2013/09/07

ヒメシジミの求愛飛翔、交尾拒否など



2013年6月中旬

この日は草むらで交尾するヒメシジミPlebejus argus)のペアを何組も目にしました。
複数ペアの行動をつなげた映像をご覧下さい。
ヒメシジミの性別判定は簡単で、♀の翅表は褐色、♂の翅表は青色です。
後翅裏の斑紋にも微妙な性差があるようです。

シーン1
クズの葉に♀♂なかよく並んで止まっているのに何故か没交渉です。
♂は♀の存在に気づいていないのか、先に飛んで逃げました。
「志村、後ろ後ろ〜!」

シーン2:求愛飛翔
♀が交尾拒否したようです。
ハイスピード動画に撮ればよかったですね…。

シーン3:クズの群落で交尾中。
交尾器を連結したまま歩き回っています。
途中であぶれ♂が飛来するも、割り込んだりせず紳士的に諦めて飛び去りました。

当地でヒメシジミは余りにも平凡な普通種なので、意識して見るようになったのは今季からです。
浅い観察歴ながらも、出現開始期と繁殖期にタイムラグがある印象を受けました。



キクイモモドキに訪花するクロマルハナバチ♀の飛翔【ハイスピード動画&HD動画】



2013年7月中旬

川沿いの民家の庭に咲いたキクイモモドキクロマルハナバチBombus ignitus)のワーカー♀が訪花していました。
花から花へと忙しなく飛び回る様子を240-fpsのハイスピード動画に撮ってみました。
後脚の花粉籠は空荷でした。



同一個体を通常のHD動画でも撮ってみました。
実はすぐ横にはオオキンケイギクの群落も咲き乱れていました。
別個体がそれぞれオオキンケイギクとキクイモモドキを訪花しているな…と思いきや、続けざまに両方に訪花する個体もいました。
蜜源選択の専門性はそれほど高くないようです。

関連記事→「クロマルハナバチ♀がオオキンケイギクに訪花【ハイスピード動画&HD動画】




2013/09/06

シロホシヒメゾウムシの早漏♂(交尾失敗と体外射精)



2013年7月下旬

林道脇に咲いたオカトラノオの群落で交尾中の小型ゾウムシを見つけました。
周囲の環境はスギの植林地でした。
♂を背負ったまま♀がオカトラノオの白い花の上を歩き回っています。
発見時はマウントしているだけで未だ交尾器を結合していませんでした。
ただでさえ杉林は暗いのに小雨がぱらつき始め、接写の大敵である風も吹き始めました。
風揺れ対策の裏技として、花をナイフでそっと切り落として地面に置いて接写しました。

♀の上にマウントした♂はときどき前脚で♀の肩を優しく叩いています。
これは求愛行動なのでしょうか?
♀に静止を促す合図なのかもしれません。
昆虫の♀の多くは交尾中でも「色気より食い気」で食事を続けることが多いのですが、この♀はじっと静止していました。
やがて♂の腹端から交尾器が伸びてきました。
ところが♂の交尾器が届かず♀の生殖器に挿入できないでいます。
通常は♀>♂なのに、このペアは体長のミスマッチが著しく(♀<♂)上手く交尾できないようです。

驚いたことに、長く伸びた♂交尾器の先端から白い粘液状の精液を放出しました。@3:30
挿入前なのに早撃ちしてしまったようです。
射精後の♂交尾器はそのまま収縮して体内に収納されました。
私の知る限り、甲虫の交尾は直翅目のように体外に分泌した精包を♀に渡す方法ではなかった筈です。
それとも実は既に交尾は済んでおり、♂が凝固性分泌物を塗りつけて♀の交尾器に栓をしようとしているのでしょうか?(浮気防止の交尾プラグ)
虫でこれをやるのはチョウやクモぐらいしか聞いたことがないので※、私の考え過ぎかもしれません。

※ 宮竹貴久『恋するオスが進化する (メディアファクトリー新書) 』p161によると、

♂が自分の分泌物で♀の生殖器を塞ぐ貞操帯は様々な生物で進化しており、わりと人気の高い浮気防止システムといえる。モルモット、リス、チンパンジー、コウモリ、ネズミ、ヘビ、クモ、チョウ、ハエなど実に様々な分類群で交尾プラグとしての貞操帯が発見されている。



早漏の♂は諦めきれないようで、再び前脚で♀をタッピング。
口吻と触角でも♀に触れています。
どうやらこの行動が交尾器を伸ばす前兆(交尾前行動)のようです。
もしかすると♂の求愛や前戯というよりも、単に♂がマウント姿勢や挿入角度を微調節しようとモゾモゾ動いているだけかもしれません。

