2016/01/17

隠れ家でアメリカセンダングサの花を食べ続けるイシサワオニグモ♀




花を食べるイシサワオニグモ♀(蜘蛛)の謎#2:微速度撮影


2015年10月上旬・午後14:32〜15:02

動画の冒頭でまず、花を採取したアメリカセンダングサの群落を写しました。

キイチゴ?の葉を数枚糸で綴って作った隠れ家に花を持ち帰ったイシサワオニグモ♀(Araneus ishisawai)が歩脚を舐めて身繕いしています。
化粧が済むと、アメリカセンダングサの花を引き寄せて吸汁を始めました。(@1:15〜)
ラッピングした花をくるくると回しながら調べ、噛む場所を変えているようです。
昆虫の獲物を捕食するときの振る舞いとなんら変わりません。
花に噛み付いたらすぐに「これは獲物ではない!」と過ちに気づき、吐き出して捨てるだろうと予想しました。
ところが花を落とす瞬間を記録するつもりで長撮り※しても、クモは一向に花を手放しません。
※ 映像の後半(@4:59〜
)は10倍速で微速度撮影しました。

おそらく生まれて初めて口にしたであろう花の味がよほど気に入ったのでしょうか?
アメリカセンダングサの頭花を抱え込んだクモは主に緑色の総苞を噛んでいます。
牙の開閉を映像で確認できました。

クモはいつまで経っても花を手放さず、噛んで吸汁しているようです。
このゲテモノ食いの♀個体が寿命間近だとしたら、老化のせいで一種の味覚異常(異食症)になったのでしょうか?
果たしてクモは植物を体外消化できるのでしょうか?

虫などの獲物は強力な消化酵素で溶かされて黒いタール状になります。
▼関連記事(2013年撮影)イシサワオニグモ♀(蜘蛛)の体外消化
クモの消化酵素で植物のセルロースを分解できるのか、気になります。
花そのものを体外消化しているのではなく、花蜜を舐めたり花粉を食べているのかもしれません。(下記の参考資料PDFを参照)

アメリカセンダングサを訪花する昆虫を色々と見てきましたけど、花蜜や花粉が特に豊富で虫に絶大な人気を誇る植物という印象はありませんし、花外蜜腺も無いです。

この個体がよほど飢えていたとすれば、花を網に投げつけたときに隠れ家からすぐ飛び出して来そうなものです。(警戒していたのかな?)
花を食べている(ように見える)のも獲物が網にかかるまで手持ち無沙汰を紛らわせる暇潰しで、おしゃぶりのような物(食餌の代替物)ですかね?
別の可能性として、クモは自分の失敗に気づいているものの、花をラッピングした捕帯の糸だけでも食べて貴重なタンパク質を回収しているのかもしれません。

このイシサワオニグモ♀の空腹状態を調べるために、何か普通の獲物(昆虫)を網に給餌してみることにしました。

つづく→#3:網にかかったトンボには目もくれず花を食べるイシサワオニグモ♀(蜘蛛)



【参考】
『クモの科学最前線』という専門書の第3章で「クモと餌 植物食」を扱っています。

・ハエトリグモやカニグモの仲間が花や花外蜜腺に訪れる。p55 
・蜜食いの直接証拠となるのが、植物の蜜や果実に由来するフルクトース(果糖)の存在である。野外でクモを採集し、胃のなかにフルクトースがあれば、クモが植物から蜜を得ている証拠となる。※p56 
・円網に付着した花粉をクモが網糸ごと摂取している。p56
※ 例えばミツバチを捕食した直後は間接的に花蜜を摂取したことになり、胃内容物に果糖が検出されるのでは?

オニグモ類が花を食べるという記述は見つかりませんでした。


次はインターネット検索で見つけた総説の資料です。

上記の本『クモの科学最前線』に書かれた内容のエッセンスがまとめられています。
公開してくださっている池田博明氏に感謝。
・日本蜘蛛学会のプレゼン資料「クモと植物(簡略版)」クモの食餌としての植物(PDFファイル) 
・東京クモゼミのレジュメ:"Herbivory in Spiders"(pdfファイル)


【追記】
YouTubeのコメント欄にて、「ひどく喉が渇いたクモが花から水分を摂取しているのではないか?」というアイデアをいただきました。
給餌したアメリカセンダングサの花を摘んだときに濡れていると思った記憶はありません。
この時期の日本は乾季ではありませんし、クモが水分補給に困ることはないと思います。
朝晩に気温が下がると、網に結露した夜露をクモは摂取できるはずです。


【追記2】
『クモのはなしI:小さな狩人たちの進化の謎を探る』p201(第23章 池田博明「クモのメニューの量と質」)によると、
宮崎県の石野田辰夫さん(1974)が、アシブトヒメグモがトベラの花の近くに造網し、その花粉や蜜を食べていることを発見して、NHKが撮影し、そのフィルムを東亜クモ学会第六回大会で上映しているのです。このフィルムは大会の参加者にショックを与えたようですが、その後、これに続く発見は現れず、九州のアシブトヒメグモに特有な例外的現象と理解されてしまったようです。しかし、スミスとモムセンの研究からすると、例外どころか、もっと新しい照明をあてるべきことがらのように思えます。




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