2015/05/29

古池やモリアオガエル飛び込む水の音♪【暗視動画】



2015年5月中旬

▼前回の記事
夜に産卵するモリアオガエルの群れ【暗視動画】

沼の岸辺から水面に張り出しているマユミの枝先にモリアオガエルRhacophorus arboreus)が作っている泡巣aに注目しました。

長靴を履いて岸から夜の沼にゆっくり入水し、卵塊に近づきました。
うっかり枝に触れて揺らしてしまうと、せっかく集まったカエル達が驚いて水に飛び込んでしまいます。
真暗闇でビデオカメラの液晶画面だけを見つめていると、ときどき吸い込まれるようにバランスを崩して水に落ちそうになります。

泡巣の上の枝になぜかのんびり静止して喉をヒクヒクさせている個体が居ます。
泡風呂で混浴している仲間への合流・参加をどうして急がないのか、性別の見分け方を知りたいところです。
その一方で、なぜか泡巣を抜けだして上の枝葉に登り始める個体も居ます。(性別は?)

途中で暗視モードから通常モードに切り替えてみました。
白色LEDの光で間近から急に照らされても、お取り込み中のモリアオガエル達はさほど気にする素振りはありませんでした。

後半、泡巣手前の表面で激しく暴れている個体が気になりました。(@3:35-)
撹拌行動にしては脚が空を切っているなー、と思いつつ見ていると、そのまま自発的に下の水面にポチャンと落下しました。(@3:50)
泡巣の成分として卵と精子だけでなく、放出した尿や粘液を撹拌して作るそうです。
脱水症状になった個体が水入り休憩するのでしょうか?(※追記参照)
それとも産卵を終えた♀から離脱するのでしょうか?

泥濘ぬかるみに長靴を取られ、撮影中の体勢を保つのに苦労しました。
なんとか必死で頑張ったものの、思うように撮影アングルを確保できず不満が残りました。
退屈な休息シーンはカットし、鳴きながら泡巣を足で撹拌する様子だけを撮りました。




この日の夜間撮影にはあまり満足できず、その後も夜な夜な通いました。
なるべくカエルを刺激せずに自然な行動を撮ることにこだわり、増水した沼の中から岸辺の枝を撮る工夫をあれこれ考えました。
ここは泥沼ですから、長靴を履いただけでは入水するとズブズブと沈み、安心して池の中を渡れません。
予算が潤沢にあれば、ゴムボートを持ち込んで池に浮かべたり、防水ウェイダーを買ったりすれば解決するでしょう。
なんとかお金をかけずに済む方法を絞り出します。

まず考えたのは、倒木などを沈めて池の中も歩けるように足場を作ることです。
しかし気になるのは、「モリアオガエルが産卵地点を選定する際に、下に水面(の反射)が見える枝を選ぶ」という話です。
下手に土木工事(というと大袈裟ですけど)をした結果、沼が浅くなってモリアオガエルが卵を産んでくれなくなるのでは本末転倒で意味がありません。
山形県のレッドデータでモリアオガエルは準絶滅危惧種(NT)に指定されているため、生息地を勝手に改変するのは論外です。
撮影後には沼に沈めた足場を引き上げて原状回復する必要があります。

第二案は忍法「水蜘蛛の術」にヒントを得ました。

季節外れですが、冬山で使うスノーシュー(西洋かんじき)を長靴に装着してみました。
これが思いの外うまく行き、岸に近いところなら泥にあまり潜らず池の中を自由に歩き回ることができるようになりました。

足先を見ると、渉禽類は長い趾をもっている。フラミンゴなどは、水かきも発達している。こうした長い趾や水かきがあると、体重が分散されるんで、湿地などのぬかるみでも沈まずにあるくことができる。天然のかんじきを履いているようなものである。(藤田祐樹『ハトはなぜ首を振って歩くのか(岩波科学ライブラリー)』p27-28より引用)


歩いて水底の泥をかき混ぜると、ドブのような匂い(メタンガス?)がしました。
長靴だけを履いて入水したときと比べて、撮影中にバランスを崩して池に転倒する心配も減りました。
これで撮影ポイントに頭を悩ませることはなくなりました。
赤外線投光機を使えば、対岸からでも暗視動画を撮影ができることも確かめました。

こうして私が撮影準備に悪戦苦闘している一方で、結局モリアオガエルの産卵行動を見れたのは初日だけでした。
モリアオガエルの繁殖期はあっさり終わってしまったようです。
しかも沼の水が少し引いて島が現れ、せっかく重いスノーシューや三脚を担いで登った苦労が無駄になりました。
自然を相手にすると一筋縄ではいきませんが、これも来年以降のロケハンだと思うことにします。

つづく



※【追記】
平凡社『日本動物大百科5:両生類・爬虫類・軟骨魚類』でモリアオガエルについて調べてみると(p46)、
やってきた♀はいったん水中に入り、総排出腔から水を吸い込みそれを膀胱にためる。この水は産卵の際に卵塊をメレンゲ状に泡立てるために使われる。


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