2014/12/02

夜モンスズメバチの巣に忍び寄るシロスジカラスヨトウ(蛾)【暗視映像】



2014年8月中旬


▼前回の記事
巣に侵入するナミクシヒゲハネカクシ?を殺すモンスズメバチ♀門衛

モンスズメバチの巣の定点観察8

クヌギの樹洞に営巣したモンスズメバチVespa crabro flavofasciata)のコロニーで夜間の活動の様子を暗視カメラで撮影しに行きました。(21:07 PM)
5日ぶりに巣を見ると外被状の被膜が更に増築され、小さな巣口以外は樹洞がすっかり覆われています。

巣口のすぐ上に黒い蛾が止まっていました。
スズメバチの巣に寄生する蛾なのかと思いきや、写真に撮るとシロスジカラスヨトウAmphipyra tripartita)と判明。
幹で警戒中のモンスズメバチのワーカー♀に追い払われても、少し歩いて逃げるだけです(巣口の下→左下→左)。
このクヌギの木は樹液を分泌していないので、単に休んでいるだけでしょうか。
もし微量でも樹液が滲んでいるなら、他の蛾や昆虫も集まって来るはずです。
何度も追い立てられるのに、なぜか樹洞から離れようとしません。
一方、モンスズメバチも夜行性であるという前評判とは異なり、暗がりではしっかり見えていないようです。
触角で偶然に触れて初めて蛾を追い払っています。
明るい昼間ならきっと飛びかかってもっと積極的に追い払う気がします。
(蛾の存在をあまり問題視していないだけかもしれません。)
シロスジカラスヨトウの黒い翅が闇夜に紛れやすいのかと考えがちですけど、白条が目立ち過ぎますしクヌギの樹皮が白っぽいので保護色にはなっていません。

シロスジカラスヨトウの幼生期についてはよく分かっていないらしく(参考リンク)、「みんなで作る日本産蛾類図鑑」サイトでも幼虫の食餌植物は記載されていません。
「カラスヨトウ属幼虫の行動と食草について」と題した論文によると、飼育下で本種幼虫はアラカシおよびサカキを食べたそうです。

船越進太郎. "カラスヨトウ属幼虫の行動と食草について." 蝶と蛾 44.4 (1994): 249-257.
ここは東北地方の雪国で、照葉樹林帯ではありません。(アラカシもサカキも私は未だ見たことがありません。)
当地のシロスジカラスヨトウ幼虫は何を食べて育つのでしょう?
今回の観察では私の先入観かもしれませんが、いかにも寄生蛾♀が産卵のチャンスを伺っているように見えて仕方がありませんでした。
(今回のシロスジカラスヨトウの性別を確かめた訳ではありません。)

同じモンスズメバチの巣口を観察していて、寄生生物との攻防をこれまで二例(ムツボシベッコウハナアブおよびナミクシヒゲハネカクシ)観察したので、どうしても「二度あることは三度ある?」と期待してしまいます。
ギンモンシマメイガのようにシロスジカラスヨトウもスズメバチの巣に寄生する可能性は無いのでしょうか?

▼関連記事
コガタスズメバチの巣に寄生する蛾の幼虫
コガタスズメバチの巣から羽化したギンモンシマメイガ(蛾)
スズメバチの巣に侵入する決定的瞬間を撮影するか、あるいは採集したスズメバチの巣から羽化する蛾を得ないと証拠にはなりませんね。
野外で採集したシロスジカラスヨトウ成虫♀から採卵し、孵化した幼虫にスズメバチの巣を与えて育てられたら完璧でしょう。
今のところは個人的な大胆仮説として温めておきます。
暗視カメラでスズメバチの巣を愚直に監視・長撮りすれば何か分かりそうな気がするのですけど…。

先走って楽しく空想してみましたが、動画のシロスジカラスヨトウを採集してみたら♂だったというオチに終わるかもしれません。

木から少し離れた所から撮影するとビデオカメラに内蔵の赤外線LEDでは光がいまいち届きませんでした。
もっと強力な赤外線投光機が欲しくなりました。
巣口でモンスズメバチが扇風行動をしているようですけど、映像では暗くてよく見えません。
ちなみにこの日の月齢は23.2でした。

※ 実は同じ日の夜に近くで野生ニホンカモシカとニアミスしてお互いに肝を冷やしたのですけど、暗闇の山中では赤外線が遠くまで届かず使い物になりませんでした。

つづく→シリーズ#9:直列二連の扇風行動



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