♂が再び交尾器を伸長しても依然としてうまく連結できません。
♀が非協力的で密かに交尾拒否しているのでしょうか?
私がオカトラノオ花を切り離した振動のせいで、警戒心の強い♀が擬死状態なのかもしれません。
(実は♂同士である可能性は?)
シロホシヒメゾウムシの交尾で正常例を見ない限り、全ては憶測でしかありません。
またもや体外で無駄に射精した後(@9:46)、♂交尾器を縮めて体内に収納しました。

見慣れないゾウムシでしたが、美しい模様があります。
ところで、本種の和名は「シロホシヒメゾウムシ」「シラホシヒメゾウムシ」のどちらなのでしょう?
手元にある図鑑『山渓フィールドブックス13:甲虫』p60ではシホシヒメゾウムシとされています。
一方、九大の「昆虫学名和名検索」データベースでは「Baris dispilota シホシヒメゾウムシ」と登録されていて、シロホシはありません。
どちらかが誤表記だと思われます。
Google検索でヒット数を比べてみてもシロホシヒメゾウムシが約 19,000 件、シラホシヒメゾウムシが約 10,600 件となり、かなり混乱している状況(表記の揺らぎ)が伺えます。






赤裸々な早漏シーンを撮り終えた後はペアを採集して持ち帰りました。

♂の方が早死しました。
じっくり接写してみると、2匹の腹面に興味深い違いが認められました。
大型♂の腹面には、♀にマウントするための凹みがありました。
小型♀の腹面にはこの凹みはありません。
同様の性差はオトシブミの図鑑で見たことがあります。
ゾウムシの性別判定法は知りませんが、腹面の凹みという明確な性差があったことから、小型の♂を♀と誤認して交尾しようとしていた可能性は否定できそうです。

図鑑『山渓フィールドブックス13:甲虫』によれば、本種の体長は5〜6mmとあります。
今回採集したペアを方眼紙に乗せて採寸すると、♀6mm、♂7mmでした。
従って、♀が小さ過ぎるのではなく♂が大き過ぎることになります。


♂標本:背面@方眼紙


♂標本:側面@方眼紙

♂標本:腹面(凹あり)

♂標本:腹面(腹端に精液が付着)

♀背面@方眼紙

♀側面@擬死

♀側面@擬死

♀腹面@擬死(腹部腹面に凹無し)

【追記】

甲虫ではありませんが『ハエ学:多様な生活と謎を探る』p238によると、
ヨシノメバエでは体長の差、特に腹部の長さは雌雄の正常な交尾に影響することが実験的に確かめられる。(中略)雌雄の体長差が一定の範囲を超えた場合、明らかに機械的な生殖的隔離が作用する。それは♂が交尾器の接合に手間取る結果、♀が交尾拒否の行動をはじめるからである。



【追記2】
丸山宗利『昆虫はすごい 』(光文社新書)p88~89によれば、

昆虫では陰茎も膣も柔軟性や伸縮性のあまりない外骨格でできているのである。そこで昆虫の場合、♀の交尾器(膣)と♂の交尾器(陰茎)が、それぞれ錠と鍵の関係になっていることが多い。
一方、そのようなしっかりした錠と鍵の関係があると、たとえば栄養状態がよくて大きくなってしまった♂成虫と、栄養状態が悪くて小さく成長した♀成虫が交尾できないという問題が生じる。つまり大きな鍵が小さな鍵穴に挿さらない可能性がある。
(中略)多数のノコギリクワガタで体のあちこちを計測した研究は、体のほかの部分の変異の大きさにくらべ、♂の陰茎の大きさの変異が小さいということがわかっている。



【おまけの動画】
最近のニュースで取り上げられた、夢精するイルカ。
早漏ゾウムシをニュースにするには刺激が強すぎるでしょうか(18禁?)



