2017/12/08

朝ムクドリの大群が高圧線鉄塔の集団塒から飛び去るまで【中編:野鳥】



2017年8月上旬・午前4:50〜5:27(日の出時刻は午前4:49)
▼前回の記事
朝ムクドリの大群が高圧線鉄塔の集団塒から飛び去るまで【前編:野鳥】

長撮りした定点動画の、日の出直後からのつづきになります。
ムクドリSturnus cineraceus)の群れが集団塒内で木の葉落としのように下へ下へと移動しているのは、左右に走る高圧線の一番上に止まっているハシボソガラスがムクドリを鉄塔から追い出そうと圧力をかけているのでしょうか?
画面には写っていませんが、鉄塔の左側の高圧線にもカラスが止まっていました。
ところが、しばらくするとカラスは高圧線から飛び去りました。
カラスが居なくなってもムクドリの群れの全体的な動きに変化は無かった(鉄塔の上部に戻らなかった)ので、カラスの存在は別に気にしていなかったようです。

画面右下に少しだけ見えているケヤキ並木の樹冠に、相変わらず群れの一部が次々に飛び込んで行きます。
もしかすると、葉の茂った枝で毛虫を捕食するなどの採餌活動があるのかもしれませんが、未確認です。
ケヤキ並木に集合していた群れが何かに驚いて一斉に飛び立ち、再びすぐ上の電線や鉄塔に戻りました。(@6:01)
ほとぼりが冷めると、また群れの一部が続々とケヤキ並木の樹冠に飛び込み始めました。
早朝から集団塒内で上下に飛び回る移動は、本格的な離塒に備えて各自が朝の準備運動をしているのかもしれません。
休みなくひたすら鳴き続けるムクドリの大群は我々の耳にはただうるさいだけですけど、例えば夜の間にはぐれてしまった家族群が互いの鳴き声を個体認識して、家族群を単位として少しずつ再集合している可能性も考えられます。

(もちろん常識的に考えれば、繁殖期が終われば家族は解散してしまう気がします。)

鉄塔#30から右に伸びた一番上の高圧線に止まっていた2羽のハシボソガラスが急に飛び立ち、鳴きながら鉄塔の最上部に止まり直しました。(@6:53)
これに驚いたムクドリの群れが鉄塔の天辺から一斉に飛び立って少し下の鉄骨に避難しました。
そのハシボソガラスもお山の大将のように鉄塔の頂上部を占拠する訳でもなく、すぐに飛び去ってしまいました。
いかにも性格の悪いカラスらしい行動(ムクドリに対するただの嫌がらせ)ですね。
ムクドリのことはあまり眼中になくて、2羽のカラス同士で追いかけっこのように遊んでいるだけのような印象も受けました。

ムクドリが集団塒から出て行く際は、夕方に見られるような派手な(誇示的な)群飛をやりませんでした。

▼関連記事 
日没と同時に就塒前群飛を始めるムクドリ(野鳥)の大群 
ムクドリ(野鳥)大群の飛翔乱舞
小群あるいは単独で四方に散って行くだけで、まとまりがありません。
日中の活動域は各所に広く分散しているのでしょう。
鶴の一声のようにリーダーが合図して一斉に離塒するのでも無さそうです。



菅原光二・丸武志『カラー版自然と科学:ムクドリ』によると、
 夜があけると、ムクドリたちはす早くねぐらをとびたちます。大群となるねぐらでも、ムクドリたちはほとんどいっせいにといえるほど短時間に、いくつもの群れにわかれ、つぎつぎにねぐらからでていきます。 
 ムクドリは、行動範囲がとてもひろく、ねぐらから40キロぐらいまででかけるものがいます。(中略) 
 ねぐらの場所は、えさ場の変化や落葉、はんしょく場所などにえいきょうされて季節とともにかわります。 (p34-35より引用)


水野仲彦『野鳥のくらし―卵から巣立ちまで』でムクドリの項目を読むと、

 朝のねぐら離れも見事で、羽音と鳴き声でゴーッという音を立てて黒煙が吹き出るように次々と舞い上がり、採食地へと飛び去って行く。(p16より引用)
先人の観察記録ではどれも、ムクドリの離塒は一斉に飛び立つと書いてあり、私の観察結果とは違います。
おそらく私が見ている集団塒は、規模が小さい(個体数が少ない)のでしょう。



