれません。 
幼獣が濡れて風邪を引いてしまうかもしれませんし、毛皮が泥だらけになってしまって、それをきれいに拭いてやるのも大変そうです。 
しかしアナグマ♀は雨を全く気にせず、スパルタ育児です。 
雨夜という新しい環境刺激に幼獣を早く慣らしてやりたいのでしょう。 
定期的に1頭ずつ巣外に連れ出して健康状態をチェックし、糞尿で汚れた毛皮を舐めてやる作業は雨天決行の必要があるようです。
梅雨の時期ですから、雨が止む日まで待ってられないのでしょう。

隣接する2つの巣穴の間で日によって行ったり来たり(L⇔R)引っ越しを繰り返しているようですが、ワンオペ育児の♀が4頭の幼獣を順番に漏れなく巣外に連れ出すために、引っ越しのていを取っているだけだと思います。 
実はトンネル内で2つの巣穴は連結しているのではないかと私は疑っています。
もしも梅雨の大雨で巣穴が浸水したら、幼獣を連れて行く避難先(別の巣穴)をアナグマ♀は用意しているのでしょうか?


ランダムに記事を読む