ヤナギハナガサを訪花するクロマルハナバチ♀



2013年7月中旬

歩道の花壇に咲いた紫の花にクロマルハナバチBombus ignitus)のワーカー♀が来ていました。
小さな花に一つずつ口吻を差し込んで吸蜜しています。
後脚の花粉籠は空荷でした。



園芸植物にはとんと疎いのですが、植物の掲示板で質問したところ、この花の名前はヤナギハナガサ(サンジャクバーベナ)と教えてもらいました。





2013/09/05

イヌエンジュに訪花するスミスハキリバチ



2013年7月中旬

民家の庭に植えられたイヌエンジュにハキリバチの仲間が訪花していました。
現場ではオオハキリバチかと思ったのですが、映像をよく見直すとスミスハキリバチMegachile humilis)のようです。
腹面のスコパ(花粉刷毛)の状態はよく見れませんでした。

ミツバチのワーカー♀も訪花していたのですけど、撮影せずにスルー。




シラホシカミキリの擬死落下【ハイスピード動画】



2013年7月上旬

里山でシラホシカミキリGlenea (Glenea) relicta relicta)が木の葉に乗っていました。

飛び立つ瞬間を狙ってハイスピード動画に撮り始めたものの、なかなか飛んでくれません。
痺れを切らして物を投げつけたら、飛ぶどころか即座に擬死して転がり落ちました。
予想外でしたが、それはそれで面白い映像になったので結果オーライ♪
飛び立つのを予想して画面の上を空けていたのですが、ポロリもあるよ!という教訓になりました。
後半は更に1/5倍速のスローモーションでリプレイ。
今度は咄嗟に脚を縮める動きを接写でハイスピード動画に撮ってみたいものです。


2013/09/04

ガザミグモ♀♂(蜘蛛)の交接



2013年7月中旬

山道に沿って生えたカワミドリの群落で花に止まって交接中のクモのカップルを発見。
カニグモ科のガザミグモPistius undulatus)でした。
体長および体色に著しい性的二型を呈します(♀茶>♂黒)。
カニグモ科の交接は初めて見るので、風揺れに悩まされつつもかなり長時間粘って接写してみました。
映像では細かいカット割りで動きのあるシーンを抜粋しましたが、実際は静止している時間が長かったです。

(※ 昔カニグモ科ワカバグモの交接を観察していました。)

♀にしがみついた♂の触肢がときどきピクピク動いています。
♂は急に激しく動くときがあります。
静止した♂が触肢で♀の腹部を一定のリズムで叩いています。
これがガザミグモの求愛行動(前戯?)なのでしょうか?

♀がレンズに警戒して歩脚を大きく広げて構えました。
カメラを嫌がる♀が葉や茎の陰に回り込んで頻りに隠れようとするのですが、こちらもアングルを変えてしつこく撮影を続けます。
♂の移精器官である触肢を外雌器に差し込んでいるのかどうか、肝心なポイントがいまいち確信をもてませんでした。
飼育下ならともかく、野外での観察は逆光になったり風揺れがあったりしておそろしく難しいですね。
もし私が邪魔をしなければ、ガザミグモのカップルはもっと落ち着いて交接できたことでしょう。

♀の体の上で♂が激しく動き回り、静止すると尻ぴく(腹部を上下に動かす)。
♂が歩脚で♀の脇腹を抱えサワサワしています。
♀が頭胸部を下げて腹部を持ち上げたのは交接に協力する姿勢になったのかな?

もし♂が交接に成功しているのなら、しばらくすると左右逆側の触肢を使って逆側の外雌器に挿入し直すはずです。
途中で♂が激しく動いて体位変換したようにも見えますが、定かではありません。
♀の腹部腹面にある外雌器がはっきり見えるような体勢になってくれたときには、♂は触肢を差し込んでいませんでした。
♀から離れようとしない♂の行動は、ライバルの♂から♀を守る交接後ガードと考えるべきでしょうか?

クモ生理生態事典 2011』でガザミグモの項を参照すると、

1937年6月1日,成体雄が亜成体雌の腹背につかまっている. ほぼ1日半後に脱皮した雌の腹下に回り交接した。

という古い記録を見つけました。
私が見たペアも実は♀が未だ亜成体で♂は交接前ガードをしていただけ、という可能性もあります。
ガザミグモは脱皮の際、他の種類のクモのように糸を紡いで作った脱皮室に篭ることはしないのだろうか?