野鳥が群れで塒を取る理由の一つとして、塒内で互いに餌場の情報交換をするために集まるのだという説があります。

翌朝に採餌場へ飛んで行く際に、餌の豊富な採餌場を知っている個体について行くというのです。
しかし今回、五月雨式の離塒を眺めていると、そんな「情報センター仮説」がムクドリに成り立つとはとても思えませんでした。
仮説を否定するにしろ、科学的にきっちり実証するのが困難だというのも実感できました。
ムクドリの大群を一網打尽にして多数の個体にGPSや電波発信機を装着して行動を逐一追跡すれば、はっきりするでしょう。


【参考図書】
上田恵介『鳥はなぜ集まる? 群れの行動生態学』 第2章:ねぐらはエサの情報センター


遂にムクドリが一斉に飛び立ちました。(@15:12)
その直前に響いた空気銃のような乾いた発砲音が引き金になったようです。
誰か近所のヒトが喧しいムクドリを追い払おうとしたのか?と思ったりもしたのですが(被害妄想?)、たまたま近くを走る車のマフラーから破裂音がしただけかもしれません。
今までで最大規模の集団離塒が数回に分けて波状に行われました。
飛び立った群れの一部は上空で旋回しただけで、すぐに鉄塔へ戻って来ました。
依然として数多くの個体が集団塒に居残って鳴き騒いでいます。
空腹の個体から先に飛び立ったのか、それとも餌場が遠い個体群から順に塒から飛び去るのでしょうか?


午前5:09頃、東の山から太陽が昇り、高圧線鉄塔#30も朝日を浴び始めました。(盆地のため、地平線から朝日が昇る公式な日の出時刻から少し遅れます)

愚直に長撮りを繰り返したのですが、途中で私のうっかり操作ミスで空白の時間帯があります。(午前5:11に1分10秒間の痛恨のタイムロス。動画では@20:57)
肝心の離塒シーンを一部撮り損ねてしまいました。


下の電線に鈴なりになっていたムクドリの群れが、今までとは逆に上の高圧線鉄塔に移動を始めました。
群れ全体の数が減ると心細くなって、再集合するのでしょうか?
集団塒に残っている数が減ると、ムクドリの鳴き声がかなり静かになりました。

最後は鉄塔や電柱、電線にズームインしてみて、ムクドリが集団塒に一羽も残っていないことを確認しました。(@34:19-)
鉄骨には、白い鳥糞が付着して若干汚れていました。
しかし、集団就塒していたムクドリの数に対して意外に糞の汚れは少ないのではないか、と私は思います。

ちなみに撮影地点でときどき測定した気温データは、以下の通りです。
午前4:53 気温20.1℃、湿度89%
午前5:03 気温20.0℃、湿度90%
午前5:16 気温20.1℃、湿度100%
午前5:26 気温20.0℃、湿度90%


ムクドリの群れが完全に飛び去った後で、すっかり静まり返った鉄塔#30の真下に立ち寄ってみました。(@35:13-)
もちろん立入禁止の区画なのですが、柵の隙間から覗いてみると、意外にも真下のコンクリート地面は鳥の糞であまり汚れてはいませんでした。
糞の色があまり目立たないだけかもしれません。
その一方で、鉄塔の近辺で群れの一部が塒にしていた電柱や電線の真下には白い鳥糞が大量に散乱していました。
雨が降れば路上の鳥糞は洗い流されるのでしょうけど、近隣住民は深刻な糞害に悩まされているのかもしれません。
ただし不思議なことに、この場所(高圧線鉄塔#30周辺)にムクドリが毎日塒入りするとは限りません。
集団塒の場所を頻繁に(気紛れに?)変えているのは、ムクドリもヒトとのトラブルを学習してあまり長居しないようにしていたりして…?


※ 終盤だけ、動画編集時に自動色調補正を施しています。(@34:19-)

つづく→後編:10倍速映像


鳥糞で汚れた鉄骨
高圧線鉄塔の直下
電柱の直下に大量の鳥糞
電線の直下に大量の鳥糞

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