2015/01/17

川底でクルミを拾うハシボソガラス(野鳥)



2014年9月下旬

街中を流れる川にかかる橋で欄干に止まっていたハシボソガラスCorvus corone)にカメラを向けたら飛んで下流へ逃げ、川の浅瀬に着陸しました。
(映像はここから)

カラスは浅瀬の泥からクルミの実らしき物体を拾い上げました。
望遠レンズでもやや遠く、手前に生えた雑草も邪魔でよく見えません。
ただの丸い小石なのかクルミの実なのか、定かではありません。
これまで何度か動画に撮って紹介したように、この辺りのハシボソガラスはクルミの実を食べるためによく舗装路に投げ落として硬い殻を割っています。

▼関連記事
ハシボソガラスのクルミ割り行動:Ⅳ投げ落としと貯蔵【野鳥】
なので、今回の丸い物体もクルミの実ではないかと推測しました。
カラスがどこからクルミの実を採ってくるのか、いつも不思議でした。
上流から漂着したクルミをたまたま見つけたのか、ひょっとすると予めここに隠していた(貯食)のかもしれません。
ところがなぜかクルミの実をその場に残して(埋め戻して)、水際へ歩み寄りました。
今度は川底から泥だらけのクルミ?をもう一つ拾い上げました。
水に漬けて泥を落とすと、岸辺の浅瀬に戻り泥の中に埋め戻しました。
なんとなく、貯食行動のようにも見えます。
こんな場所に食料を隠しても川が増水したら一巻の終わりです。
賢いカラスがそんな馬鹿なことするかな〜?と首をひねりつつ撮影していました。

私にずっと見られていることに気づいてバツが悪くなったのか、ハシボソガラスは貯食を中止してしまいました。
嘴にクルミを一つ咥えて飛び立つと、川岸の住宅地の方へ持ち去りました。
どこか安全な場所で投げ落とし行動に勤しみ、殻を割って仁を食すのでしょう。

私は未経験ですが、我々ヒトがオニグルミの実を食べようとすると、おそろしく手間暇がかかるらしいです。

関連記事(8年後の撮影)▶ オニグルミの落果を採集(クルミ拾い)

先ず必要な工程として、クルミの落果を水に浸したり土に埋めたりして外果(果肉)を腐食させ、同時に灰汁(アク)を抜くそうです。
今回観察したカラスも同じことをしていたのかもしれませんね!
実は縄文時代の日本人はカラスにクルミの食べ方を教えてもらったのでは?などと想像を逞しくしてしまいます。
しかしカラスは頑強で器用な嘴を持っているので、わざわざそんな面倒臭いことしなくても果肉をつついて取り除くぐらい朝飯前のような気もします。(生の果肉に含まれる灰汁が嫌いなのかな?)


【参考動画】
野性を食べよう「オニグルミ」by ktbktshさん



さて、今回撮った映像にタイトルをどのように付けたら良いでしょう?
貯食未遂行動と呼ぶべきか、クルミを拾いに来たカラスの気まぐれな採食行動なのか、川底の泥にクルミの実を埋め果肉が腐食するのを待っていたのか、解釈に悩みます。

断片的で不完全な映像記録ながらも、もしかすると重要なミッシングリンクかもしれない!と密かに興奮しました。


【追記】
2015年5月中旬、ハシボソガラスがクルミの樹の下から実を咥えて飛び去る姿を目撃しました(映像なし)。


【追記2】
水辺に好んで生えるクルミは水流で種子を散布する植物なのだそうです。
てっきり私は動物散布の中でもリスによる貯食散布に頼る戦略なのかと思っていました。
水流散布も水を利用するのは同じだが、こちらは川の流れにのって散布される。クルミがその代表的なもので、こちらの種子の内部にもすき間がある。
(直江将司『わたしの森林研究―鳥のタネまき​に注目して』p28より)

どちらが正しいという訳ではなく、クルミは2つの戦略を併用しているのだと思います。


水辺林の生態学』によれば、
(オニグルミの:しぐま註)核果状の堅果は落下後、齧歯類やリスによって運ばれるほか、流水によっても移動し、分布を拡大する。(p51より引用)


【追記3】
斎藤新一郎『リスやカケスが森をつくる:樹木種子の貯食型散布と樹木の貯食への適応』によると、
オニグルミJuglans ailanthifoliaのタネは、形態的には、多肉の偽果(fleshly false fruit)であり、成熟すれば、そのまま落果する。しかし、恐竜ならともかく、今日では、そのまま飲み込んで、被食型の散布をする動物は見られない。(中略)この多肉偽果は、土埋されれば、外側の果肉部分が腐って、殻果となる。このナッツを食べる動物は、この果肉部分を食い捨てて、殻果にしてから、地下に貯蔵する。(『種子散布―助けあいの進化論〈2〉動物たちがつくる森』p91-92より引用)
ちなみにこの文脈で、北海道でオニグルミの殻果を貯食する動物としては、エゾリスおよびエゾアカネズミを想定しています。 




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