全景@カワミドリ群落

撮影後、交接中の雌雄ペアを一緒に採集しました。
持ち帰るまでの間に性的共食いすることもありませんでした。
飼育して♀が卵嚢を作るところまで見届けられたら良かったのですけど、あまりにも多忙でそこまで余力がありませんでした。
エタノール液浸標本を接写してみると、♀の外雌器の形状から性的に成熟した成体と判明。
交接プラグらしき付属物は見当たりませんでした。

ワタリカニグモというガザミグモにそっくりなクモがいるらしいのですが、両種の外雌器の違いは明確でこれはガザミグモ♀成体で大丈夫と、「クモ蟲画像掲示板」にてきどばんさんよりお墨付きをもらいました。


♀背面

♀側面

♀顔

♀腹面

外雌器の下に目立つ1対の穴は気門

♀頭胸部

♀眼域

♂背面

♂頭胸部

♂腹部

♂腹面

♂顔

♂触肢

【追記】
『クモのはなしII:糸と織りなす不思議な世界への旅』p27-32「カニグモの縛られた花嫁」によると、カニグモ科の中には交接の際に♂が♀を糸で縛り付ける種類がいるのだとか。
日本産のクモでもアズマカニグモなどでこの驚くべき縄縛行動が観察されており、カニグモ属、ハナグモ属、ヒメハナグモ属、アシナガカニグモ属のカニグモ類で確認されているらしい。
その一方、アズチグモ属やワカバグモ属では、この行動は行われないそうです。
カニグモ科のガザミグモ属について記述はありませんでしたが、今回の映像を見直すと♀は糸で縛り付けられていませんでした。
いつかカニグモの縄縛行動を自分の目で観察してみたいものです。


アカショウマの花で振動集粉するオオマルハナバチ♀



2013年7月中旬

山道の横に生えたアカショウマの群落でオオマルハナバチBombus hypocrita)のワーカー♀が訪花していました。
何匹も忙しなく飛び回っており、映像でも2匹がニアミスするシーンが写っています。

動きが早くてよく見えませんが、後脚の花粉籠に白い花粉団子を付けているようです。
ときどき羽音よりも甲高い振動
集粉の音が聞こえます。
関連記事→「アカショウマの花で振動集粉するトラマルハナバチ♀
アカショウマで採餌した同一個体が隣に咲いたアジサイにも訪花したのですが映像はカット。
必ずしも一種類の花から専門に採餌する訳ではないようです。





2013/09/03

イヌエンジュを訪花するスミゾメハキリバチ♀



2013年7月中旬

民家の庭木として植えられたイヌエンジュをスミゾメハキリバチ♀(別名ムナカタハキリバチ、Megachile sumizome)が訪花していました。
背面は真っ黒の蜂ですが、腹面に生えた赤褐色のスコパに白い花粉を少し付けています。






この白い花の樹種を知らなかったので、「このきなんのき掲示板」にて写真鑑定してもらったところ、総状花序なのでエンジュではなくイヌエンジュだろうとご教示頂きました。





ニホンミツバチ♀の巣を冷やす扇風行動【ハイスピード動画】



2013年7月中旬・気温31℃@日陰

コンクリート製電柱の穴に自然営巣しているニホンミツバチApis cerana japonica)の定点観察。
気温は日陰での測定値で、直射日光に晒された電柱の温度はもっと熱いはずです。

巣口のネジ穴内部に2匹のワーカー♀(門衛)が頭を外に向けて居座り、その場で激しく羽ばたいています。※
これは巣内を冷却するための扇風行動です。

冷房以外の可能性として、巣内のCO2濃度の上昇を感知したミツバチが換気しているのかもしれません。
240-fpsのハイスピード動画でその羽ばたきを撮ってみました。

帰巣する蜂の花粉籠はいずれも空っぽでした。
夏は花が少なくなり、ハナバチにとって苦しい時期です。
帰巣する蜂が巣口に近づきすぎると、扇風行動による乱気流に巻き込まれて体勢を崩していました。
扇風行動に専念する門衛は、出入りする蜂にぶつかった時だけしか羽ばたきを止めません。

もしかすると、扇風行動しながら花蜜を吐き戻して濃縮していたかもしれません。
近づいて接写するには服装や装備が不十分で断念。

『ミツバチ学』の著者が扇風行動を解説したホームページによると、

ニホンミツバチが頭を外に向けて羽を震わせるのに比べ(入口から風が巣の中に入る)、セイヨウミツバチは頭を巣の入り口に向けて羽を震わせるのです(入口から巣内の暑い空気が引き出される)。
この違いは巣の匂いを天敵であるスズメバチに悟られないためニホンミツバチが編み出した扇風法なのだそうです。



【追記】
『ニホンミツバチ:北限のApis cerana』p34によると、
(ニホンミツバチは)セイヨウミツバチと扇風の向きが逆で、新鮮な冷気を外から中へ入れるように、頭を巣門の外に向けて気流を巣内に導くように翅を羽ばたく。1秒間に150回前後と飛翔時より少しビート数が少ない。

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